機械加工業で高収益な会社の共通点は、必ず「複合機」を導入している、ということです。
私の関係先の某社は従業員10名ですが、複合機をメインに旋盤・フライス・研磨の一貫対応を売りにしていますが、営業利益率は17%です。
また別の某社は従業員35名で営業利益率10%。同社は旋盤タイプの複合機に加え、最近は円筒研削盤の複合機を導入しました。
同機が本格的に立ち上がってくれば、さらに収益性は上がるものと思われます。
さらに別の某社は従業員数名ですが、営業利益率は20%近くにもなります。同社も複合機がメイン設備です。
主な複合機には下記の工作機械があります。
・ヤマザキマザック インテグレックス
・DMG森精機 NTX
・オークマ マルタス
・中村留精密工業 NTシリーズ
こうした複合機を導入する主なメリットとして次の3つを挙げることができます。
1)工程集約により、リードタイムを大幅に短縮できる
2)工程集約により、長時間無人運転ができる
3)工程集約により、ワークの載せ替えが無くなり精度が上がる
つまり複合機を導入することにより「工法転換」が可能となり、その結果、従来工法と比較して劇的にコストダウンにつながるわけです。
さらにわかった興味深い事実があります。
それは、単純形状の加工であればあるほど儲かる、ということです。
同時5軸機能を活用した、見るからに複雑形状のワークは意外と儲かっていないケースが多いのです。
逆に、「えっ、こんな単純形状は旋盤+フライスで十分なんじゃないの?」といった形状のワークほど利益率が高いのです。
特に“旋盤加工”をイメージさせるワークではなく、“フライス加工”をイメージさせるワークの方が利益率は高い傾向があります。
世界No1の複合加工機メーカー、ヤマザキマザックではこうした事実は既につかんでいた様です。
そこで同時5軸制御など、複雑な仕様を排除し、5軸位置決め機能など前述の工程集約が行える最低限の機能を持ったインテグレックスのエントリー機を開発しました。
ところが、こうしたエントリー機は実利を重んじるドイツでは売れるものの、日本ではそれほど売れないそうです。
日本では同時5軸機能など、ハイスペックな仕様を欲しがるユーザーが多い、というのです。
実際、複合機を「旋盤の高機能機」と捉えるのではなく、「ワンチャッキングのマシニング」と捉えた方が儲かります。
ところが技術力の高いユーザーほど、「ワンチャッキングのマシニング」と捉えることを“邪道”と考える様で、本当の意味での工程集約が日本では中々進まない、というのです。
ドイツでは全く逆です。職人(マイスター)が積極的に複合機を取り入れ、日本ではあまり売れていないバリアキスといったマシニング型複合機もドイツではかなり売れているといいます。
ちなみにドイツの生産性は58.3ドル/時で、日本の生産性は40.1ドル/時でありドイツの生産性と比較すると7割以下です。
ドイツの生産性が高い要因として、前例にとらわれない柔軟性・合理性という要素が高いのかもしれません。
話を戻すと、複合機は実際に儲かる機械です。ヤマザキマザックによると、今のところインテグレックスを買って倒産した会社は無い、と言われていました。
また、もともと機械加工一筋できている職人的な会社よりも、もともと別の業種から加工の分野に入ってきた様な会社の方が、インテグレックスの活用度合いが高い、と言います。
繰り返しになりますが機械加工の経験が長い会社・人ほど、複合機の本当の活用において「邪道だ」となってしまうというのです。
そんな世界No1の複合機の開発拠点である、ヤマザキマザック美濃加茂製作所の複合機開発メンバーの中で、誰もが知っているある町工場があります。
それが東京・大田区にある有限会社 今製作所です。同社はわずか従業員4名ながらインテグレックスを4台所有し、大手企業も顔負けの生産性を実現している町工場です。
なぜ、こんな小さな町工場のことをヤマザキマザックの複合機開発メンバーが知っているのかというと、同社は徹底的に複合機を使いこなし、独自の加工アプリケーションをヤマザキマザックに逆提案しているところにあります。
例えば丸材(バー材)からブロック形状に削り出しを行い、ワークの反対側をつかんで回転させ、突っ切りバイトでワークを切断、バー材からブロック形状のワークを、無人で連続生産するアプリケーションは今製作所の今社長のアイデアから生まれています。
同社こそ、日本で最も複合機を使いこなしている町工場であるといえます。
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