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2024年7月の時流とその対策:工作機械直販と、激動の生産財業界

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某大手工作機械メーカー「直販」の衝撃

 

ここ最近特に、某大手工作機械メーカーが「直販」営業を強化しています。

従来、大手工作機械メーカーの大半は「販売店」経由での営業が基本ですから、生産財流通を手掛ける商社・販売店にとっては大きなニュースです。

昨年秋くらいからそうした噂はありましたが、ここにきて先ほど述べた某大手工作機械メーカーによる「直販」の動きが加速しているというのです。

大手ユーザー向けに対しては、元々直販の動きはありました。

しかし、今回は大手ユーザー向けだけでなく、数人でやっている様な町工場に対してもリースが通るなど、与信条件さえ満たせば、躊躇なく「直販」を進めているといいます。

さらに、元々は販売店経由であったルートを強く「直販」に切り替えることをユーザーに促すなど、商社・販売店としては相当ユーザーを押さえておかないと、商権そのものを失いかねません。

こうした工作機械メーカーによる「直販」は、今後も広がるのでしょうか?

米国の工作機械産業が衰退した理由とは?

ちなみにかつて、米国の工作機械業界が衰退した大きな理由の1つに、工作機械メーカーが直販にはしったことが挙げられています。

かつて、米国は工作機械産業の中心でした。

世界で最初のマシニングセンタもMIT(マサチューセッツ工科大学)で開発され、当時のシンシナチ・ミラクロン社やバーグマスター社は名機といわれていました。

ところが、時代が汎用機からNC(数値制御)の工作機械が主流になりはじめた1970年台、状況が大きく変わってきます。

汎用機の時代は、米国の工作機械流通も「商社」「販売店」経由が大半でした。この時代は商社や販売店が“在庫”を持って、ビジネスを行っていました。

ところが、NC機の時代になると、メーカーが客先と仕様を1つ1つ決めてから受注生産することになりますから、そもそも商社や販売店が「在庫を持つ」という概念がなくなります。

そこで、米国の工作機械メーカーは、「在庫を持てないなら商社・販売店経由で売る必要はない」と、一斉に直販にはしります。

しかし実際には工作機械の特性として、

・購買頻度が著しく低い
その反面、
・何かあった時のアフターサポートが必須
と、いうものがあります。

10年に一度買うか、買わないかという世界の工作機械を売るために、メーカーが全国に営業所を配置することは、あまりに不経済です。

そこで、複数の商品を扱う商社・販売店が、メーカーの「営業代行」を行うことにより、メーカーは不経済な営業所を全国に配置する必要がなくなる、といったことがメーカーにとって大きなメリットになります。

つまり、
・引合い情報が得られる(=情報流が得られる)
というのが、本来的に工作機械メーカーが販売店・商社を活用する最大のメリットです。

実際、工作機械メーカーが直販にはしった米国では、売るものが無くなった商社や販売店がこぞって“日本製の工作機械”を担ぐ様になりました。

つまり、日本の工作機械産業が飛躍できたきっかけは、
・汎用機からNC機への技術革新
・米国の商社・販売店が日本の工作機械を担いでくれたこと
に、あるのです。

実際、国内において、直販を主体とする工作機械メーカーは、ほぼ倒産しています。

板金機械と工作機械の最大の違い

こういうと「いや、板金機械最大手の某社は、直販じゃないか」と思われる方もいるかもしれません。

ところが、板金機械(鍛圧・板金機械)は、工作機械と全く特性が異なります。

まず「工作機械」の定義は、加工において“切り粉”の発生する加工設備のことを指します。
実際「板金機械」の場合、加工において“切り粉”は発生しません(ブランクは発生しますが)。

板金加工は機械加工と比較すると、圧倒的に工程が少ないです。

したがって、少ない種類の設備で加工を完結させることができ、1社でほぼ全ての工程をカバーするラインナップが可能になります。

これに対して、工作機械が対象領域とする機械加工は、工程が非常に多岐に渡ります。

また、そもそも材料の種類や表面処理の種類も桁違いに多く、加工条件や加工特性があまりに異なるため、1社で全ての工程をカバーすることができません。

こうした特性もあって、コンサルタント的に仲介する商社・販売店が機能を発揮しやすいのです。

なぜキーエンスは「直販」と「販売店ルート」を使い分けているのか?

「いや、現在の様なデジタルの時代は、メーカー直販の方がいいよ」といわれる方もおられる様です。

しかし、実際のところ、「メーカー直販」で有名なキーエンスも、センサーや画像処理ユニットの様な“コンポーネント”は「直販」ですが、三次元測定機の様な高額“設備”は「販売店経由」の仕切りを用意しています。

ファナックも制御装置の様な“コンポーネント”は直販である一方、ロボドリルやロボカットの様な“設備”は「販売店経由」ですし、もっというと、卸商社→販売店→ユーザーといった、厳格な流通チャネルを堅持しています。

つまり、
・情報流

・商流
というのは別物で、前者はデジタルが重要ですし、かなりの比率で置き換わると思いますが、現実問題として、それが全てにはなりません。また後者においては(特に高額商品については)人が介在する余地がいまだに大きいのです。

では、この「直販」にはしる某大手工作機械メーカーに、他の工作機械メーカーが追随するか、どうかでいくと、これから不況が本格的になると、残念ながら一部の工作機械メーカーは追随する可能性が高いと思います

追随した結果、うまくいくかどうかでいくと、うまくいきませんから「やっぱり商社・販売店経由にしないと成り立たないよね」ということで、4~5年でもとの流れに戻るとは思います。

かつて、不景気になるたびに、安価な外国製の工作機械が注目され、一部のユーザーも安価な外国製の工作機械を導入しましたが、結局、その後は国産の工作機械に戻ってきています。

工作機械直販問題も同じことで、一時的にはそれに流れるメーカー・ユーザーもいるかもしれませんが、本質的には良いこと・ベストなことに収れんされていくとは思います。

しかし、この「直販」に流される4~5年ほどは厳しい状況が商社・販売店も続くと思います。

ですから商社・販売店こそ、デジタルを駆使した情報流と、人による人的営業(商流)とを合わせ技で、そしてユーザーから選ばれる独自性の高いサービスを提供していく必要があるのです。

顧客(ユーザー)から選ばれ続ける商社・販売店になる方法

繰り返しにはなりますが、今の流れが続くと「従来のやり方」だけを続けていると、商社・販売店のビジネスはより厳しくなると思います。

なぜなら、味方だったはずのメーカー(仕入先)が、ある種「敵」になりかねない状態だからです。

これはメーカーだけでなく、卸商社にもいえる話です。

従来は仕入先の担当者とゴルフに行って飲み食いをしていれば、相応に商圏は守れたかもしれません。

しかし、これからはメーカーや仕入先の庇護がなかったとしても、顧客(ユーザー)から選ばれ続ける商社・販売店を目指さなければなりません。

実際、私の顧問先の地域一番の機械工具商社A社も、前述の某大手工作機械メーカーの工作機械を、某大手産業機械メーカーに納めていました。

かつ、この機械工具商社A社は、前述の某大手工作機械メーカーのトップクラスの代理店でもあります。

ところが、前述の某大手工作機械メーカーの経営トップ自ら、この某大手産業機械メーカーに「これからは直販にしましょう」と働きかけたのです。

しかし、この某大手産業機械メーカーの社長が「いえ、ウチは日ごろからA社さんにお世話になっているのでA社経由で買います」と要求を突っぱねたため、このA社の商権(ルート)は守られました。

船井総合研究所では、すでに20年前から「ものづくり経営研究会 生産財商社経営部会」という、商社・販売店の経営勉強会を主宰してきました。

この経営勉強会では以前から、地域密着型の商社・販売店が差別化する方法(言い換えれば顧客から独自性を認められて必要とされる方法)として、「3K」というキーワードを掲げてきました。

3Kとは、

・加工
・工事
・工作機械中古
の3つです。

このいずれか、できれば“全て”を手掛けること、それが地域密着型の商社・販売店が差別化を図り、生産性を上げる方法です。

そして来る2024年7月11日(木曜日)に大阪会場(船井総研大阪本社)で開催される「ものづくり経営研究会 生産財商社経営部会7月度定例会」では、石川県に本社をおき、加工品ビジネス(部品加工調達代行)で業績を伸ばす商社、森康株式会社 代表取締役社長 森 友恒 様 を特別ゲスト講師としてお招きしています。

同社は、前述の通り加工品を取り扱う商社ですが、2021年からこの3年間で売上約1.5倍に成長。さらに今後5年間で売上2倍・生産性125%成長を実現し、2030年には年商100億円を目指して事業に邁進されている会社です

つまり同社の場合は前述の3Kのうち、特に「加工」に注力することで成功されているモデル企業です。

なお、この「ものづくり経営研究会 生産財商社経営部会7月度定例会」は、経営者様限定で1社1回までに限り、“無料お試しご参加”が可能です。

ちなみに同社が手掛ける「加工ビジネス」は、成長ビジネスでもあります。

顧客から必要とされるビジネスであるが故に成長ビジネスなのであり、その結果、同社も前述の様な高い成長を遂げ、そして未来に対しても確たるビジョンを描けているのです。

本経営研究会への「無料お試しご参加」へのお申込みは、下記URLから行えます。
ぜひ、この貴重な機会、「無料お試しご参加」をご検討いただければと思います。

無料お試し参加「ものづくり経営研究会 生産財商社経営部会7月度定例会」はこちらから!!
↓↓↓
https://seizougyou-koujoukeiei.funaisoken.co.jp/event/subcommittee/10646/

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