<第8回目:人を1人も増やさずに劇的に生産性を上げる方法>
従業員を1名も増やすことなく、劇的に生産性を上げる方法が、今あらためて注目を集めています。
それは「インサイドセールス」の導入です。
あらゆる組織の中で、最も非効率な組織は間違いなく営業部門です。
なぜ営業部門は非効率なのか。それは、営業マンは自分が行きやすい顧客にしか訪問しないからです。本来、営業訪問は顧客ランク分けに基づいて行わなければなりません。
顧客ランク分けは一般に、
a)縦軸に自社からその顧客への売上高
b)横軸にその顧客の購買力
をとって行います。
例えば機械工具ルートセールスの場合でいえば、上記a)は月次売上100万円以上、と規定すればよいでしょう。
ところが問題は、横軸の上記b)です。
その会社の購買力は、営業マンの見る目・能力によって大きく変わります。例えば現状、A社という顧客があったとします。
A社は毎月十数万円しか購入していません。しかしA社は上場会社クラスの中堅企業です。
このA社を見た時、経験豊かな前向きな営業マンであれば「あれも売れるし、これも売れそうだ、この会社はポテンシャルが高い!」となります。
しかし経験が乏しい営業マン、あるいは経験があってもネガティブな営業マンだと「この会社はこれ以上攻めても売上は上がらないよ・・・」「アポも取りにくいし、行かなくていいよ・・・」
と、なってしまうわけです。
寓話で、裸足のアフリカ人に靴を売れるか売れないか、という話があります。ポジティブな人は「これはチャンスだ!靴を履いていないのだから靴を売り放題だ!」となります。
ところがネガティブな人は「みんな裸足だから靴なんて売れるわけないよ」となるわけです。
残念ながら、世の中の大半の人はネガティブです。
以前に日本電産の永守会長が言われていましたが、
(1)自分自身で自分に火をつけて燃えられる人
(2)人に火をつけられれば燃えられる人
(3)火をつけられても燃えない人
の3種類の人がいるといいます。
(1)の人が5%から多くて20%くらい、(2)の人が大半で60%くらい、(3)の人もやはり5%から20%くらいいる、といいます。
いわば現在の営業部門は、トップセールスと言われる(1)の人に多くを依存しているわけであり、(2)をもっと有効に活かせる仕組みをつくった上で、人手不足の昨今は(3)もうまく活用していく必要があります。
その仕組みが「インサイドセールス」なのです。
では、「インサイドセールス」とは何か?
例えばここに、7名の営業マンがいたとします。
7名でフォローできる範囲は、1ヶ月の営業の稼働を最大18日として、1日3件訪問が可能であれば、この7名でカバーできる顧客数は毎月 7名×18日/月 ×3社=378件 となります。
ここで、毎年2割近く業績を伸ばしている某社は、この7名の営業マンのうち2名をインサイドセールスにして、5名を営業マンとしました。
インサイドセールスは、主に電話はメール、DMなどの送付を行い、顧客との接点を維持します。
この某社ではお客様のランクを次の様に分けています。
1)毎週営業マンが訪問すべき重点顧客
2)毎月営業マンが訪問すれば良い訪問顧客
3)営業マンは訪問せずインサイドセールスがフォローする維持顧客
4)人的フォローをしないメルマガ・DM送付のみの放置顧客
その結果、カバーできる顧客数は、
<営業担当>
5名×18日/月 ×3社=270件
インサイドセールスは訪問しませんから、1日あたり30件くらいのフォローが可能になります。ですから、
<インサイドセールス>
2名×18日/月 ×30社=1080件
つまり、この某社はインサイドセールス制をしくことにより、毎月378件しかフォローできなかった顧客フォローが、
270件+1080件=1350件
と、4倍近くもの顧客フォローを行うことができる様になったのです。
もう一度繰り返しますが、この某社ではお客様のランクを次の様に分けています。
1)毎週営業マンが訪問すべき重点顧客
2)毎月営業マンが訪問すれば良い訪問顧客
3)営業マンは訪問せずインサイドセールスがフォローする維持顧客
4)人的フォローをしないメルマガ・DM送付のみの放置顧客
そしてポイントは、上記3)のインサイドセールスがフォローしている顧客も、購買意思がでてきて営業担当者のフォローが必要な段階になれば、上記2)あるいは1)にランクアップする、ということです。
ちなみに、この「インサイドセールス」という制度は、国土の広いアメリカでは、ずっと昔から当然の様に導入されています。
なぜならあまりに国土がひろすぎ、とても営業マンだけで全米をカバーできないからです。
ですからインサイドセールスと営業担当者とを分業して、効率よく営業を行わざるを得ない、という事情があったのです。
日本の場合は国土が狭く、かつ不況だなんだといいながらも、結果的に右肩上がりの成長を遂げていたため、営業は営業担当者の聖域として、ある種放置されてきたといえます。
しかしリーマン・ショックによる需要蒸発、グローバル化・デジタル化による産業構造の変革、さらに昨今の人手不足・働き方改革という荒波をうけて、いよいよ最後の聖域も変革を迫られている様に私は見えます。
しかし一部の先進的な企業は前述の「インサイドセールス」をいち早く取入れ、社員を1名も増やすことなく生産性アップに成功しているのです。
前述の某社も、毎年115~120%の成長を遂げ、従業員数十人の中小製造業ながら、全国に3000社近い顧客を抱えています。
また昨今、この「インサイドセールス」が注目を集めているのにはもう1つ理由があります。
その理由とは、この「インサイドセールス」は今まで述べてきた「営業のデジタル化」と、極めて親和性が高いのです。
~次回に続く~
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