視察7社目:ワーゲニンゲン大学(WAGENINGEN UR)
(1)同大学の概要
- 6000人の職員を抱え9つの分校・研究機関をもち、年間の収入は7億5000万ユーロ。
- 研究に力を入れている大学であり、学士と修士の人数が同じ(ともに約4200名)。博士課程に1900人が在籍している。農業大学としては人気が高く、世界で2位につけている。
(2)同大学の研究テーマ
- 世界レベルでの人口増加に伴う食料問題、また先進国では過剰摂取による健康問題など、フード・食料にまつわる問題は大きい。
- ワーゲニンゲン大学の研究テーマは 1)フード・食料生産 及び加工技術 2)環境保護・生態系維持 3)ライフスタイル・社会学 の大きく3つに分類することができる。
(3)産学交流について
- 企業との共同研究に力を入れている。大企業・中小企業ともに共同研究のプログラムがある。
- 例えば食品の鮮度を維持するためのパッケージングの研究、リーファーコンテナを最低限のエネルギーで輸送する研究が挙げられる。
- リーファーコンテナの研究は、デンマークの海運会社マースク社と行った。この研究の成果として、60%もの省エネを実現することができた。
- また花の発育をバイオセンサーで把握、発育の状態を把握することにより最適な物流を実現する研究を行っている。例えば一般的な物流は「先入れ・先出し」であるが、発育の状態が進んでいる鉢を先に払い出す物流への適用が考えられる。
(4)フードバレーについて
- アムステルダムから南東100kmくらいのエリアをフードバレーと呼ぶ。
- フードバレーには1500社の食品メーカー、8000人の科学者、70社の化学メーカー、200もの食品関係の研究機関が集積している。
視察8社目:アディメック(Adimec Electronic Image Syestems)
※同社内は写真撮影禁止
(1)同社の概要
- 同社の従業員は約100名。日本法人もあり、東京オフィスには5名、韓国に1名のスタッフが駐在している。
- 画像センサ及びレンズを中心としたカメラユニット(画像処理ユニット)のメーカーである。事業分野としては 1)マシンビジョン 2)メディカルイメージング(医療分野) 3)アウトドアイメージング(屋外セキュリティ等) の3つが挙げられる。
- 誘導装置など防衛関係の産業とも結びつきがある。
(2)同社の技術
- 同社に必要とされる技術分野は機械工学・電気工学・電子工学の分野である。
- イメージセンサは外部企業から調達している。開発設計と組立工程・検査工程は内製している。ただしEMCテスト(電磁気場テスト)とショックテスト(衝撃テスト)はできない。
- 求められるトップクラスの規格を採用している。クリーンルームはクラス3を所有。また製品に使用されるソフトも世界規格のものをしようしている。
- 全てにおいて、高いレベルに合わせることをコンセプトにしている。
(3)同社の生産現場
- CMOSなど画像センサは外部から購入している。レンズも外部から調達している。
- クリーン環境下の同社の工場内において、アッセンブリを行っている。
- 受注生産であり、カメラユニットの最低価格は20万円からである。
- リードタイムは平均2日間。最短で2時間。
- 部分的にダウンブローが施された組立ブースで、カメラユニットの組立が行われる。組立手順はWeb上にアップされた作業標準により指示される。また技能を伴う組立
工程については、自動機などで省力化がなされている。 - 1日あたりの生産数は15~20セットであると想像される。付加価値の高いカメラユニットであり、従業員があくせく働いている様子は無い。
(4)同社の戦略
- 同社は開発・設計と組立・検査に特化したファブレス的なメーカーである。
- 同社CEOが進める書籍が Strategy:Playing to win / Where to play and How to Winである。同書のタイトル通り、「勝つためにどこで戦うのか、どうやって戦うのか」を同社は実践している。
視察9社目:ロイヤル ダッチ シェル(Royal Dutch Shell)
(1)同社の概要
- 同社はウォルマート、エクソン・モービルと並ぶ、売上高38兆円の世界最大の売上を誇る。
- 採掘から精製・販売まで一手に手がけており、全世界の産油量の3%を同社が占める。
- シェルはシナリオ(=一種の未来予測)を持っていることで有名。石油危機の際はシナリオを持っていたことで乗り切れたと言われる。
- 今回プレゼンを実施するシナリオ・アナリストの木原氏は、もともと昭和シェル石油 四日市でエンジニアをしていた。自ら希望してシェル世界本社でのシナリオ・アナリストに就いている。
(2)なぜ同社がシナリオを重視しているのか
- 80年代はソ連崩壊、90年代はエネルギー転換といったシナリオを研究していた。
- シェルがシナリオを重視していることは、アイスホッケーで良く言われる逸話に当てはめることができる。普通のプレーヤーは玉があるところに行く。偉大なプレーヤーは玉が向かうところに行く。
(3)シェルが考えるシナリオの前提条件
- 不確実性が高い現在、将来を予測することはできない、という前提のもとにシナリオを立てている。
- 例えば他社が行っているのはフォーキャスト(=未来予測)。シェルが行っているのはシナリオズ(=複数のシナリオを持つ)ということである。
(4)これからの世界シナリオ
- 2050年までは全世界で急速な勢いで都市化が加速する。その結果、エネルギー消費量も劇的に増える。ただし地球温暖化の問題もあり同社としてもこのままの姿ではいられないと考えている。
- またフェイスブックなどのSNSにより力のバランスが変わってきており、いわば革命が起き易い環境になっている。SNSは先が読めない中で重要なシナリオになると考えている。
- さらにアメリカ・中国といったビッグ2(=マウンテンズ)は、輸送面においてパイプラインなどで合理化がし易い天然ガスに流れると思われる。
- それに対して、マウンテンズの政治の力が届きにくい市民社会(=オーシャンズ)においては、草の根のボトムアップ的な動きが、社会を変えていくはずである。そしてオーシャンズでは太陽光(ソーラー)が主流のエネルギーになると予想されている。
(5)同社の危機管理
- プレゼンテーションの前に、必ず避難経路の説明を行うことが社内で義務付けられている。
- ここ数年、危機管理が徹底される様になってきた。例えば階段には必ず手すりをつけ、歩く際には手すりを必ず持つ様にすることを同社内では徹底している。