<第9回目:>製造業バブルの影で、疲弊する若手社員
つい先日、某大手機械要素メーカーの若手営業マン(26歳)と話をする機会がありました。
彼は新卒で、その某大手機械要素メーカーに入ったのだそうですが、転職を決意していて、紹介会社経由で5社もの面接を受けているとのこと。
私が「何で辞めたいの?」
と聞くと、
彼は「所詮、価格競争で決まる仕事だから、僕が営業として間に入る付加価値が無いんです」とのこと。
ちなみに、彼が勤務する某大手機械要素メーカーは、生産財業界の人なら誰もが名前を知っている一部上場のメーカーです。
彼の勤務する会社は業績も安定しており、彼の職場でも辞める人というのはほとんどいないそうです。
「僕が辞める、といったら職場の上司はさぞ驚くと思います・・・」
と彼は言っていましたが、営業の仕事とは価格競争の回避です。
いかに成熟分野といえども、必ず問題解決提案は可能であり、価格競争だけで決まる、ということはあり得ません。
営業力が低いから価格競争に陥るのです。
生産財営業の鉄則は信用・信頼です。「この人なら信用できる」は当たり前で、さらに「この人なら頼れる」と思ってもらってはじめて価格競争が回避できるのです。
最大の問題は、彼の様な若手社員に対して、生産財営業の鉄則を教育する様な上司がいない、ということでしょう。
この様に、製造業バブルに沸く業界の中で、ひっそりと会社を去る若手社員が後をたちません。
私は10年ほど前に、「必ず売れる!生産財営業の法則100」という本を同文館出版から出版しました。現在でもこの本はコンスタントに売れている様です。
この本の中で何度もお伝えしている生産財営業の鉄則は、前述の信用・信頼の話に加えて、「こちらから売り込まない」ということです。
売り込むのではなく、相手にとってメリットのある提案を重ね、その中で本当の顧客のニーズを引き出し、そのニーズに対して問題解決提案を行う、ということです。
当時は現在ほどインターネットのノウハウがなく、営業担当者がいかにヒアリングスキルを駆使して、顧客の潜在ニーズを顕在化させるか、といったことを同書でお伝えしていました。
しかし現在は、簡単に顧客ニーズを集める方法があります。
それがデジタル・マーケティングです。
このデジタル・マーケティングについては下記セミナーにお越しいただければ全てがわかります。
https://www.funaisoken.co.jp/seminar/027574.html
既存顧客であれ、新規顧客であれ、営業担当者だけに顧客ニーズ収集を任せるのではなく、デジタルの力を活用するのです。
その上で、顧客からの引合いが有望なHOT商談のレベルになりそうな時点で、営業担当者にそのHOT商談を引き渡す仕組みをつくるのです。
生産財業界ほど、営業のデジタル化の相性の合う業界はありません。
なぜなら情報の認知から意思決定までに時間がかかり、引き合いから商談に至るまでの“熟成”にリードタイムを要するからです。
なぜ生産財業界は、客先の情報の認知から購買の意思決定までに時間を要するのでしょうか?
それでは生産財業界は「タイミング」が合わない限り、購買に至らないからです。
「タイミング」とは・・・
・新商品開発のタイミング
・モデルチェンジのタイミング
・人事異動でキーマンが入れ替わるタイミング
・既存業者が何らかの失敗をするタイミング
逆に言えば、いかに素晴らしい製品であったとしても、あるいはいかに安い見積りであったとしても、タイミングが合わなければ生産財は絶対に売れません。
ところが多くの生産財メーカーは、前述の一部上場クラスの大手機械要素メーカーですら、次の全営業プロセスを営業担当者に丸投げしているのが現状です。
STEP1:顧客への情報発信
↓
STEP2:顧客の認知
↓
STEP3:顧客のさらなる情報収集
↓
STEP4:購買への醸成
↓
STEP5:購買の意思決定
営業のデジタル化は、上記STEP1~STEP4をマーケティングオートメーションなどのデジタル技術で自動化し、営業担当者はSTEP5のみを注力する仕組みをつくるものです。
何より、生産財業界で営業のデジタル化を行うと、今まで見えなかった顧客ニーズが見える様になり、成熟商品だと思っていた自社商品に、まだまだ市場のニーズがある、ということを実感することができます。
その結果、組織が活性化します。
そうすると、冒頭に述べた若手営業マンの様な、安易な転職は考えなくなるのではないかと私は思います。
なぜなら自分の仕事の趣旨が理解でき、仕事がおもしろくなるからです。
私は人財育成の上でも、営業のデジタル化は極めて有効であると考えています。
~次回に続く~
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