片山和也の生産財マーケティングの視点【景気回復の兆候?自動車産業の活況とアメリカシフト】
先日、私の顧問先の部品加工業(従業員25名)にお伺いしたら、社
長が「4500万円の設備、発注したよ!」と言われていました。ロ
ングストロークタイプの特殊なマシニングセンタで、ボールネジの関
係で納期が11ヶ月もかかってしまいます。
なので、内示手配をされたそうです。
また、別の私の顧問先の部品加工業(従業員35名)も、4000万
円近い複合機を発注されました。さらに主軸高速回転のマシニングセ
ンタも導入予定です。
国内各企業の設備投資は下火ですが、上記の部品加工業が受託してい
るのは、海外に出荷される生産財(設備)の部品です。設備投資は振
るわなくても、海外向け物件の動きは、あるところにはあります。
こうした海外向け案件を牽引するのが自動車です。
自動車についてはここ1年くらいで、技術的なトレンドが決まった様
です。
まず1500cc以下クラスの小型車については、ダウンサウジング
した排気量のエンジンにターボチャージャーを装着し、排気量を落と
しながら出力は落とさないという、省エネエンジンの方向性です。
この省エネエンジンはBMWが開発し、フォルクスワーゲンが量産化
しました。日本でもトヨタグループを中心に、2015年には新型エ
コカーが出てくるでしょう。
さらに2500cc以上の大型車については、最先端技術を搭載した
ハイブリッドです。
コンパクトカーの場合、ハイブリッドにするとエンジンとモーターを
搭載することになり、どうしても原価が下がりません。その結果、カ
ーメーカーも全く儲かりません。なので、コンパトカーの省エネにつ
いては、ターボ+ダウンサイジングエンジン というオールメカによ
るコンセプトなのです。
これに対して2500ccを超える様な大型車はハイブリッドにして
もコストがあいます。今後はこの様な省エネエンジンとハイブリッド
との棲み分けが、世界の自動車産業の中で主流となるでしょう。
こうした動きをいち早くキャッチアップしているのがF1です。F1
は来年から、従来の1800ccエンジンから1600ccエンジン
にダウンサウジングしてターボ仕様とし、さらにハイブリッド化され
たフォーミュラーカーに変革されます。
自動車産業にとっては、F1への参加がより自社への研究開発にプラ
スとなる効果があり、ホンダが再びF1への復帰を決めたのはこうし
た背景があると言われています。
こうした省エネエンジン、ハイブリッドといったエコカーブームは、
日本企業にとっては朗報です。ターボチャージャーは世界でも7社く
らいしか量産する技術はなく、そのうち3社は三菱重工やIHIをは
じめとする日本企業です。ハイブリッドについては日本のお家芸であ
ることは言うまでもありません。
さらに北米では大型車ブームがおきています。GM、フォード、クラ
イスラーなどビッグ3各社は、需要に対応しきれないため緊急増産に
入ったと報道されています。
ファナックのロボドリルも、一時期は月産600台まで落ち込んでい
ましたが、現在では自動車産業の世界的な活況もあって月産2000
台まで回復してきているといいます。
こうした流れもあって、日本の輸出の最大相手国は、2012年は中
国を抜き、アメリカとなった様です(財務省 貿易統計 速報によ
る)。かつては「アメリカがくしゃみをすれば日本はカゼをひく」と
いっていました。
中国向け輸出が増えたとはいえ、中国で生産したその先は結局のとこ
ろアメリカです。むしろアメリカ向けの方が、中国向けよりも高付加
価値な高い製品を売ることができます。
そういう意味でも、日本の最大の輸出相手国がアメリカになったこと
は、生産財業界にとっても喜ばしいことだと私は思います。
こうした動きの背景は、アベノミクスというよりもアメリカのシェー
ルガス革命によるものです。円高もアメリカのエネルギー輸出を有利
に進めるためのアメリカの国家戦略であると考えるべきでしょう。
いずれにしても時流を読み、これからのチャンスをものにすることが
経営者に求められることなのです。
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