最近、多くの経営者の方が言われるのが「時代の潮目が変わった」と
いうことです。今回の不況について「3月が底で4月から良くなる」
あるいは「5月が底で6月から良くなる」と言われていましたが、今
のところ景気が良くなるきざしは見られません。良くなるどころか、
コマツの生産計画などは7~8月に2回目の底を打つとの情報もあり
ます。
私は昨年から今年にかけて、次のように時流が変わったと考えていま
す。
ブランド品 ⇒ ローコスト品
設備・専門品 ⇒ 必需品
大企業 ⇒ 中小企業
技術 ⇒ イメージ
総力戦 ⇒ ゲリラ戦
ローコスト品や必需品への時流の変化については今までも述べてきた
通りですが、今回の不況の特徴は中小企業よりもむしろ大企業の方が
ダメージも大きいということです。今回の不況でも業績を落としてい
ない会社の特徴のなかの1つは、大企業だけではなく中小企業ともバ
ランスよく取引を行っている会社です。
例えば京都に従業員150人前後のレーザー加工機を製造している会
社がありますが、ここの設備はリチウムイオンバッテリーのケースを
溶接するのに欠かせないため、現在でも好調です。大阪の従業員15
0人前後の紙おむつ製造用設備を製造している会社も、その分野では
世界シェア6割をにぎっているため、業績は落ちておらず新工場を予
定通り着工しています。さらに自動車のマフラーの中に入れる新環境
対応の触媒を製造している従業員350名の会社も、自動車不況とい
われながらも予定通り全世界の設備投資を行っています。そして、こ
うしたニッチトップの中小・中堅企業はもちろん、こうした会社と運
良く取引できている会社も不況のダメージをおさえることができてい
ます。
これらの会社が展開しているようなニッチな分野は、大手企業が参入
しようにも市場規模が小さすぎ、充分に収益を上げることができませ
ん。例えば東芝機械が5年前に撤退した大型工作機械の市場規模は約
300億円、それに対して同社が主要事業とした射出成型機の市場規
模は約3000億円、こうした市場規模が同社の事業選択に影響を与
えたのは間違いないでしょう。
ところが現在、射出成型機の市場は壊滅的状態です。それに対して大
型工作機械というのはいまだに好調で、大阪にある従業員150人の
大型立旋盤メーカーは約3年分の受注をかかえています。
このように、大きなマーケットを収益源とする大手企業ほど不況のダ
メージを受け、ニッチマーケットでトップの中小・中堅企業には比較
的好調な会社も多く存在するのです。
ニッチなマーケットとは総力戦に対して局地戦であり、言い換えれば
「ゲリラ」的な戦い方ができる会社は、今回の不況を生き抜くことが
できるのではないでしょうか。
「潮目が変わった」という中で、最も意識しなければならないのが、
『総力戦⇒ゲリラ戦』
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