機械加工会社にとって、EV化は何を意味するのか
EV化が進むと自動車部品の部品点数は40%減ると言われています。
この前提の下、 「2030年にEVの比率が〇〇%になると、内燃機関の市場は△△%縮小する」 「内燃機関に関わるサプライヤーは生き残りのための活動が必至」 といった言説が、楽観・悲観シナリオ問わず、日々様々な媒体で見られます。
実際に自動車部品産業に関わっている会社には明らかなように、ここ2年でほぼすべての完成車メーカー(Tier0)の開発予算はEV(ないし一部のHV、FCV)を前提としているものに変わっています。
ダイカスト、プレス、射出成型、機械加工と、扱う工法自体は様々ですが、今進んでいる自動車向け開発品はほぼすべてEV向けと言っても言い過ぎではないでしょう。そして枯れた技術であり高精度ではあるものの、比較的高コストとなる機械加工は自動車部品 量産の技術としては少し競争劣位に置かれているように思います(当然例外はあります)。
日本政策投資銀行が数年前に発表したレポートによると、従来型自動車1台当たりの製造に用いられる工作機械の使用額は15000円と計算できることに対し、EVの場合は8000円と半額近くに減少するとされています。これは国内製造業の約2割を占める自動車産業だからこそ出せる指標と言えますが、ここ数年間の技術革新や動向を見ても、前提条件は大きくは変わらず、「機械加工が大きく減る」ことは間違いないようです。
「果たしてEVが普及するのか」は、メーカーが決められることではなく市場が決めることです。そして市場のルールが良くも悪くも大きく変わりつつある今、経営者としてはどのような未来に向かったとしても、流れに対応していかなければなりません。
機械加工の「何が減るのか」よりも「どう減るのか」
自動車部品の生産に要する機械加工の総量は減る、という予測を先ほど紹介しましたが、実際上はどういう品目が減るのかという点よりも、どのようなスピードで、どんなサプライヤーから減るのかの方が重要です。
いみじくも2022年9月段階で工作機械業界は過去最高水準の受注高を抱えています。
工作機械メーカー 森精機は「EV化は工作機械メーカーにとって圧倒的にプラスである」と述べています。詳しい内容は割愛しますが「専用機は減るが、汎用性の高い工作機械は増える」ということが彼らの主張です。 その背景となる予測は「内燃機関よりも圧倒的に汎用性の高いモーターが普及することによる部品の共通化・大量生産」と「各メーカー・車種 独自設計となる多品種少量生産部品の増大」の2点です。
私はTier1、Tier2メーカーにとっては危機であると同時に、大きなチャンスが訪れると思っています。
特にスピード、柔軟性に優れた中堅・中小企業にとっては。熱心な会社には、既存・新規問わず機械加工品の仕事はこれからも確実に増える未来になると思います。
先が見えにくい今は意思決定のスピードが重要
大手メーカーの勝負するEVマーケットは今後も激しい競争が続くでしょう。
日本電産が三菱重工工作機械を買収したことは昨年の大きなニュースでしたが、規模の経済が働くマーケット、即ちモーターや減速機等、共通化が図りやすい製品カテゴリは、内製力を備え総合的な競争力を高めたグローバル企業同士のシェア獲得が熾烈さを増すと思われます。 一方で中堅・中小企業にとっては多品種少量生産品のマーケットでどう付加価値を発揮するかという点が命題となりそうです。国際競争で生き残るであろう、メガサプライヤークラスの顧客に対してどう存在感を発揮していくかと言い換えても良いと思います。
私の関係先で自動車の生産設備を手掛けている100人規模の設備メーカーさんがいらっしゃいますが、このメーカーさんには今年ほぼすべての完成車メーカーから新規設備の引き合いが発生しました。すべてEV化を見据えた試作・開発ライン向け設備です。このメーカーさんは同製品カテゴリでは業界3番手ですが、どの完成車メーカーの方に聞いても業界1番手は最終的に相談先として選ばなかったということです。
なぜか?
もちろん他社も相談しているだろう先には相談したくなかったという事情もあるかもしれませんが、完成車メーカーの担当者に話を聞くと、いずれも「スピードと会社の温度感」だと言うのです。
「他社に先駆けてEV向け設備の情報を出している」 「どの設備メーカーもまだ実績が無いので、最も熱心な会社を選んだ」 どのメーカーにとってもEV化は会社の未来を左右する重大テーマの一つです。 失敗できない、というネガティブ要素以上に、どういうパートナーと組むのが成功に早く近づくか、というポジティブな要素でサプライヤーを選ぶ時代になっていると思います。
業績のよい機械加工会社は、いま何に取り組んでいるのか?
機械加工会社に話を戻します。
いま業績のよい機械加工会社のパターンは端的に言えば2つです。
①事業の柱を2つ以上持っている(作った)
②EVを始めとした、各産業の最重要投資分野に絡んだ仕事が得られている(相談が来る)
ネット集客や展示会、リアル営業強化等、方策は様々ですがいずれも調子の良い会社、熱心な会社と深く繋がることができているという点が共通します。長年そうやってきた、という会社もありますが、ここ数年の取り組みで華が開いたという会社等、事情は様々です。
船井総合研究所ものづくり支援室では、機械加工業向けにここまで述べてきた「EV化の流れに機械加工会社としてどう対応すれば成功に近づくのか」をテーマとしたセミナーを10月に開催します。
セミナーでは予想される未来に対して、自社としてどういう方策を立て、今すぐ実行に移していくのか、という点を事例を交えてご紹介いたします。 ぜひ将来に向けて手を打っておきたい機械加工会社の経営者様にご参加いただけますと有難く存じます。
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是非ご参加いただき、今後の事業戦略のヒントにしていただければと思います。
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