東亜精機工業様は大阪市に本社を置く従業員67名の治具製造業です。主に自動車用の治具を製造しています。
特に治具の中でも単なるX・Y・Z軸の位置決め治具ではなく、さらにB軸・C軸といった回転軸が加わる、ワンチャッキングでの割り出し治具に強みを持ちます。
X・Y・Z軸だけの治具は比較的どこの治具製造業でもつくることができます。ところが、このX・Y・Z軸に加えて回転軸であるB・C軸が加わることで、精度を出すことが飛躍的に難しくなります。
飛躍的に難しくなることで差別化を行うことができ、逆に価格競争を防ぐことができるのです。
また治具は金型同様、一見すると海外に出てしまう仕事の様に見えます。ところが、金型の場合は1つの部品で精度を出そうとするのに対し、治具の場合は複数の部品の集積で精度を出す必要があります。
従って治具には累積誤差が発生するため、組み立て時の摺り合わせが必要ですし、部品そのものも高精度かつ長期間精度が維持できるつくり方をする必要があります。
例えば「サブゼロ処理」もその1つです。「サブゼロ」とは“ゼロ未満”という意味ですが、ドライアイスを入れた箱の中にワークを入れ、数十分間から数時間保持します。
こうした処理を行うことによって、焼き戻しで除去しきれなかった残留応力を取り除くことができ、その結果経年変化を防ぐことができます。
ですから東亜精機工業様の部品は、簡単なピンに見えてもお客が「こんな部品でこんなに価格が高いの?」と驚かれることがあるくらい、高いケースがあります。
見た目は簡単なピンでも、治具の中ではワークの位置決めに使用するキーとなる部品であることもあります。こうしたキー部品が経年変化を起こすと、ワークの精度不良につながります。
高いcp値が求められる自動車部品には致命的なことです。
また、同社で高精度加工に使用する安田工業のジグボーラーはもちろん恒温室に入れられています。
さらにジグボーラーに載せるワークも、加工する24時間前から同じ恒温室に入れられ、熱影響を取り除いた上で加工を行います。
これは3次元測定器の工程でも同じです。
加工後のワークは3次元測定器で測定・検査されますが、3次元測定器に載せるワークは、やはり24時間前に3次元測定器と同じ恒温室に入れられ、熱影響を取り除きます。
さらには組立を終え、完成した治具全体を3次元測定器に載せ、実際に治具を動かしながら3次元測定器で測定を行います。
それぞれの部品を3次元測定器で測定する治具製造業は一般的ですが、完成した治具を3次元測定器にまで載せて測定するケースは、極めて稀だとのことです。
ここまでこだわった治具づくりを行うからこそ、同社は価格競争にも陥らず、また現在も非常に多忙を極めておられます。
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