直近の板金加工の時流
ここ数ヶ月、板金加工関連の市場は活性化しています。特に下記3つの市場についてですが、
・工作機械
・半導体
・通信、5G
先日発表されたファナック株式会社の2022年度第2四半期の決算資料でも、上期は前年同期比で18%アップ、特にロボットが好調とのことです。ロボットの生産が進むと、関連機器として制御盤関連も必要となっていきます。
また半導体関連では、TELの決算資料に注目すると、2023年度第1四半期決算は前年同期比でプラス推移しています。半導体前工程製造装置の分野でも、様々な外的要因はあるものの、「社会のデジタルシフトの進展による中長期的な成長に対する見方に変更なし」と記載があります。短期的には減少に転じていますが、強気な姿勢は変わらないと言えます。
さらに通信関連では、千葉県印西市にあらためて注目が集まっています。Googleが千葉県印西市にデータセンターを建設することを先月発表しました。データセンターの建設が進むと、データセンター内で必要となるラック関連に動きが出てきます。
つまり、半導体不足や電子部品不足が叫ばれていて動いていないように見えている部分もありますが、成長市場と呼べる分野では確実に動きがあり、量産案件も国内で発注がかかっています。
このほかにも、中食産業や、脱炭素、CASE、医療関連の分野についても、中国から国内回帰の流れも相まって、新規での引き合いが増加していると感じています。
新規開拓をしなければ目減りしてしまう
成長産業では動きがある一方で、減少に転じている企業も多くなっています。そして、1社への依存度が強い場合は、主力取引先の経営環境が自社の経営にも大きく影響してきます。そのため、先を見据えている受託型加工業の方々は、新規開拓に注力して、経営環境の安定化を目指しつつ、成長産業からの仕事を獲得して利益率向上を目指していらっしゃいます。
「1:5の法則」というものがあります。
新規顧客を獲得するためには、既存顧客を維持するためのコストの5倍かかる、というものです。
特に製造業はリピートで生産性を向上させることで利益を生み出すビジネスモデルです。そのため、既存顧客を最優先にして、営業やマーケティングについては二の次で、「うちには営業いません」という受託型加工業の方も多くいらっしゃいます。
しかし、一寸先も見通しが立てにくいVUCA*の時代においては、常に時流を捉えて、新しい仕事を取り込んでいくためにコストをかけることも必要だと私は考えています。
※VUCA・・・Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った言葉で、先行き不透明で未来の予測が難しい状況のこと
新規開拓が心を癒す
「たとえストライクゾーンではなくとも、新規のお問い合わせがあると、心が癒されるんです。」
と、ある社長がおっしゃっていました。月に数十件ほど新規での問い合わせがあり、毎月新規受注を積み重ねていらっしゃいますが、もちろんすべての問い合わせが有効ではありません。しかし、
「新規でお問い合わせがあるということは、社会から当社のニーズがあるということじゃないですか。なので、『あぁ、この会社はまだ必要と思われているんだ』というふうに思うことができるんです。
あと、新規でお問い合わせがあると、そのお客さまのお悩みや課題がわかります。現状のニーズでしたり、必要とされている技術がなんなのか。そこがわかるだけでも、新規のお問い合わせは価値があると思っていますし、新規のお問い合わせがあるからこそ社会の変化についていけるとも思っています。」
このお話は、受注生産となる受託型加工業においては、板金加工業に関わらず、どの業種に携わっていても該当すると思います。「新規開拓をしなくても既存顧客だけで十分」というのは、その状況が変わらなければ問題ありません。しかしいつ何が起こるかがわからない時代では、現状のまま満足せずに、多少コストがかかったとしても新しい取り組みにチャレンジすることが重要です。万が一既存顧客との取引量が減ったとしても、営業できる顧客リストがある、勝手にリストが増えて顧客を育成することができる、そのような体制を構築することが、結果として中長期的な経営環境の安定化につながります。
特に成長産業の方々ほど、新しい技術開発に熱心で、インターネットで調査をして、技術相談を積極的に行っています。ネット上で集客をして、マーケティングオートメーションで顧客育成を行っていくという仕組みは、特に成長産業で新規開拓を行いたいと考えていらっしゃる方には、いますぐに取り組んでいただきたいと強く思っています。
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