今、アマゾンのビジネス書ランキングでベストセラーとなっている書籍に、
「市場最大のメガ景気がやってくる 日本の将来を楽観視すべき五つの理由」武者陵司著 KADOKAWA
という本があります。
同書によると日経平均株価は来年にも4万円を超え、さらに東京オリンピック後は日経平均株価10万円も夢ではない、という内容です。著者はその根拠として、
・日本国内、さらに米国の株価は実は割安
・電子部品やFA分野などオンリーワンの日本企業が増え、国際競争力が増している
ことを指摘しています。
かたや、ここ最近出版された本の中で、もう1冊注目すべき書籍があります。それは、
「財政破綻後 危機のシナリオ分析」小林慶一郎編著 日本経済新聞社
という本があります。この本はある種、非常に注目に値する内容です。
なぜなら、”財政破綻”など、この手のテーマで書籍を出版する著者は自称エコノミストの人など、どちらかというとアウトローの感のある著者が多かったわけですが、同書の著者は6名いて、いずれも慶応大学や一橋大学の教授、かつ政府の審議会委員などの経験者、元高級官僚といったいわば当局の内側の人たちです。
なお、同書の旗振り役はキャノングローバル戦略研究所なのですが、同書の中身は衝撃的な内容です。
まず現在、国と地方の債務はすでに1000兆円を超えており、GDPの2倍もの債務と言う、先進国としては異例の状況に日本はあります。さらに毎年約140兆円もの国債を発行しており、国の税収は55兆円程度しかありません。
同書による”財政破綻”とは、国債の新規発行ができない状態を指しています。
そして同書によると、モンテカルロシミュレーションによる日本の財政の破綻確率は、首都直下地震が起きるか否かで短期的には変わります。一橋大学の佐藤教授の試算によると、
・首都直下型地震が起きた場合の2025年における財政破綻確率は 39.2%
・首都直下型地震が起きなかった場合の2025年における財政破綻確率は 8.7%
となっています。
ところが衝撃的なのは、これが2035年という設定になると、
・首都直下型地震が起きても、起きなくても、2035年における財政破綻確率は 100%
だというのです。
また、同佐藤教授によると、我が国の潜在的成長率は少子高齢化などにより1%に届かないと試算されており、内閣府の掲げる成長率2.1%は単なる目標であり、到底達成は困難と言い切っています。
同書によると日本は政府中枢においても、「起きてもいない財政破綻のことに触れるのは縁起が悪い」という考え方があるとのことで、実際に財政破綻が起きてから対策を打ったのでは大変な損害がでてしまう、なので起きる前に起きた時のことを想定しておく必要がある、ということで出版されたのが同書だというのです。
ちなみに、ロシアが1998年に財政破綻(デフォルト)した時には、国内の病院の機能が停止し、人工透析を受けていた患者が透析を受けられなくなり、その大半が亡くなられたと同書に記述があります。
国の財政が破綻した時、最も影響を受けるのは国からのお金に依存する医療機関や介護施設、年金生活者や生活保護受給世帯です。
さらに国債の札割れが発生すると、一定期間をおいて国債発行が再開されるまでの間、長期金利が5~10%へと上昇するそうです。ですから同書では、借り入れをするのであれば必ず固定金利にすることを強くアドバイスされています。
この様に、同じ時期に全く論調の異なる書籍が、いずれも大手出版社から出版されているのは非常に興味深いことです。
ちなみに「市場最大のメガ景気がやってくる・・・」の著者は、国債を日銀が買い支え続ければ済む話であって、財政破綻はあり得ないと主張しています。逆に「財政破綻後 危機のシナリオ分析」の著者陣は、国債を日銀が買い支えるというのは暴論であって、法的にもそれは不可能だと主張しています。
真っ向から主張が異なる両書ですが、ではどちらが正しいのか?
私はある種どちらも正しいのではないかと思います。
確かに電子部品やカメラモジュール、工作機械やロボット、直動ガイドといった日本が国際的に競争力を有している分野の産業は過去例が無いほどのバブル状態です。
ところが吉野家が赤字で、大手飲食チェーンが軒並み減益しているのを見ると、一般市況は厳しい状態です。私は行かないのでわかりませんが、複数の経営者の方が「銀座も新地もガラガラだ」と言っていました。鳴り物入りでオープンしたギンザシックスも、開業当時は人でいっぱいと聞きましたが、現在では平日になると既に閑散としている、と聞いてます。
何が言いたいのかと言うと、これからさらに二極化が加速することは間違いない、ということです。
こういう時代に必要なことは、真の情報だと思います。
新聞に出ているニュースは半年古く、前述の通り、書籍も真っ向から対立する本が多数出ています。
先日、従業員30名くらいの、ある受託型製造業の社長の経営相談を行いました。製造業でこの時期としては珍しく業績が悪く、先期は赤字だったとのこと。売上・従業員もピークの半分しかないそうです。社長は創業社長で、コンサルタントは嫌いなのでコンサルタントに相談したこともなければ、入れたことも無いとのことでした。
船井総合研究所の創業者、船井幸雄は成功している経営者400名を研究した結果、成功している経営者に共通する3つの事実を発見しました。その3つとは、
1)素直
2)プラス発想
3)勉強好き
です。
いかに優秀な経営者、創業社長だったとしても、勉強しようと思ったら、どこかのコンサルタント会社の門を叩かざるを得ないと思います。明らかに厳しい時代を乗り切らなければならない現在、どの様に「勉強」をするのかも、非常に大切なことだと私は思います。
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