特定の業務プロセスを外部へ委託するBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)は様々な社会的トラブル等を起こしながらも企業に定着したと言えます。
今の潮流はBPO×デジタル技術で、経理BPO×デジタルを展開するマネーフォワードやfreee、評価制度BPO×デジタルのあしたのチーム、人事部BPO×デジタルを展開するいくつかの企業が出てきています(人事部のBPOを指す言葉として、HRO:ヒューマンリソースアウトソーシングという言葉も出てき始めています)。
このBPOとはまったく違う概念で、インターネットを通して不特定多数の社外リソースを活用する仕組みをクラウドソーシングと言います。
具体的にはフリーランスでやられている個人事業主や、企業勤めだが、専門スキルを持っていて業務時間外や休日は別の仕事をしたい方、家から離れられないがスキルはある主婦等がWEBに登録をしておいて、良い仕事が募集されたら参画する、というスタイルのサービスです。
国内における2大プラットフォームは、ランサーズとクラウドワークスという名称で、どちらも2010年前後に発足しています。
B2C業界やIT業界の方にはかなり浸透しているサービスですが、製造業ではご存知ない方も一定数いらっしゃるので、改めてクラウドソーシングサービスで何ができるのかをご紹介させていただきます。
単純作業を依頼する
展示会でのアンケート整理や名刺入力、過去の紙帳票のデータベースへの入力、PDFデータの文字起こし等、デジタル化できず、かつ手間がかかる仕事は社内に色々と存在します。
数時間で終わる程度のものであれば、「外部にお金を掛けず、社内でやる」が正しいことが多いのですが、これが延べ数十時間かかるような業務の場合は別問題です。
例えば展示会出展やセミナー開催のダイレクトメールを送るという際、絶対に必要となるのが送付先のリストです。
このリストは、既存客の場合は問題ありませんが新規開拓を行いたい場合はどこかからリストを買うか、反応の精度を上げたい場合は自分たちでリストを作る必要があります(なお船井総研のセミナー用のDM送付リストもリストはどこかから買うのではなく自分たちで作っています)。
2000件の新規開拓候補のリストを作るのにどれだけ時間が掛かるか?
地域の商工会や展示会サイトから社名を得る、リンク先等から本社住所や工場所在地を調べる、ホームページから従業員人数を調べる、こういった工程を入れると1社2分で情報が寅太としても単純計算で4000分掛かります。
エクセルのマクロ等で自動化が可能なこともありますが、不可能なことも多いです。
自社の社員に70時間近くリストを作らせ続けますか?
若手がやればいいといって若手社員に振れば、嫌気が差して辞める可能性もあります。
クラウドソーシングするとこれがどうなるか?
若干差はありますが、2~3万円、1日で作業が終了します。
仕組みは単純で、数十人~数百人のフリーランサーが同時に作業を進めるため、圧倒的なスピードとコストで仕事が終わるのです。
クリエイティブな仕事を依頼する
また先日はあるご関係先で、新しいコーポレートサイトのロゴを既知のデザイン会社に依頼したが10万円掛けて3案出てきたが、修正してもらってもすべて満足するデザインではなかったという話がありました。
ロゴ作成やパンフレット作製、名刺デザイン等、既存の取引先に依頼するというのは、ビジネス上悪くはありませんがデザイナー1人の実際の工数に対して割高傾向になります。
先の会社の場合は、その後クラウドソーシングで再度依頼を行い、5万円の費用を掛け、40種類のロゴ提案があつまり(つまり80人のデザイナーから提案があり)、その中から最も気に入ったロゴを選ぶということができました。
こちらもひとつの会社と付き合うという既存取引型ビジネスとは異なったメリットを享受できている例となります。
外部のシステム人材リソースとして活用する
エクセルのマクロ作成、アクセスのデータベース調整、簡単なRPA等、社内に優秀なプログラマーがいれば中小企業の業務は大きく変わります。
ただしそういう人材を採用しても、普段のやってもらう仕事が無かったり、あるいは十全に能力を周りが発揮させることができなかったり、職場とのアンマッチが起こりがちです。
クラウドソーシングでは、このような雇用形態のアンマッチを解消できることもメリットです。
必要な際に、必要な機能の依頼を行うことで、社内に専門的なリソースがなかったとしても求める結果を得ることができます。
地域のシステム会社では対応ができなかったり、納期や費用が見合わないような場合でも広く世の中から知見を持った人を集める術ができた、という点でクラウドソーシングの利用価値は高いと思います。
もちろん不特定多数のフリーランサーに依頼する訳ですから一長一短があります。
特に相手が個人である(ことが多い)という点から、依頼可能な範囲が狭まったり、対法人では起こりにくい色々な打合せトラブルも起こったりしますが、それらはこの新しいサービスの大きな障壁とはならないでしょう。
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