2020年(令和2年)に、令和元年度補正予算として「ものづくり補助金」が実施されることが決定し、
正式に3月10日から公募スタートしました。
中小企業・小規模事業者にとって「補助金」は重要な資金調達方法の1つですが、
中でも製造業に使いやすい補助金がものづくり補助金ではないでしょうか。
おそらく、本メールマガジンを読まれている製造業事業者の方々でも、検討されている方は少なくないかと存じます。
また、生産財商社の方々につきましてもお客様に有益な情報を提供するといった観点で、
あるいは工作機械ビジネスの観点で、ものづくり補助金は理解しておくべき重要情報といえます。
しかしながら、今回の「ものづくり補助金」は、例年とは異なる大幅な変更点が複数あり、
理解していないと大きな落とし穴にはまる恐れがあります。
今回は、そうした重要な変更点に5つに絞って解説したうえで、今すぐ実施するべき3つのポイントをお伝えします。
変更点1:3年間は公募が継続し、常時交付申請を受付
今までのものづくり補助金は、1次公募では採択発表から機械設置・支払い完了などをわずか6ヶ月程度、
2次公募では3ヶ月程度で完了させる必要があり、要するに時間がありませんでした。
対して今年は、3年間は常時交付申請を受け付けることとし、約3か月毎に1回ずつ採択発表を行う形式に変更されたため、
中長期の設備投資等を計画されている企業にとっては、試作や設備検討に十分な期間をとることが可能となります。
また、採択件数は3年間で概ね3万件と発表されています。
2019年実績では採択数が9,531件であったため、1年間の採択数としては昨年と同等程度と予想できます。
よって、今までは準備がまだだったとしても「記念受験」的な位置づけで申請することもありでしたが、
今年からは準備をしっかり整え、自分のタイミングで申請するといった戦略が有効となってきます。
変更点2:給与支給総額と最低賃金が応募要件に追加
昨年までの応募要件は、「3~5年で付加価値額年率3%及び経常利益年率1%の向上を達成する計画」でした。
今年度から、明確に以下の3点であると変更が為されました
要件①:付加価値額+3%以上/年
要件②:給与支給総額+1.5%以上/年
要件③:事業場内最低賃金 地域別最低賃金+30 円
このように、従業員の給与・賃金に重きがおかれた計画が応募要件となりました。
しかし、要件②要件③を満たすためには基本は利益率を高め、労働分配率を増やす計画にすることが基本のため、
結局のところ経常利益率の向上と基本は変わりません。
※労働分配率 = 人件費 ÷ 付加価値
付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費
ですが、ここで理解すべきは中小企業庁側の思惑です。
今年から、ものづくり補助金は「中小企業革命推進事業」という中小企業基盤整備機構が創設した事業の一環としての位置づけになります。
「中小企業革命推進事業」とは、簡潔に記載しますと、
中小企業・小規模事業者が、「人手不足等の構造変化、働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入などの相次ぐ制度変更」に対応するために、
生産性向上を継続的に支援し、生産性向上の取組状況に応じて、設備投資、IT導入、販路開拓等の支援を実施することが目的の事業となっております。
よって、今回のものづくり補助金の計画内容も、人手不足・働き方改革・賃上げに沿った論調にすることが重要になります。
変更点3:「中小企業革命推進事業」の意図に沿った加点・減点項目
加点・減点項目が変更となっておりますので、下記にまとめます。
【廃止】
加点:先端設備等導入計画の認定の取得
加点:クラウドファンディングによる資金調達
【追加】
加点:被用者保険の任意適用(短時間労働者に社会保険を適用)に取り組んでいる
減点:申請時点で、過去3年以内に同じ補助⾦を受給している
【前回と変わらず】
加点:経営革新計画の承認の取得
加点:事業継続力強化計画の認定の取得
前述の「中小企業革命推進事業」の目的を色濃く反映した結果となっている、被用者保険の任意適用ですが、
こちらは、ものづくり補助金を検討されるならば、ぜひとも併せて検討すべき内容ではないかと考えられます。
変更点4:小規模事業者は2/3の補助率
前回までは、原則補助対象経費の1/2、先端設備等を導入すれば2/3)の補助率が適用されました。
今回から企業規模によって補助率がかわるようになり、中小企業ならば補助対象経費の1/2
小規模事業者ならば2/3の補助率が適用されます。
このため、自社が中小企業なのか、小規模事業者なのわからない場合は、必ず確認しましょう。
なお、小規模事業者の定義ですが、製造業の場合は「常時使用する従業員の数が20人以下」であることです。
常時使用する従業員の定義は、複雑なため本メールマガジンでは割愛しますが、専門家か中小企業庁に確認をとることを推奨します。
変更点5:「補助金申請システム(Jグランツ)」への登録が必須
こちらのポイントで最後となりますが、これが最も重要な変更点かもしれません。
というのも、今回から事前に「補助金申請システム(Jグランツ)」への登録が必須となり、
システム登録を済ませていない企業は、申請ができない制度となったためです。
しかも、システムへの登録完了まで約2~3週間程度かかりますので、まえもって事前登録しないと、いきなり足元をすくわれることになります。
また、登録には以下が必要なため登録前に事前に準備する必要がありますので必ずおさえておきましょう。
・印鑑証明書(印鑑(登録)証明書は発行日より3ヶ月以内の原本)
・登録印(個人事業主の場合は印鑑登録証明書と個人の実印)
いかがでしょうか。
このように、今年のものづくり補助金は例年と異なり大きく変更が為されております。
これらの5つの変更点を理解し、製造業の場合はものづくり補助金の申請を検討、
生産財商社の場合はお客様に有益な情報、
および作成代行に取り組んでみてはいかがでしょうか。
続きまして、ものづくり補助金を申請するうえで取り組むべき重要な3つのポイントについて解説します。
重要なポイント1:「中小企業革命推進事業」の意図に沿った設備・機械選定
今回の事業計画に盛り込むべきは、変更点2で示した通り、「中小企業革命推進事業」に沿うことです。
つまり、人手不足・働き方改革・賃上げに沿った論調にすることが重要です。
上記は言い方によっては、うまく申請としてまとめることは可能ですが、
より採択率を上げるためには、特に自動化・省力化につながるような構造をもった設備を選定、
あるいは実装する計画にすることが望ましいです。
このような機械・設備を、一朝一夕で選定、設計することは大変困難です。
また、自社だけで検討することも非現実的ですので、
お近くの生産財商社、あるいは自動機・ロボットなどに精通したセットメーカーに相談のうえ仕様検討し、
場合によっては見積を取得してじっくり検討することが、今回のものづくり補助金ではとりわけ重要な要素といえます。
重要なポイント2:とりあえず補助金申請システムに登録
変更点5で示したように、補助金申請システム(Jグランツ)に登録していない企業は、そもそもものづくり補助金を申請できません。
また、結果として「ものづくり補助金」を申請しなくてもJグランツに登録することは可能ですので、
少しでも申請する意思がありましたら、とりあえず登録しておくことを推奨します。
手順は、概ね以下になりますので、ご参照ください。
①GビズIDトップページへアクセスし「gBizIDプライム作成」ボタンをクリック。
https://gbiz-id.go.jp/top/
②法人番号、法人名などの必要事項を記入
③申請書が作成されるので、申請書を印刷して郵送
④約2~3週間後にメール、およびワンタイムパスワードが届くので、入力して本登録完了
重要なポイント3:審査員の特性や事情を踏まえた申請書の書き方を心がける
多くの変更点のある、今年のものづくり補助金ですが、
申請書類を書くうえで、前年から変わらず押さえておくべき点は、もちろんのこと押さえるようにしましょう。
例えば、以下があげられます。
・読み手は素人であることを前提に書く
・専門用語には注釈をつける
・キーワード・図・表を多用する
・審査員が審査する順番の通りに書く
・1分で「なんとなく素晴らしい」が伝わる内容にする
・不利な情報は隠さず、プラスの言い訳を記入する
詳しくは、ご連絡いただければ解説しますが、簡単に要点だけ記載しますと、
ものづくり補助金の審査員は「製造業の製造プロセスや市場ニーズにそこまで詳しくない場合が多く」「一つの審査にかけられる時間が少ない」です。
上記の審査員の特性や事情を考慮して、簡潔明快で誰が読んでも理解できる内容の申請書を作成できた企業が採択される可能性大なのです。
コロナウイルスで身動きの取れない今こそ、ものづくり補助金を検討するタイミング
いかがでしょうか。本メールではものづくり補助金を検討中の経営者様・担当者様が、絶対に理解すべき変更点と、今すぐに取り組むべきポイントについて解説をしました。
変更点1でお伝えした通り、今年から常時交付申請を受付となりましたが、
コロナで身動きがとれない今こそ、経営計画の見直しをするタイミングです。
「人手不足・働き方改革・賃上げ」といった生産性向上策を仕込んだ上で、必要に応じてものづくり補助金の検討を行う、あるいはそうした動きをお客様に促すべきだと思います。
そこで 船井総合研究所ものづくりGでは、
・ものづくり補助金の詳細の解説、および具体的行動
・商社の場合は、いかにしてお客様に周知、あるいは新規集客に結び付ける方法
といった落とし込みへの「無料個別相談」を経営者・または役員限定で実施させていただきたいと思います。
船井総合研究所にご相談いただくメリットはこちらです。
・ものづくり補助金申請の申請代行業務をしない(気軽に相談できる)
・各都道府県で製造業に造詣の深い申請書作成代行可能な商社を紹介できる
・自動省力化装置・ロボットを用いたセットメーカー、各種工作機械に造詣の深い商社を多数紹介できる
このように、申請代行業者や商社を入口にしないので、安心・気軽にお聞きできるようにしています。
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中小企業診断士でもある著者の橋本が、個別に対応させていただきます。
詳細は下記ご案内をご覧いただきたいと思います。
製造業や工場の経営は、確かな設備選定と導入が重要であることはいうまでもありませんが、
有効な資金調達手段として、ものづくり補助金の活用をぜひご検討ください。
船井総合研究所 中小企業診断士
橋本 吉弘
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https://funaisoken.ne.jp/seizougyou-koujoukeiei/inquiry.html
※本記事は、3月10日に執筆しております。中小企業庁から最新の情報が提供されておりましたら、そちらの情報を優先いただきますようよろしくお願い申し上げます。
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