<第2回目:営業を営業に任せると失敗する>
人へのマネジメントは「性善説」であたるのが基本です。
自ら望んで会社の足を引っ張ろう、他人の足を引っ張ろうと思っている人はいません。
しかし人間は誘惑に弱いことも事実です。京セラ創業者の稲森先生も言われていますが、いかに真面目な人間だったとしても、目の前に現金をおかれて、その様子を誰も見ていないとなると、真面目なはずのその人も、行動が変わるかもしれません。
つまりその人が、おかしな行動を取ろうという気持ちにさせないことも経営の大切な要素である、と。
同じことが営業部門にもいえます。
ここ10数年のITの飛躍的な進化によって、あるいはIoTやクラウド化の流れにのって、会社のサプライチェーンの多くの部門がデジタル化を行い、生産性を上げ、その結果人員も減らすことができ、残業時間も大幅に削減できています。
資材部門はEDIや集中購買によって、生産部門はERPや統合生産管理システムによって、それを実現しています。
その例外が営業部門です。
デジタル化とは、「属人性」の排除であると同時に「生産性の向上」です。もちろん属人性を100%排除することはできません。
ただし属人性がほぼ100%なのか、あるいは30%程度なのかによって、その組織の新人が育つスピードや生産性は大きく変わります。
「属人性」が高ければ高いほど、新人や若手は育ちません。
一般消費者向け営業においては、ここ10年くらいで多くの会社において「営業のデジタル化」が進みました。
例えば今日日、飛び込みで自動車を販売するセールスなど、お目にかかりません。
その代わり、彼らは「KPI(=重要業績評価指標)」を設定して、属人ではなく、ひたすらKPIの数値を目標値に近づけることに注力しています。
例えば自動車のセールスの場合は「試乗人数」が、車を売る上での最重要KPIになります。車に試乗した人のうち、約3割の人が購買行動に至ると言われています。
で、あれば、無計画な飛び込みセールスをするのではなく、いかに試乗会に人を集めるか、その上で試乗していただくか、を考えた方がより工数は省けます。つまり生産性が上がります。
また住宅販売の場合は、住宅展示場への「来場人数」と「着座率」さらに「着座時間」の3つが最重要KPIになります。
つまり住宅展示場の商談コーナーに座ってもらった上で(=着座)、30分以上話を聞いてくれた人は、その人への「訪問率」が急に高まることがわかっており、従って家を売るのであれば、
・いかに住宅展示場に人を集めるか
・その人たちをいかに着座させるか
・その上でいかに30分以上話を聞いてもらうか
に注力すれば良いことがわかります。
逆に、今の時代、自動車業界や住宅業界で「営業は情熱だ!」「とにかくお客のところ回れ!」「いちど喰いついたら離れるな!」といった、いわゆる一昔前の“熱い営業”は、ほぼ絶滅している、といってよいでしょう。逆に、成熟化が進んだこの業界でいまだに一昔前の時代錯誤な営業活動をしている会社は、ここ数年でほぼ淘汰されました。
つまり科学的管理手法を取り入れることで、一般消費物向け営業の世界では生産性を上げることができ、若手も戦力化しているのです。
「科学」とは「再現性」です。つまり営業の科学的管理手法とは属人ではなく再現性の高い管理手法であり、言い換えれば「営業のデジタル化」ということです。
ところが、未だに前近代的な、属人的な営業スタイルに依存する最後の業界があります。
それが生産財業界です。
法人営業の中でも生産財は、工場マーケットといった専門性の高い業界を相手にしていること、また多くの場合において購買頻度が低いことから、営業スタイルが属人的になりがちです。
例えばある作業工具メーカーA社(従業員200名)の場合。
A社には業界経験30年超の常務がいます。
常務は業界の顔であり、A社の社長よりも常務の方が業界に影響力があります。本当にそうかどうかわかりませんが、少なくとも常務もA社の社員も、みんなそう思っています。
A社の常務ではなく、常務のA社であると。
ところがA社ではここ数年、売上の柱になる様な新商品が開発できていません。また新たな売上の柱になる様な新規顧客も開拓できていません。
またA社には営業部門の事実上のNo2がいません。強いて挙げればいなくはないのですが、その人は常務の一時的な代行はできるものの、とても常務に代わって営業部門の采配を取るほどの人徳はなさそうです。
その結果、A社の営業部門は中々人が育ちません。もっというと「将来有望だな」と思われる若手社員ほど離職してしまいます。
どうも話を聞いていると、営業部門の中できちんと教育をされることもなく、目先の忙しさに流されて仕事が嫌になってしまった様です。
それでも常務が健康なうちは業績も好調で良かったのです。
ところが最近、高齢になってきた常務はもの忘れも目立つ様になり、以前よりもよく怒る様になりました。ご本人はそんなそぶりを見せませんが、どうもかつてより気力・体力ともに衰えている様にみえます。常務の最近の口癖は「我が社には人材がいない」であり、A社の売上もここのところ実質横ばいをたどっています。
この様に、特定個人に営業リソースの大半が集中している会社は、早めに手を打たないと大変なことになります。
A社のケースは、この常務が引退した時点で、あるいは社長とトラブルをおこして会社を去った瞬間に、A社はじりじりと衰退の方向に向かいます。その時に立て直しを始めるのは、並大抵のことではできません。
また某中堅機械部品メーカーB社の場合、ベテラン営業マンは週のうち3日以上は同じ顧客に訪問しています。その顧客は大口顧客で、このベテラン営業マンは「お守りをするのは大変です」と言いながらも、嬉々として同じ顧客に訪問を重ねています。
そしてB社の若手営業マンは全くズレたターゲットに対して、訪問を重ねています。会社の営業方針として「直ユーザー」あるいは「有力販売店」への営業を強化することになっているにも関わらず、この若手営業マンは行っても確実に数字にならない二次卸に一生懸命訪問していました。それで価格競争に巻き込まれ「ウチの製品は価格競争力がありません」と発言していました。
ベテラン営業マンが「おいしいお客」を独占し、若手営業マンがピントのずれた営業活動を行う、そして誰も教育しない、生産財業界の営業部門で、いまだに良くみられる光景です。ちなみに、前述のB社の若手営業マンはその後、同社を辞めました。
「一般消費者向け営業」と「法人向け営業」を比較すると、後者はるかにプロセスが複雑であり、またパラメーターも多いためKPIによる可視化困難です。
また「法人向け営業」の中でも「生産財営業」はさらに属人性の高いビジネスです。また属人性が高いことは、その分野に高いスキルを有する当人からすれば、非常に居心地の良い、気分の良い、そしてまた楽な話です。営業を営業に任せると、どんどん属人化していくことはある種明らかな帰結です。
従って営業を営業に任せ続けると、知らず知らずのうちに経営上のリスクが高まるのです。誰も、悪気が無い、にも関わらずです。
~次回に続く~
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