今年も4月22日から1週間、グレートカンパニー視察セミナーが開催されます。今回の視察先はドイツです。
ドイツといえば日本と比べて、生産性が極めて高いことで知られています。
例えばドイツの労働時間は日本よりも2割近く少ないですが、国民1人あたりの付加価値は、日本が時間あたり39.4ドルなのに対してドイツは53ドルもあります。
つまり労働時間は2割少ないのに対して、生産性は1.4倍近くも高い、という驚異的な結果がでているのです。
そして私が考えるに、ドイツ生産性が高い理由は次の4点です。
まず1つ目は国を挙げてデザインを重視している、ということです。
今では信じられない話ですが、かつてのドイツ製品は「安かろう悪かろう」で、当時世界No1だったイギリス製品の6割程度の価格でないと商品が売れませんでした。
そこで「ならばデザインで差別化しよう!」と世界で初めての工業デザイン専門学校をつくるなど、国を挙げてデザインに取り組みました。ドイツ製品はデザインが優れている結果、それが付加価値につながっています。
2つ目に日本とは比較にならないほど戦乱の歴史があり、国民も政府や貨幣を日本ほど信用していない、ということです。
では何を信用しているのかというと、自社が生産する「商品」ということです。
仮に貨幣の価値が無くなっても、自社の「商品」に普遍的な価値を持たせることができれば、自身の財産を保全することができます。
そうしたことから、ドイツ企業は日本企業以上にブランドの構築に熱心です。
さらに3つ目のポイントとして、女性の社会進出を挙げることができるでしょう。
日本では3歳未満の子供を持つ女性の就業率は25%に過ぎませんが、ドイツでは65%にも及びます。これはデイケアと言われる高い社会保障制度がその背景にあるのですが、この点も日本と大きく異なるところです。
そして私が最も重要だと思う4つ目のポイントが、宗教性です。
実はドイツは宗教性がビジネスに大きく及んでいます。例えばハノーバー市内には高層ビルがありません。それは同市の法律で、教会よりも高い建物を建てることが禁止されているからです。
またドイツではキリスト教の考え方にのっとり、デパート等の商業施設も日曜日は原則休みです。
さらにドイツはプロテスタントの国であり、プロテスタントの考え方は、職業とは神から与えられた召命を果たすためのものです。
このあたりの考え方は、社会学者のマックス・ウェーバーが、「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」という著書の中で説明しています。
いずれにせよ、ドイツは教会を中心とした、宗教を中心としたコミュニティがしっかりと根付いており、こうしたコミュニティの存在と信仰が、生産性を高めていると私は捉えています。
日本は宗教的コミュニティが全般に希薄ですが、日本人にとって最も重要なコミュニティは一昔前であればムラ(村)であり、現在でいえば会社です。
日本人は残業が好きですが、その理由はこのあたりにあるのではないでしょうか。
ちなみにアメリカはどうでしょうか。現在のアメリカにおいて宗教的コミュニティは希薄になっています。また会社もドライな組織であり、コミュニティとして機能していません。
現在、アメリカでは一般市民の薬物中毒が大きな社会問題になっていますが、こうしたコミュニティが希薄化していることが要因だと私は捉えています。
話を日本に戻しますが、こうして比較してみると日本人にとっては会社がコミュニティです。
実際、日本においても高生産性の会社、あるいは好業績の会社というのは、ある意味宗教的であり、言い換えればコミュニティが機能している、ということなのです。
「日本は会社がコミュニティ」、この視点を持ちつつ、ドイツ企業から日本企業が取り入れるべき点を学んできたいと思っています。
以上
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