米国西海岸グレートカンパニー視察セミナーレポート:4日目(2019年 9月20日 金曜日)
【視察9社目】ウォルマート
- ●売上高50兆円超の売上高世界最大の小売業である。
- ●一昨日視察したホールフーズが高級路線であるのに対し、ウォルマートは”エブリデー・ロープライス”を売りにする、ディスカウントストアである。
- ●アマゾンに対抗して、ウォルマートも通販を展開している。そのウォルマートの通販で購入した顧客が、店舗で受取ができる仕組みが上図ピッキングセンターである。
- ●サンノゼより約70km、陸路バスにてサンフランシスコ市内に移動します。
【視察10社目】ファーストリパブリックバンク
(1)同行の概要
- ●日本には銀行が200行存在する。それに対してアメリカでは5000行以上の銀行が存在する。
- ●アメリカでは25番目に大きな銀行である。創業者が現在も代表を務めている。
- ●ここ4年間で時価総額が2倍に。預金残高と貸出高も、この5年で2倍と急成長を遂げている。毎年平均すると2割以上の成長を遂げている。新規顧客が増えなくても、2件目の自宅の購入など既存顧客との取引が拡大している。
(2)同行の理念
- ●数字も大事であるが、企業文化がそれ以上に大事である。当行は人が辞めない。他の銀行は人の入れ替えが激しい。
- ●リレーションシップを重視しており、顧客の担当者は1人に絞っている。他の大きな銀行は役割ごとに部門が分かれている。
- ●クライアントサービスで競合を差別化している。CEOはクライアントサービス・オーガニゼーションと言っている。
- ●全米平均を40%近く上回るレベルで成長を続けている。この業界の中でベストな存在になりたい、と思っている。
(3)同行のビジネスモデル
- ●お客とともに成長する、というスタンスをとっている。お客とともに成長する、というのがシンプルなビジネスモデルである。
- ●同行の売上比率はサンフランシスコで39%、ニューヨークで21%、ロサンゼルス18%、ボストン8%である。サンフランシスコのベイエリアを中心に、市場が伸びている。59%の富裕層がこのエリアに住んでいる。ニューヨークやボストンよりも、同エリアの方が成長している。
- ●このサービスを他人に紹介したいか、という指標NPSで、同行は81点という高いスコアを有している。アメリカの銀行業の平均は35である。ちなみにアップルが63、ネットフリックスが62である。
- ●ローンの中身は質が高く、リスクを取らないスタイルである。返済能力のない顧客には貸出をしない。アメリカの他銀行は不良債権比率が0.4%なのに対し、当行は0.15%である。リーマン・ショックの際も他銀行の1/3くらいの損失で済んだ。
- ●ローンのうち9割は1985年から取引が続いている。
- ●ミレニアル世代へのビジネスが伸びている。この世代は他の世代と全く違う世代である。学資ローンの借り換えをサービスとして提供している。
【視察11社目】セールスフォース・ドットコム
(1)同社の概要
- ●元オラクルのエンジニア、マーク・ベニオフが創業。「アマゾンの様に業務用ソフトを簡単に扱えないか」という発想が創業のきっかけである。
- ●創業20周年であるが、シリコンバレーでは古株である。全世界に54事業所があり、従業員4万人、約15万社のユーザーがおり、売上高140億である。
- ●セールスフォースCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント:顧客管理システム)は理論上1つのデータベースであり、基幹システムとの連携がシームレスである。
- ●荏原製作所は営業担当者が日あたり1時間しか営業ができていなかった。同システムの導入により、営業従事者の効率を28%高めることができた。
(2)提供サービスのコンセプト
- ●産業革命は第一次から始まり、現在は第四次産業革命となっている。キーワードは”コネクテッド(つながる)”ということである。
- ●お客が朝起きてオフィスに向かうまで、モバイルのショートメールチェックに始まり、スマートスピーカーの使用、パソコンでメールチェックをする、など全てがコネクテッドである。セールスフォースはこうした顧客の動きを全て管理することができる。
- ●コネクテッドによって我々の生活は大いに楽になった。ウーバーも、かつてタクシーを捕まえることの大変さからすると劇的に楽になった。
- ●テスラ、ウーバー、ネットフリックスは顧客データを活用することによって、大いに価値を高めることに成功している。
- ●営業をする際に最も考えなければならないことは、カスタマー・サクセスである。
- ●セールスフォースには4つのコア・バリューがある。
- ●1:1:1モデルというポリシーがある。1%の時価総額、1%の時間、1%のプロダクトを地域社会に提供している。地域社会に貢献するボランティアへの参加は、会社として就業時間と認めて給料を払う。
- ●セールスフォースが顧客に提供するプラットフォームを、カスタマー360と呼んでいる。カスタマー360は下記のモジュールより構成されている。
- ●このプラットフォームにより、将来には300万人もの雇用を生み出すと予想されている。
- ●セールスフォースは家族主義に回帰している。ハワイ語で“家族”のことをOhana(オハナ)と呼ぶ。そこで、この60階のフロアも“オハナフロア”と名付けた。
1. トラスト:信用
2. カスタマー・サクセス:お客様の成功
3. イノベーション
4. イクオリティ:校正さ
<カスタマー360>
・セールス
・サービス
・マーケティング
・コマース
・エンゲージメント
・プラットフォームエコシステム
・インテグレーション
・アナリティクス
・業種別ソリューション
・コミュニティ
・人材育成
・プロダクティビティ
(3)同社の人事(HR)戦略
- ●心理学的アプローチで同社の人事戦略の最適化を行っている。
- ●エンゲージメントに重点を置いている。エンゲージメントとは信頼関係であり、「自分自身が必要とされていると感じている状態」である。
- ●従業員がエンゲージしている状態であれば、お客様にさらなる良い状態を提供する。そしてお客がハッピーなら、さらにお金を落とす。
- ●エンゲージの逆はディス・エンゲージである。言うならば会社が自分のことを気にかけてくれていない、と感じるとディス・エンゲージの状態に陥る。
- ●同社の人事戦略は「エンプロイー360」に集約される。
- ●心理学の法則である、マズローの欲求五段階説をHRマネジメントに取り入れている。人は安全だと思える環境でないと、パフォーマンスを発揮しない。その上で承認欲求を満たすことで、人のモチベーション(やる気)は上がる。
- ●そのために信頼関係を築き、働く意味・目的を共有する。
- ●従業員が必要な情報は、サーチエンジン“ドリルヘッド”により提供している。このサーチエンジンにより社員は必要としている情報を簡単に探せる。同時に、従業員が必要としていることを把握することができ、最終的には従業員が探さなくても良い様にする。
- ●前述の“オン・ボーディング”では、勤務初日の7日前にシステムから行うべき準備が送られてくる。そして1年が経過すると勤続1年目に必要な準備が送られてくる。こうした施策の結果、社員からの質問が35%減り、人事管理の生産性が上がった。
- ●オン・ボーディングが完了したら従業員への研修サービスを提供することにより信頼性を構築する。
- ●また同社にはパフォーマンス・マネジメント・システムがある。これはセールスフォースにより情報集積を行い、自分の仕事がどれだけ重要か目で見てわかる様になる。
- ●この様に信頼関係を構築し、目的意識を明確にした結果、94%の従業員が「さらにがんばる気持ちがある」と答えている。そして過去5年間で離職率が7%下がった。
- ●社員が長く社内で頑張れば、お客もそのまま維持される。現在の売上のうち80%が既存顧客からもたらされている。こうした背景があり、過去のあらゆる会社と比較していち早く売上があがった。
- ●さらに同社にはV2MOMという経営プロセスがある。同社の人事戦略、人事評価もV2MOMによって構成されている。
<エンプロイー360>
・オン・ボーディング(=就業に必要な手ほどき)
・サービス(=従業員向けサポート)
・エンゲージメント
・スキルの向上
・分析
<V2MOM>
・ビジョン(Vision) 私たちは何をしたいのか?
・価値(Values) 私たちは何を重んじるのか?
・メソッド(Methods) どのように行うのか?
・障害(Obstacles) 何が障害となりうるのか?
・基準(Measures) 成功をどう評価するのか?
(4)V2MOMについて
- ●社風の良い会社とは何か?
- ●成長を加速させるやり方とは?
- ●会社への安心感や情報が必要。その為に「つながる」「認める」「支える」が重要である。そのためにテクノロジーの有効活用が必要。
- ●1:1:1モデル(1%の時価総額、1%の時間、1%のプロダクトを地域社会に提供)は次の4つの良い効果がある。
- ●V2MOMの活用。目標管理制度に落とし込んでいる。
- ●頭で考えるのではなく、細胞に覚え込ませることが必要。
・成長を感じられる
・認めてもらえる
・貢献を実感できる
・やる気 向上心
・スピード 学習速度
・情報共有 経験値
1)会社イメージの向上
2)社員の意欲向上
3)ミレニアル新世代からの共感
4)業績への貢献
社会貢献活動を通して社員が輝く場所をつくる。
・ビジョン(Vision) 私たちは何をしたいのか?
・価値(Values) 私たちは何を重んじるのか?
・メソッド(Methods) どのように行うのか?
・障害(Obstacles) 何が障害となりうるのか?
・基準(Measures) 成功をどう評価するのか?
<落とし込み例>
V:セールスフォースの地方への普及
V:カスタマー・サクセス
M:パートナーとのアライアンスで推進
O:地方における知名度の低さ
M:イベントの実施回数、新規開拓の受注率など数字で追えるもの
(5)ザ・モデル/セールスイネーブルメントについて
- ●セールスイネーブルメントとは、営業の成果を高めるために提供するテクノロジーを活用したサービスである。セールスイネーブルメントの結果、セールスフォースでは年30%の継続成長を実現した。
- ●セールスイネーブルメントの結果、続々入ってくる営業の育成が行える。従来は半年かかっていた育成を4ケ月で行える様になった。
- ●ザ・モデルとは、セールスイネーブルメントを実現するプロセスである。
- ●営業と人材育成データと紐づかせている。営業を育成する上で3つの手段がある。
<落とし込み例>
1)トレーニング
2)コーチング
3)ナレッジマネジメント
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