注目のキーワード

部品不足・景気後退懸念の中、今、業績を伸ばすセットメーカー(装置、自動機・省力化設備)経営者が取組んでいることとは?

製造業・工場経営の最新ノウハウ資料を見る

セットメーカー 2023年の時流対策:耐える一年にするのか攻める一年にするのか

2023年がスタートしましたが、各メディアでも報道されている通り、2023年は世界的に「景気後退」の予想がされています。製造業ももちろん景気後退の影響を受けるわけですが、特注機の受注生産を行うセットメーカーは特に影響を受けやすいと言えます。レディメイド(いわゆる汎用品・標準品)の製品を量産しているわけではなく、オーダメイドの製品を生産しているため、顧客の状況により受注量は大きく変化していきます。
ここでいうセットメーカーとは、装置業、自動機・省力化装置製造業、食品機械メーカー等、一品料理の受注生産を前提としている製造業・メーカーを指しています。今回の記事では2023年の時流の中で、セットメーカーがどのような対策をとっていくべきか、考えていきたいと思います。

その前に、2022年はセットメーカーにとってどのような状況だったのでしょうか。
セットメーカーの業績状況をみると、コロナ前の2020年・2021年と比較して「受注高は回復、売上高は横ばいorマイナス」という企業様が多いと感じています。
受注高が大きく改善したがキャッシュフローが悪化し、資金繰りに苦しんだセットメーカーは多く、実際に、栃木県に本社を置く物流自動化機器開発を手掛ける中堅セットメーカーが7月29日に民事再生法の適用を申請したことも、記憶に新しいかと思います。
日本政策金融公庫の「中小製造業設備投資動向調査」(全国の従業員20人以上300人未満の中小製造業5万1610社を対象)によると、2022年度の中小製造業の国内設備投資額は前年比19.7%増加の2兆7237億円となったとの発表があり、受注高と関連するデータにも回復傾向が表れています。

受注はしたが、納品できず売上が上がらない。その要因は、部品不足がメインでしょう。
セットメーカーにとって、電子機器を中心とした部品不足による納品までのリードタイム長期化に悩まされた一年でした。前述しました栃木県のセットメーカーも、部品供給が滞ったことによる資金繰りの悪化が経営破綻の原因とされています。
装置に必須となるサーボモータやPLCの納期は1年以上、ボールねじやリニアガイドといったメカ部品の納期も一年弱であり、通常は4か月~6か月で納品できるような装置が1年以上の納期で、「受注はしたけど納品できず売上がたたない…」、そんな状況でした。

では、2023年はどうなるのか。
まず、来年の動向をみる上で先行指標となる工作機械受注高の動向を確認すると、2022年10月に前年同月比で94.6%と過去2年以上ぶりのマイナスとなり、需要の下降トレンドに入ったと言えます。過去のデータを見ても、前年対比プラスが連続した後に、下降トレンドに入ると約2年ほど前年マイナスの傾向が続くとされており、今後、設備投資の冷え込みは顕著になってくることが予想されます。

また、内閣府経済社会総合研究所が発表している機械受注高を見ても、9月は3.3%前月対比で3.3%減少の傾向にあり、国内の民需が9.0%と落ち込む中、外需は6.3%増と増加傾向にあります。あくまで単月の数字ではあるものの、国内の設備投資が落ち込み始めています。中小セットメーカーにとって、国内をメイン市場としている企業が多い中で、国内の設備投資の落ち込みは死活問題です。

また、半導体をはじめとした部品不足が回復傾向にあると報じられていますが、回復傾向にあるのはメモリー半導体の一部であり、電源をはじめとした半導体・ユニットに関しては引き続き納期が不透明です。

さらに、
①サプライチェーンの混乱による資材・部品高騰
②エネルギー高騰
③米国、欧米、そして日本の金利の上昇によるリセッション(景気後退)
など、負の要素は多く、セットメーカーにとっては耐える一年になることが予想されます。

まとめますと、「2023年は部品不足の継続によるキャッシュフローの悪化懸念が続く上に、受注不足にも苦しむ可能性が高い」と考えられます。

ただし、すべてのセットメーカーが受注不足に苦しむのかというと、そんなことはありません。2023年はセットメーカーにとって耐える一年に「多くの場合」はなるかと思いますが、そんな中攻める一年にすることは可能です。

市況が低迷した2020年・2021年に多くのセットメーカーが業績を落とした一方で、業績を大きく向上させた企業がありました。耐える環境を一転させて、チャンスに変えたわけです。このことからも、2023年の来る不況も同様に、チャンスに変えることで競合を出し抜くことは可能なのです。

ではどうすれば攻める一年にして、業績を向上させることができるのか。それは

「成長企業との接点を獲得し商談化させるまで、自動化できる仕組みを構築する」つまり、営業DXを実現する

ことが重要となります。

不況下から回復した際に優位に立つために、マーケットをリードする成長企業は設備投資を積極的に行います。現在、半導体市場・電子機器、電子部品市場で顕著に表れていますが、不況下でも設備投資を行う成長企業は多くあり、その企業と接点を持ち商談化することができれば、不況下でも業績向上を実現することができます。
また、半導体・電子部品関連以外でも、EV関連、GX関連や、家飲み・巣ごもりを取り込んだ中食関連の設備投資は好調です。成長市場をリードする成長企業は、確実に存在しています。

では具体的にどのような取り組みを行えば、上記のような成長企業と接点を獲得し、受注まで進めることができるのか。コロナ禍で対策を打ち新規顧客を多く獲得したセットメーカーの実際の事例が参考になりますので、紹介します。

市況が低迷した2020・2021年に、液体充填機メーカーが1年で新規商談5億を創出した取り組み

コロナ禍に突入した2020年初旬。和歌山県に本社を置く液体充填機メーカーのメイワ様は、大きく変わった外部環境に適用して競合に勝つための施策を検討していました。
メインのターゲット市場は食品業界。市況低迷の中で伸びる既存顧客(個食用、中食用等)がある一方で、低迷する既存顧客(業務用、贈答用等)の見通しは立たず、新規顧客を獲得する施策が必要でした。
しかし、従来の新規顧客獲得の取り組みは①展示会の出展 ②人的営業(飛び込み等)であり、
①来場者数低迷による展示会の効果低減
②訪問制限による人的営業不可
により新規顧客の獲得が難しい状況でした。

そんな中、メイワ様が取り組んだのが、前述した「成長企業と接点を獲得し商談化させるまで、自動化できる仕組みを構築する」ことです。

「成長企業と接点を獲得し商談化させるまで、自動化できる仕組み」とは

メイワ様のビジネスモデルは、従来の営業スタイルとは大きく異なります。
多くの企業で行われている営業スタイルはPUSH型の営業ですが、メイワ様のビジネスモデルは待ちの営業、つまりPULL型の営業スタイルです。

PULL型の営業とは、人的営業をかけずに新規企業からメイワ様に問合せを自動で発生させる仕組みを持つ営業スタイルのことを言います。
PULL型営業において中心となるツールは、ソリューションサイトと呼ばれる集客用WEBサイトで、メイワ様は「液体充填機・充填ライン .com」という、マーケティングに特化したWEBサイトを構築し新規顧客から15件/月以上の問い合わせを獲得しています。また、新規顧客から納期が決まっていない、いわゆる相談程度の問い合わせがあった後は、マーケティングオートメーションと呼ばれる仕組みを活用して、商談化しやすいタイミングで人的アプローチをかけることにより、新規顧客の獲得を効率的に行っています。

Mckinsey&companyが2021年に公表した「日本の営業生産性はなぜ低いのか」によると、営業担当者の時間配分のうち顧客への営業活動は10%~25%とされています。その限られた時間で、営業マンが新規顧客獲得に費やす時間は10%程度といわれていますから、ほとんどのセットメーカーは新規顧客獲得の取り組みができていないと言えます。

そんな中、新規顧客の獲得をPULL型営業により自動化しているメイワ様が成果を上げているのは、当然のことと言えます。

それでは、なぜこのビジネスモデルが有効だったのか、さらに深堀をしてみていきたいと思います。

①装置入れ替え頻度に関する要因

装置・設備の入れ替え頻度は15年以上であり、入れ替えのタイミングでPUSH型の営業を新規顧客にかけるのは難しく、非効率です。
営業マンが数百人いるような大企業で人的リソースが豊富な場合は、PUSH型営業を他社との差別化要因として市場優位性を獲得することは可能ですが、中小セットメーカーにとっては現実的ではありません。となると、入れ替えのタイミングでユーザーから問い合わせを獲得できるこの仕組みは、セットメーカーにとって非常に有効となります。

②キーマンへのアプローチのしやすさに関する要因

数千万を超えるような設備を販売する場合、メーカー決定・設備導入までに長い決裁プロセスを通ります。PUSH型の営業により運よく入れ替えタイミングで担当者に出会えたとしても、取引がない企業のキーマンへの直接的なアプローチは非常に難しく、結局は担当者で止まってしまうということが多くあります。
しかし、PULL型の営業スタイルでは、そもそもキーマンがかかわって接触してもらえることが多く、決裁プロセスを短縮した形でアプローチができるため、商談化そして受注まで効率的に行うことが可能になります。

③営業の属人性に関する要因

トップ営業マンの受注プロセスをベンチマークとし、多くの売れる営業社員を輩出する仕組みを構築して営業組織を活性化させる取り組みをセールスイネーブルメントと呼びます。営業の属人化を防ぐ仕組みです。
CSO insightsの2018年レポートによると、欧米ではセールスイネーブルメント導入企業が61%となっており、業績と正の関係が示されていますが、国内で取り組む企業は多くありません。
国内企業の営業はまだまだ属人的であり、解消に取り組む企業は少ないと言えますが、セットメーカーの場合はこれが顕著に表れています。なぜならセットメーカーでは、調べても出てこないようなニッチかつ高度な知識が必要であり、日本企業が多く行う、教育者に依存するOJTだけでは解消が不可能だからです。

スーパースター型の営業マンであれば、PUSH型の営業で新規顧客獲得が可能かもしれませんが、8:2の法則で考えれば2割の営業マンのみが可能なことであり、既存企業への対応で多忙な営業が、PUSH型の営業だけで新規顧客を獲得するのは、セットメーカーにとって非常に難しいと言えます。
PULL型の営業スタイルは、新規顧客との接点獲得を自動化できるため、「属人的になりやすい」というセットメーカーの営業課題を解消できる仕組みとなり、セールスイネーブルメントの取り組みの一つと言えます。

メイワ様の取り組みは2023年になぜ必要なのか

コロナ禍で効果的だったPULL型の営業スタイルですが、2023年も有効であることは確実です。
その理由としては以下があげられます。

①80%以上の担当者が営業との接触前に購入製品を絞り込んでいる

2021年のグリーゼ社の調査によると、営業担当者との初回面談時に「購入する製品を決定している、または購入する製品やサービスをいくつかに絞り込んでいる担当者」が約82%となっており、2016年でも約78%と高い数字になっています。この情報収集の中心になっているのがWEBです。
つまり、打合せの前段階で認知してもらえなければ土俵に上がることすらできず、新規顧客からの受注は難しいと言えます。
これは、2023年以降も低下することはないと考えられます。大企業をはじめとしてテレワークが継続される側面を見てもPUSH型の営業では担当者やキーマンに効果的な接触を行うことは難しく、PULL型の営業により認知することが継続して有効になります。

②部品不足が回復していない今、転注は増加する

前述の通り、部品不足は回復傾向と言えど、電源をはじめとした必須部品では需給ひっ迫がまだまだ継続しています。部品不足は出荷までのリードタイム長期化につながりますが、リードタイムの長期化は他社メーカーの検討、そして転注につながります。

記憶に新しいかと思いますが2017年から2018年にかけて起こった直動案内部品の不足時、投資計画通りの設備導入を一番に考えているユーザーは、懇意にしていたメーカーだけでなく競合メーカーに問い合わせをし、納期要望に合致した場合には、転注を行いました。
2020年~現在までの部品不足時にも同様の現象は起こり、既存企業含む2社まで絞ったユーザーが2社両方に発注し、納期回答後に1社の注文を取りやめるということも起こりました。
メイワ様においても、納期に関する課題を持つ設備投資に意欲的な企業からの問い合わせを多く獲得しています。他社企業への問い合わせが発生しにくいセットメーカーでも、部品不足がまだまだ継続すると予想される2023年初期~中期には転注が起こりやすく、部品不足をチャンスに変えるためにはPULL型の営業スタイルが有効です。

③サプライチェーンの国内回帰

中国をはじめとしたカントリーリスクの影響で、政府や地方行政の支援もあってサプライチェーンを国内で構築しようとする企業が増加しています。国内新工場の建設に伴う国内企業への設備発注だけではなく、海外メーカーの装置を使用していた企業が国内企業に発注先を変更することも増え、ビジネスチャンスは確実に生まれています。
寡占市場であることが多いセットメーカーでは、競合が海外企業であり国内では数社ということも多くあります。その際、国内の競合より早い段階でユーザーから認知を得て、ベストなタイミングで問い合わせを獲得できるPULL型の営業スタイルは、いわずもがな、最適な仕組みと言えます。

PULL型の営業スタイルの構築はどのように行うのか

PULL型の営業スタイルの構築は、一種のビジネスモデルの変革です。ビジネスモデルの変革には、数年から長くて数十年と、長期間必要なことが一般的ですが、PULL型の営業スタイルの構築は3か月~5か月で行うことが可能です。
PULL型の営業スタイルを構築する上で必要になるのは、大きく分類すると
①ソリューションサイト
②マーケティングオートメーション
の2つですが、メイワ様では、4か月で仕組化して運用、1年で成果を出すことができています。2022年後半も新規顧客からの引き合いは旺盛であり、増加傾向です。

導入前は
「デジタルに疎いが進めることができるのか?」
「確立され定着した従来の営業スタイルから、新しいスタイルに移行できるのか?」
「営業からの反発があり頓挫するのでは?」
との懸念もありましたが、実際には1年で成果を出すことができ、営業をしていく上での必須ツールになっています。

このPULL型の営業スタイルの導入までのプロセスも含めて、以下の経営セミナーにて「取締役副社長 髙橋 健太 様」にご講演頂きますので、是非ご確認ください。

 

<セットメーカー・装置業向け経営セミナーのお知らせ>
セットメーカー・装置業向け(2023年2月16日 木曜日 or 3月3日 金曜日 オンラインで開催)

↓↓↓ 本セミナーの詳細・お申込みはこちらから!
https://www.funaisoken.co.jp/seminar/095016

テーマ:地方のセットメーカーが5000万円の特注設備を
価格競争無しで新規受注する営業DXへの取組み
~取組み1.5年で新規商談5億!受注1億!人を増やさず営業DXで利益をつくる我が社の事業戦略!~
株式会社メイワ 取締役 副社長 髙橋 健太 様

製品単価が数千万円と高価なセットメーカーが、従来の100%人的営業から、
デジタルを活用した営業DXへの取組みを大公開!!

↓↓↓ 本セミナーの詳細・お申込みはこちらから!
https://www.funaisoken.co.jp/seminar/095016

製造業・工場経営の最新ノウハウ資料を見る

関連記事

アクセスランキング

製造業・工場経営.comを運営する船井総合研究所が提供する各種サービス

ものづくり経営研究会オンデマンド
ものづくりグロースクラウド

無料経営相談の
お問い合わせ