成熟期に儲かるビジネスは“狭間(はざま)”ビジネスです。
例えば激戦区の外食産業。外食産業は1997年の市場規模30兆円をピークに、その後所得の減少等により市場規模の縮小が続き、現在の市場規模は約25兆円です。
そうした中、好業績で成長を続けている飲食店は全てといってよいほど“狭間(はざま)”ビジネスを手がけています。
例えばコメダ珈琲。同社は増収増益を続け、営業利益率は何と25%にも及びます。
その理由は、同社は単なる「喫茶店」なのではなく、「喫茶店」と「ファミリーレストラン」の狭間でビジネスを行っているからです。
コメダ珈琲に行くと、実はフードメニューが充実していることがわかります。同社は喫茶店を装いながら、実は80種類以上のフードメニューを置いており、また店のつくりもカフェというよりも居心地の良いファミリーレストランです。
また、最近だと東証一部に上場したばかりの居酒屋チェーン、串カツ田中 も狭間ビジネスを手がけています。同社は居酒屋ビジネスという成熟業界の中で2割成長を続けていますが、同社は「串カツ屋」というマーケットど真ん中で勝負しているのではなく、「串カツ屋」と「居酒屋」の“狭間”で勝負しているのです。例えば同社のメニューをみると串カツ以外の料理が7割以上です。
「串カツ屋」として勝負するとなると大変ですが、「串カツ居酒屋」となると同社しかなく、従って同社はこう業績をキープし続けているのです。
こういう視点で世の中のビジネスを見ると、近年業績を伸ばしている会社の多くが“狭間ビジネス”を手がけていることがわかります。
例えば近年、業績を伸ばす東海エリアの某部品加工会社は、10億円弱であった年商が2年間で20億円を超えています。2年間で年商2倍以上とは、完全成熟マーケットの製造業としては驚異的な数字だと思います。
同社は一見すると「部品加工業」です。ところが実際には、受注した部品加工の大半は自社でこなさず外注を使っています。つまり「部品加工業」と「商社」の“狭間ビジネス”を行っているのです。
同様に近畿エリアに本社を置く某部品加工商社は、毎年毎年、営業拠点を2~3カ所ずつ増やしています。そしてここ2年間で業績をやはり1.6倍以上に伸ばしています。
この会社の場合は、「商社」であることを全面にうたっていますが、「商社」から加工品を買うことのメリットを全面的に訴求しています。
例えば装置メーカーの購買担当者からすると、数百枚にも及ぶ加工図面を、それぞれ最適な加工会社に割り振り、しかも納期管理を行い、品質対応まで行うのはもの凄い手間になります。
そんな手間を、「当社に任せてもらえれば全て代行して行いますよ」と、いわゆる“部品加工調達代行”機能を全面に出し、装置メーカーの購買担当者からの支持を集めているのです。
実際、部品加工というのは、同じ図面でも見積もる鉄工所によって価格はバラバラであり、「商社だから高い」とは言えない世界です。もっというと、設備を持つ鉄工所でも自社で対応できない仕事が大半で、それは外注に振っているわけです。
そして製造業の場合は外注仕事の場合は1.5~2倍くらいの価格設定をするケースが大半です。これに対して、商社の場合はのせても2~3割程度、多くの場合15%前後で見積ります。
従って部品加工の世界の場合は、必ずしも「商社だから製造業より高い」とは言えない世界があり、こうしたことが前述の2社が劇的に業績を伸ばしている背景にあるわけなのです。
つまり「部品加工業」と「商社」の狭間ビジネスは儲かるのです。
そうした中、近年増えてきているのが、「金型製造業」が「部品加工業」を手がけるケースです。
金型ビジネスの弱点は、景気の良し悪しの影響をモロに受けてしまい、受注が不安定であることです。
といって、自社の金型を活用した部品加工事業に手を出すと、既存の客先の仕事を奪ってしまうことになり、本業に差し障りがでてしまいます。
そこで、自社の金型の延長線上の「部品加工」ではなく、お隣の業界の「部品加工」を事業化するのです。
例えば関東エリアに本社のある某ブロー金型製造業の場合、射出成形の部品加工を事業化することにより、直近6年間で売上を4倍にも伸ばしています。
ブロー金型の製造業がブロー成形に手を出すと、狭い業界の中で大変な波風を立てることになります。しかし、ブロー成形のお隣の業界である射出成形の業界であれば、部品加工事業に手を出しても波風は立ちません。
また、鍛造金型を製造する金型製造業が、機械加工の部品加工を受託するケースで、新たに1億円の数字を本業に上乗せしているケースもあります。
この場合も、本業の鍛造金型を使用する部品加工に手を出すと、やはり狭い業界の中で大変な波風が立ちます。しかし、一般機械加工の部品加工受託であれば何ら問題はありません。
仕事を出す側のバイヤーからしても、単なる商社に部品加工の仕事を出すよりも、本業が金型とはいえ何らかの社内設備を持ち、社内で測定・品質管理が可能な製造業に仕事を出す方が納得感も得られます。
何より、金型製造業が金型だけで業績を伸ばすのは大変です。
なぜなら、その金型のマーケットが著しく小さいケースが多く、新規開拓をしようにも既に他の業者によってガチガチに固められているからです。
もっというと、トップ外交などで運よく現場に入り込めたとしても、現場の担当者から「この新しい金型のせいで加工がうまくいかないんだ」などと言われたら一巻の終わりです。
なぜなら金型の検収というのはどこまでもグレーなところがあり、現場の担当者からの支持が取り付けられないと、いつまでも検収が上がらない、というのもザラです。
その点、一般部品加工の世界は、そんなしがらみはありません。
逆に中堅・大手企業の購買部門の担当者は、「働き方改革」の中で、いかに仕事を効率的にこなすか、といったことに追われています。
そうした時流の中で、「部品加工調達代行」という前述の“狭間ビジネス”が伸びています。
前述の各社が、業績を2倍、4倍と伸ばしているのもそうしたことが背景なのです。
また「製造業」と異なり、部品加工も含めて「商社」ビジネスは、電話一つ、机一つからスタートすることができます。
例えば広島市に本社を置く、ゴム金型製造業の平岡工業様の場合、本業のゴム金型の製造以外に一般部品加工の事業を手がけ、何とたった1名の担当者で1億円もの売上をつくりだしています。
↓↓↓平岡工業様の事例
https://lpsec.funaisoken.co.jp/factory-business/048722_lp/index.html
この様に自社のビジネスが一見、成熟ビジネス、あるいは新規開拓が難しいビジネスに見えても、あるいは成長余地が乏しいビジネスに見えても、こうした「狭間(はざま)ビジネス」に目を向ければ、一挙に成長のチャンスが広がるのです。
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