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アマゾンより強い百貨店

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私の手元に、「アメリカの大企業 代表12社の経営戦略」(中公新書)という本があります。

同書は1988年に出版され、アメリカを代表する12社の経営戦略を論じた書籍です・

 

そしてその中の1社、アメリカの代表的な百貨店であるシアーズ・ローバックが先週、倒産しました。

 

同社は創業100年以上の歴史を持ち、かつてはアメリカの半数の世帯を顧客に持つ、といわれた超優良企業であり、長い間世界一高いビルとして有名な、シカゴのシアーズ・タワーのオーナーでもありました(現在はイギリスの保険会社の所有でウィリス・タワーと呼ばれています)。

 

こうした、超優良企業であったシアーズが倒産した理由は、世界最大の通販業者であるアマゾンの猛攻であったと報道されています。

 

今、アメリカでは“デス・バイ・アマゾン(=アマゾンによる死)”と言われるほど、アマゾンによる既存業界の衰退が、一種の社会問題にもなっています。

 

 

ところが、そうしたアマゾンの猛攻の中、業績を伸ばし続けている百貨店もあります。

 

それは、ノードストローム という百貨店です。多くの小売業がアマゾンにより倒産に追いやられている中、同社はここ3年間一貫して売上を伸ばしています。

 

ノードストロームが業績を伸ばし続けている大きな理由は次の2つです。

 

 

1)必需品を押さえている

ノードストロームの主力商品は「靴」です。靴は消耗品であり、1~2年で買い替えるものです。そして、ノードストロームの全ての店員は、同社オリジナルの足を図る測定機を使いこなすことができ、お客の足にあったベスト・サイズの靴をオーダーメイドでつくります。

 

普通の靴屋では足の裏の長さだけで靴を選定しますが、ノードストロームではオリジナルの測定機により、本当にそのお客にとって最も履き心地の良い靴を提供することができるのです。

 

従ってノードストロームはリピーターが多く、かつ靴のサイズを顧客データベースとして保有していることから、いわゆる顧客データを握っている、という強みがあります。

 

 

2)リアル(=店舗)とデジタル(=ネット)を融合させている

 

例えばノードストロームでは、店舗に来たお客に対して、お客の持つスマートフォンにメッセージを送り、その売り場に無い商品も品揃えした自社の通販サイトに誘導します。

 

あるいは、ノードストロームの通販サイト利用者に対して、リアル店舗の割引クーポン券を送り来店を促す、といった施策を行っています。

 

この様に、リアル店舗とネットを融合させた総合的な販売促進のことを、マルチ・チャネル(あるいはオムニ・チャネル)といいます。

 

 

モバイルが普及してから、顧客の購買行動は180度変わりました。

 

アマゾンが強い、とはいえ、アメリカのEC化率(=ネットで商品を買う人の割合)は10%前後と言われます。

 

つまり、9割もの人は商品をリアル店舗で買っているのです。

 

ただし、従来は 店舗に行って「選んで」「購入」していた人たちの大半が、店舗に行く前に商品をネットで「選んで」「どこで買うか決めて」リアル店舗に訪れて商品を「購入」しているのです。

 

 

すなわち、デジタルに対応できていない店舗、言い換えれば「現在の顧客の購買行動」に対応できていない会社は、顧客から選ばれなくなっているのです。

 

 

これは、生産財業界でも同じことです。

 

 

例えば展示会。

 

 

かつて、展示会はいかに「人通りの良い目立つ場所」に出展するか、あるいはいかに「目立つブースをつくるか」といったことが重要でした。

目立つために動きのあるデモ機をブースに置く、音の出る映像を流す、といった手法が有効とされていました。

 

しかし、今の時代はこうしたことが、ほとんど結果に影響しなくなっています。

 

なぜなら今どき、展示会場に来てから良いサプライヤーを探す様な、そういうヒマなバイヤーはいなくなっているからです。

 

特に大手企業のバイヤーはとても忙しいです。彼らは展示会に行く前に出展社リストをチェックして、関心のある出展社のホームページをチェックして、訪問すべきブースにマーカーで印を入れた上で来場しています。

 

従って今の時代、展示会は展示会が始まった時点で、8割が決まっているのです。

 

 

これが、現在の顧客の購買行動です。

 

 

他にもこんなことがありました。某大手電機メーカーの取締役資材部長が、私の顧問先の紹介で、私に連絡をしてきました。

ある要件を満たすセットメーカーを探しているが、一般的なマッチングサイト等では探すことができず、その要件を満たすセットメーカーを紹介して欲しい、というのです。

 

そこで私が「どの様な方法でご紹介したら良いですか?」と聞くと、その資材部長は「まず、その会社のセットメーカーのホームページのURLをメールしてください」「その会社のホームページを技術陣でチェックして、頼めそうな技術を持つ会社であればあらためてご紹介をお願いしたい」とのことでした。

 

この大手電機メーカーは、名前を聞けば誰もが知っている国内有数の超大手企業ですが、このクラスの会社でも、新たな調達先を探す第1ステップがホームページなのです。

 

 

セットメーカーはその性質上、製作実績や事例の写真を公開することができません。ですからホームページ上に、ほとんど大した情報を掲載していない会社が多いですが、これは自ら商談の機会を放棄する様なものです。

 

製作事例や実績の写真が掲載できないにせよ、他の何らかの方法で自社が持つ技術をしっかりとPRするやり方を考えなければいけません。

 

 

自社が現在の顧客の購買行動の変化にきちんと対応できているのか、あらためて見直す必要があるのではないでしょうか。

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