視察1社目:アルスメール花市場(Flora Holland)
(1)同市場の概要
- スキポール空港のすぐ南に位置するアルスメール花市場は、世界最大の生花取引市場です。
- 園芸はオランダの主要産業のひとつですが、その花の輸出港ともいえる取引所がこの花市場です。
- この施設に集められる生花の80%がオランダ国内の花農家からのものであり、海外からも集められています。
(2)同市場の施設・対応能力
- 朝6時から10時までの間にセリが行われます。施設そのものは24時間稼動となっています。1日あたり2100万本の株が取引されています。
- 花の中でも切花が多く、切花を保管するための広大な冷蔵庫(4.5万㎡)も持っています。広大な敷地であるため、敷地内に警察署や消防署、スーパーといったインフラ施設も完備されています。
(3)同市場の施設・対応能力
- ここアルスメールで扱う花の80%以上が輸出されており、世界各国から注文された花は、取引が成立すると直ちにスキポール空港に運ばれ空輸されます。その日の午後にはパリやロンドンの花屋の店先に並べられる早さです。
- 出荷される80%がトラックであり、残り20%が空輸となっています。
- 輸出先としてはドイツが34%、フランスが16%、イギリスが12%、イタリアが6%、ロシアが5%といった比率になっています。
- 同市場はその規模・取扱い点数や集積度合いが圧倒的であり、従って価格競争力があり生花における最安値を提供していると自負している。
視察2社目:アムステルダム国立美術館(Yanmar Europe B.V.)
- 同美術館は1885年にオープンした。レンブラントやフェルメールの収蔵で世界的に有名。
- 欧州の美術館としては珍しく、初めから美術品の展示を目的としてつくられた建築物である。他の美術館は元宮殿や貴族の屋敷であったケースが多い。
- オランダは歴史的にプロテスタントのリベラル色の強い国であり、同美術館も宗教色が薄い。
- かつて画家の最大のパトロンは教会であった。教会のニーズは聖書のシーンを絵に表すこと。
- それに対してオランダの画家のパトロンは市民階級であった。そのニーズは肖像画や集合肖像画であった。
- 同美術館の中心的な画家であるレンブラントも、こうした肖像画や集合肖像画を描く画家であった。レンブラントの代表作である「夜警」も、集合肖像画である。
- またフェルメールも作品も同美術館には多く収蔵されている。
- 同美術館は改修工事のため、10年近く閉鎖されていた。美術館の拡張のために自転車道路を封鎖することが市民の反発をかい訴訟に。結局、美術館内に自転車道路を通すことで落ちついた。
視察3社目:ゴッホ美術館(Van Gogh Museum)
- フィンセント・ファン・ゴッホの作品を中心とした国立美術館。年間160万人が訪れる。
- ゴッホ作品のほか、同時代のポール・ゴーギャン、ロートレックらの作品、ゴッホが傾倒していた日本の浮世絵、盛んに模写をしたミレーなども展示されている。
- 同美術館はゴッホ作品の真贋を鑑定するなど、ゴッホに関する世界的権威。
- 日本の損保ジャパンが58億円で購入した「ひまわり」についても、本物であることが同美術館によって認められた。「ひまわり」は世界に7点存在し、うち1点が同美術館に展示されている。
- 民間企業とのパートナー契約(スポンサー契約)に力を入れており、パートナー企業の名前をプレートで示している。
- 同美術館は写真撮影禁止。
視察4社目:ヤンマーヨーロッパ(Yanmar Europe B.V.)
創業 1989年 従業員 130名
(1)同社の概要
- ヤンマーは1912年に日本で創業。世界一の空冷小型ディーゼルエンジンを開発することで業績を伸ばしてきた。
- 非上場でありながら世界中に1万5000人がいる。3年前に100周年を迎える。
- 主な製造品目としては、ディーゼルエンジン・大型(舶用)ディーゼルエンジン・コージェネ・ヒートポンプ・農業機械 を挙げることができる。
- 舶用ディーゼルエンジンでは世界シェア60~65%を握る。ライバルはボルボ。
(2)ヨーロッパ法人の概要
- ヨーロッパ法人はアムステルダムに本拠地を置き1989年に創業。
- 従業員は24カ国から構成されている。公用語は英語とオランダ語である。
- オランダそのものが国際的な国であり、多国籍の社員は珍しいことではない。
- ヤンマーヨーロッパの主要業務は補修パーツ品の供給と、受注したディーゼルエンジンや農業機械等の組立(アッセンブリ)である。
(3)ヨーロッパ法人の業務
- 倉庫6000㎡の面積があり、フィルター・オイル・ベルト等の補修品パートに加え、滋賀県びわ工場から運ばれたディーゼルエンジンが保管されている。
- ヤンマーの製品は200万を超える補修品パーツが存在するが、うち同倉庫では4万2000点を管理している。200~250点の補修部品を毎日出荷している。
- 同社のエンジンは主にボート(セールボート・パワーボート)に搭載される。受注してから組立を行い出荷するが、1人の作業者が全ての工程を受け持つシステムとなっている。
- 作業者の役割分担を明確にしており、どの作業を誰が責任を持つのかが明確になっている。
視察5社目:ロイヤル・アッシャー・ダイヤモンド(ROYAL ASSCHER DIAMOND)
創業 1854年
(1)同社の概要
- 同社は1854年に創業。現在の社長で5代目。南アフリカ・アンゴラ・シオラレオネといったダイヤモンド産地からダイヤモンドを入手、カット・研磨して市場に供給する。
- 1902年に同社がロイヤルアッシャーとしての特別なカットを開発し、名声を博す。
- 同社はBtoBが専門であるが、同社としては初めて、日本の三越銀座に小売店舗を持つ。
(2)ダイヤモンドビジネスの概要
- オランダでは1568年からダイヤモンドの加工が始まる。
- ダイヤモンドの加工技術を持つユダヤ人が迫害から逃れ、アムステルダムで受け入れられたことが、ダイヤモンドが同国の主要産業となった要因である。
- 同社の場合は、ダイヤモンドのカットと研磨を両方てがけているのがポイントである。
(3)同社の考えるファミリービジネス(同族経営)について
- 同社は完全なファミリービジネス(同族経営)を貫いている。
- ファミリービジネスは、オーナーは会社を所有するだけでなく経営を行わなければならない。
- ファミリービジネスにおいて大切なことは原則をもって経営にあたること。同社の原則は、
①優秀な人材の採用
②問題への対処能力
③将来をどの様にデザインするか?
である。②についてはファミリービジネスでありながら、同族以外のボードメンバーを持つ。また③については、経営者は税理士や会計士である前にマーケッターであることが求められる。 - 日本のコンセンサス経営は注目に値する。合意したらやり遂げる日本企業の力はすごい。
- 先代がビジネスに消極的だと、その子供はビジネスを売ってしまうかもしれない。
- 後継者教育を行う上で大切なことは次の3点。
①教育
②経験
③戦略への理解力 - ファミリービジネスが基本のダイヤモンド業界において、失敗する会社には2つのパターンがある。1つ目は新興企業で資金力はあったが、市況の波とともに沈むケース。2つ目は伝統企業であるが、それに甘んじて変化の無い会社。
- BtoBビジネスが基本であった同社が、小売に乗り出すのも同社にとっての新たな変化であると言える。
視察6社目:蘭日貿易連盟(Dujat)による歓迎レセプション
(1)Dujatについて
- オランダと日本をつなぐために1984年に設立される。当初12会員であったが、現在では110会員となっている。
- オランダの企業として、日本の企業から学ぶ取り組みも行っている。特に日本の小売業は進んでおり、オランダの未来が見える。
(2)オランダ企業誘致局 シニアプロジェクトマネージャー Luijendijk氏より
- オランダには450以上の日本企業があり、約7000人の日本人がおり、また約4万人の雇用を生んでいる。
- 日本人向けの医療サービスや日本食レストランなど、日本人向けのサービスが充実しており、オランダは日本企業にとって進出し易い環境にある。
(3)在オランダ 日系企業(タニタ:総務部長 中川氏)からの講演
- タニタでは2007年にヨーロッパ法人をアムステルダムに移転。
- 現在14名のスタッフに加え、イギリス・フランスの在宅スタッフ計20名の組織である。
- 同氏の考えるオランダ進出のメリットとして、
①日本人が暮らし易い
②流通面で優れている
③多国籍のスキルの高い人材が得られる
④税制面での優遇と少ない登記手続き
がある。オランダには200を超える国からの移民がいる。また法人税率が25%と安く、付加価値税の申告なども簡単に行える。
(4)監査法人 デロイト Brands氏による講演
- 監査法人デロイトでは、日本企業サービスグループをアムステルダムに置き、日系企業進出のサポートを行っている。
(5)ASML社による講演
- ASMLは売上60億ユーロ。半導体製造装置の中でも根幹となる、半導体露光装置(ステッパー)の生産を行い、全世界で事業を展開している。
- 1984年に設立されるが、元々はフィリップスからのスピンアウトである。
- 同社の扱う設備は、高額なもので5000万ユーロにもなる。
- 全社員1万1000人のうち、研究開発スタッフが4100名いる。うち600人が博士号取得者。
- 同社の開発の歴史は、ムーアの法則の歴史でもある。ムーアの法則とは、2年間で半導体の集積度は2倍になるがコストは1/2になる、というものである。
- その結果、半導体露光装置は微細化が進む。配線の密度は4~5ナノレベルである。参考までに、人間の髪の毛が1日に伸びる長さが4~5ナノ。
- 同社が成功した要因として、ネットワークを挙げることができる。サプライヤーとの協力関係がキーであり、サプライヤーもR&Dを行っている。
- 自社で全てをこなすのではなく、ネットワークを生かすことで成功することができた。