IT企業や大企業では、ペーパーレス化はもはや当たり前に行われていることですが、製造業においては他の業界と比較するとやはり遅れている企業が多いようです。
では実際にどの点が障壁になっているのかというと、個々の業務プロセス自体はペーパーレス化は困難ではないものの、営業、生産、出荷までの業務プロセスが長く、関わる人間も多いため問題が複雑化してしまっていると言えるようです。
そしてこのペーパーレス化というのは日本だけの取り組みではなく、デジタル化という大きな文脈の中で世界各国の製造企業でも今推進が行われています。
今回はアメリカにおいて進められている、町工場のペーパーレス化のポイントを4つお伝えします。
① 製造情報のデジタル化
従来、紙(アナログ)の情報を元に遂行されている仕事においてペーパーレス化を行うためには、製造現場に立つメンバーが即座に必要情報にアクセスできる必要があります。
ネットワーク化されたコンピューター、タブレット、携帯デバイスなどを駆使して、最新の情報にメンバーがアクセスできるようにしなければいけません。アップデートされる前の図面や作業指示を元に製造を行ってしまった、のような事態が起こるとまずいのです。
生産品の材料や必要な治工具、金型といった情報(それも営業や生産技術が設定した最新のもの)をすぐ参照できる環境を構築しなければいけません。
逆に一度構築してしまえば、紙の指示書や図面を回すことなく、データのアップデートと関係者への通知を行うだけで瞬時に情報共有を図ることができます。
さらに期待できる効果として、現場から生産技術や設計といった人間に、直接フィードバックを行うことができる、という点が挙げられます。
従来は営業生産会議やDR、生産調整会議といった中でしか行う機会がなかなかない、双方向の情報共有、改善活動を常時展開する下地がペーパーレス化、デジタル化によって作ることができます。
②業務工程をデジタル化する
2つ目に、関わる人間が業務情報を常にデジタルで入力する必要があります。
抜け漏れが発生するとまずいのです。
もちろん現場にはシステムへ記録しなくてもよい些細な情報はありますが、
業務プロセス、生産工程の中に情報が取られていない、直接担当者しか分からない部分があると、ブラックボックス化してしまいます。
こういったことが発生するとせっかくデジタル化を進めても大きな効果を出すことは途端に難しくなります。重要な情報や、関連する情報が抜け落ちたり、文脈の中で意味が変わってしまったりするからです。
したがって働くメンバーは、自分の業務プロセスがどういうものかを理解し、生産システムの中で関連する項目を最新の情報に常にアップデートしなければなりません。また入力自体も迅速かつ効率的に行えるように改善を日々行う必要があります。
③ 生産指示、段取りを視覚化する
現場が生産に入る前段階を文書化することは非常に重要なポイントです。
標準化された仕事は高い再現性を実現することができるからです。
さらに、現場がペーパーレス化されていると、より付加的な情報も簡単に追加することができます。
面倒な作業手順書を1から読むよりも、場合によっては写真や動画を見た方がすぐに理解できるかもしれません。
あるいは事務所でマニュアルをコピーして持っていくより、機械装置のそばでタブレットやスマートフォンで必要箇所を参照する方が作業者が楽に働けるかもしれません。
特に中小製造企業の現場は、言語化しにくい情報が多く仕事の内容によっていろいろな条件が大きく変化します。大手企業の生産ラインのように一度決めたら、その仕様でずっと機械が動く、ということが少ないからです。
また実際に働いている人も、「腕はいいが、言葉や文書で説明することが得意でない」といったケースも往々にしてあります。
ペーパーレス × 画像・動画情報 は相性がいい組み合わせと言えます。
④ 顧客・サプライヤーとの情報伝達
自社がペーパーレスをどれだけ推進しても、顧客やサプライヤーが従来通りFAXや直接 紙媒体情報を送ってくることが容易に想像できます。
こういった状況に対応するためには、超具体的には高速スキャナーを社内に用意する、外から入ってくるFAX情報は即座に電子化されるといった投資は最低限必要です。
またファイル名の処理ルールや、データの置き場所等も社内で明確に統一、理解されている必要があります。
「あらゆる紙書類を会社から排除する」とまではいかなくても、外部とのやり取りで発生する紙媒体のやり取りが突発的に増大しても、難なく乗り切れるだけの仕組みが重要です。でなければイレギュラーの発生時に紙媒体が発生し続け、デジタル情報に抜け漏れ、重複が発生してしまいます。
媒体が異なる(紙かデジタルか)情報が混在していると根本的にミスやトラブルが発生しやすくなるため、デジタル化する際には社内で扱う情報ほぼすべてをデジタルベースに移行しなければいけません
冒頭の繰り返しになりますが、製造業でペーパーレス化がなかなか進まないのは営業から生産、納品までのプロセスが長く複雑だからです。またそれぞれのプロセス、データが複雑かつシリアスに関係しており、一部分だけのデジタル化が中々難しいという実情もあります。
しかしながら、紙媒体につきまとう、紛失、情報の陳腐化(情報のバージョンが古い、取り違える)、属人化(他者と共有しにくい)等々の点を考えると、ペーパーレスに移行するのは必然的な流れと言えます。
それぞれの会社によって、緊急性やインパクト、そして難易度は異なるでしょうが、必ず進めなければいけない事項であると思います。
逆説的に「ウチの会社には必要ないよ」あるいは「デジタルやソフトウェアは不慣れなので分からない」とTOPが言っている会社は相当に危険であると思います。他社も含めた世の中の流れを全く理解していない、するつもりもない、ということですから。
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