2015年4月から6月にかけて不振だった国内設備投資市況も、7月以降は一部で変化が見られます。
特に東海エリアでは7月からトヨタ自動車の増産が始まったこと、またアイシングループの設備投資・新規ライン立上げ等によって、関係するセットメーカーや治具メーカーには大量の仕事が出ています。
某大手工作機械メーカーなども、数十億円の受注をした、といいます。
ただし同じ自動車関係でも、ホンダ・スズキのティア1は厳しい様です。トヨタは輸出車を国内で生産していますが、ホンダやスズキの場合はほぼ国内向けの車しか日本では生産していません。国内の自動車販売台数は伸び悩んでいます。
どちらが良い・悪いということではありませんが、ビジネスモデルの違いが、その時の時流(現在なら円安)によって、異なる結果を生み出している、ということです。
例えば今、多品種少量の部品加工業は好調ですが、機械工具商社は全般的に苦戦です。具体的には4月以降の昨年対比で、横ばいからややマイナスの会社が多いのではないでしょうか。
ところが会社によっては、この4月以降も昨年対比で120%近い業績を上げている会社もあります。
そうした会社は、航空機関連やスマホ電子部品関連、自動車センサー関連やロボット関連など、伸び盛りの大手ユーザーと取引している会社です。まさに中小企業の業績は、取引先で決まる、ということが確実に言えます。
そして、こうした企業間格差・業績の二極化は2000年以降加速しており、特に大手企業よりも小規模企業になればなるほど、二極化が進んでいるのです。
2015年版の中小企業白書によると、経常利益率で上位25%の会社と、下位25%の会社との差を比較すると、年を追うごとにその差が拡大しています。
例えば小規模企業(製造業の場合で従業員20名未満)において1980年代は19.7ポイントであった差が2000年代には34.7ポイントに、さらに2010年以降は36.8ポイントにまで拡大しています。90年代の実に倍近くです。
また、この差は小規模企業よりも中規模企業、さらに大企業になると縮まります。小規模企業ほど社長個人の影響が出やすいからでしょう。
さらに興味深いのは、製造業において2000年以降、前述の上位25%の小規模企業の平均経常利益率が、大企業のそれを上回っているのです。
2010年以降をみると、上位25%の小規模企業の平均経常利益率が15.1%なのに対し、大企業の平均経常利益率は13.2%です。
ここから言えることは、企業間格差が広がっているとはいえ、それが企業規模とは不一致である、という事実です。
新聞などでは「中小企業は苦戦」と報道されていますが、このデータからは違う事実が見えてきます。
実際、私の顧問先を見ていても、社員8名程度の機械工具商社なのに、社員100名クラス並みの生産性を上げている会社もあります。
また部品加工業においては、今年に入ってから営業利益率10%を超える会社が複数社でてきました。従業員30名クラスの部品加工業で、です。
自社ブランドを持つメーカーでも、営業利益率3~5%の会社がザラです。営業利益率10%といえばメーカーの1つの目標数値ですが、いわゆる下請け型の部品加工業でも、それは実現可能なのです。
こうした高収益型の企業の経営者には1つの共通点があります。それは情報収集に非常に熱心、ということです。
地方の会社であれば、経営者の東京・名古屋・大阪への出張の頻度と比例しています。
なぜなら高収益企業の共通点は何らかの形でイノベーションを生み出しており、また時流適合のビジネスモデルをとっているからです。
まさに企業規模やハードの力よりも、知恵やソフトの時代になった、ということだと思います。
そうしたことは、私もコンサルティングの現場で体感してはいましたが、今年の中小企業白書を見るとそれがデータで示されていたことは非常に興味深いことだと思いました。
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