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片山和也の生産財マーケティングの視点【不況を乗り切るポイント(5):独自のポジションを取る】

不況を乗り切るためのポイントを数回のコラムで述べてきました。
私は経営コンサルタントとして生産財業界を専門としていますが、そ
の会社のレベルによって提案する中身が異なります。
具体的には、
 レベル1:下請け業態で自社商品が無い
 レベル2:自社商品は有るが標準化されていない
 レベル3:全国区のナショナルブランドを持っている
の3つのレベルに分けることができると思います。
レベル1の会社に対しては「プル型営業システム(小冊子等コンテン
ツ制作含む)」「クロージングツール」「事後フォローツール」の提
案を行い、全国区への商圏拡大、あるいは商圏エリア拡大の提案を行
います。
レベル2の会社に対しては上記レベル1の提案に加えて、ユーザーに
とって「コモディティ」となり得る商品提案を行います。これは多く
の場合、コモディティとなり得る「総合カタログ」の提案となります。
さらにレベル3の会社に対しては「独自のポジションを取る(=ポジ
ショニング)」の提案を行います。

ポジショニング提案の事例として、某測定工具メーカーへの提案を挙
げることができます。測定工具(スモールツール)の世界においては、
ミツトヨが圧倒的なシェアを持っています。ですから一見すると例え
ば今さら総合カタログを市場に投入しても、ユーザーにとっての「コ
モディティ(=必需品)」にはなり得ない様に見えます。
しかし実際にはミツトヨの測定工具というのは、いわゆるトレーサビ
リティーが求められる様な「インライン」の測定が主要ドメインです。
それに対して「アウトライン」の測定という分野も存在します。例え
ば溶接用のゲージや、環境測定器といった分野は「アウトライン」の
測定分野です。この「アウトライン」の分野になると専門問屋のカタ
ログしか総合カタログが存在しません。自社の取扱商品をメーカー別
に網羅しただけの問屋のカタログは、必ずしもユーザーにとって最適
なMD(=品揃え)になってはいません。
そこで市場調査を行ってメーカーの視点でMDを組み、「アウトライ
ン」専用の総合カタログとして世に出したところ、これは非常にヒッ
トしました。これが”ポジショニング(=独自のポジションを取
る)”ということです。

こうしたポジショニングでヒットした事例としては、例えば15年ほ
ど前のマキノフライス製作所の「高速高送り加工」を挙げることがで
きます。これはフライス加工においてZ軸方向の取しろを最低限とし
て、送り速度を従来の数倍に上げて加工を行う、というコンセプトで
す。このコンセプトを具現化した新商品が立形マシニングセンタV5
5であり、この機種は大ヒットしました。
従来からもアルミ加工の専用マシンとして、同様の加工法はあったわ
けですが、明確にポジションとしてコンセプトを打ち出したのがV5
5だった訳です。高速CNC制御に加えて機械精度・剛性が求められ
る技術の勝利であると同時に、マーケティング面での成功でもあるわ
けです。

また10年ほど前のヤマザキマザック「インテグレックス」も同様の
成功例でしょう。イングレックスはCNC旋盤機能に加え、B軸・C
軸・Y軸が付加された5軸複合加工機です。
インテグレックス発売以前から日立精機のハイセルや、池貝の複合旋
盤など同じコンセプトの商品はあった訳ですが、インテグレックスほ
どのヒットはしませんでした。
インテグレックスの場合は、まずネーミングが良いといえます。イン
テグレート(=統合・複合)からインテグレックスという名前が生ま
れましたが、ネーミングからそのコンセプトが理解できます。
インテグレックスは価格競争力もさることながら、プロモーション・
営業ツール・テスト加工対応等が全てライバルメーカーよりも勝って
いました。その結果、複合機と言えばマザック、というポジションを
取ることができた訳です。

この様に独自のポジションを取ることができ、さらにそこに一定の需
要があれば業績は劇的に伸びます。新たなポジションはどこなのか?
常に経営者が考えておくべきことだと思います。

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