本日から1週間、毎年恒例のグレートカンパニー視察セミナー、今回はアメリカ東海岸のニューヨーク・コネチカット・ボストンで14社以上のグレートカンパニーを視察してきます。
今回のアメリカ視察で1つのポイントとなるのが、「アマゾンに勝てるビジネスモデルを探る」ということがあります。
今、アメリカでは“アマゾン・エフェクト”とも呼ばれる現象がおきています。
これはアマゾン・ドット・コムの攻勢により、業績や株価の低迷、あるいは倒産といった企業が増えていることを指しています。
例えば日本でも有名なトイザらスの米国法人は、数週間前に倒産に追いやられました。また百貨店をヒットに、食品スーパーや家電量販店、ドラッグストア、スポート用品店に至るまで、広く影響がでています。
ところが、そうした中でも業績を伸ばし続ける企業もあります。
例えばアメリカの老舗百貨店、ノードストロームもその1社です。
ノードストロームは、アメリカ視察の際には必ず訪れますが、同社は同業百貨店が業績不振に苦しむ中、過去3期連続して業績を伸ばしています。
同社の経営には3つのポイントがあります。
第1に固定客をつかんでいること。
ノードストロームが得意とする商品分野は靴です。そしてノードストロームの社員全員が、お客様の足のサイズを測る特製の測定器を使うことができる様、教育されています。
普通の百貨店では靴は足の裏の長さだけでサイズが決められます。ところがノードストロームの場合は、長さだけでなく幅、高さなども考慮して、その人の足に最もフィットした靴が提供されます。
ですから、一度ノードストロームで靴を買うと、他の店では靴を買おうとしなくなります。さらに靴は消耗品です。半年~1年もすればお客は新たな靴を買い求めます。
その結果、お客が固定客となりやすいのです。
第2にデジタル化の波に乗っていること。
百貨店の売上でお気に入りの商品を見つけ、ネット販売の商品と価格を比較し、購入はネット販売で行うという購買行動のことを「ショールーミング」といいます。
逆に、ネット販売でだいたいの商品の目安をつけた上で、実際には店舗に出向き手に取って商品選定を行う購買行動のことを「ウェブルーミング」といいます。
ノードストロームは、この「ショールーミング」にも「ウェブルーミング」にも対応した販売戦略を持っています。これを「オムニチャネル」といいます。
例えばノードストロームのカバン売り場に行ったとします。そうすると、そのお客が持つスマートフォンに「他にもこんな商品があります!」と、自社のオンラインストアに誘導するSNSメッセージが届きます。そのお客がオンラインストアにアクセスすると、そこはノードストロームが運営するネット販売です。
つまり「ショールーミング」に対応した戦略です。
逆に自社のオンラインサイトに訪れるお客に対しては、リアル店舗で開催されるイベント情報の提供や、クーポン券を提供するなどして来店を促します。「ウェブルーミング」に対応した戦略です。
第3に従業員のロイヤリティが高いこと。
ノードストロームは毎年、GPTW(グレート・プレース・トゥ・ワーク:米国のNPO機関)が主催する「働き甲斐のある会社ランキング」に毎年エントリーし、高い順位をつけています。
同社では社員のモチベーションを高めるために様々な工夫をしています。例えばサービス面で功績のあった社員を称える掲示板を、全てのお客が目にできる場所に設置しています。
また本部のスタッフ社員よりも、売り場のサービス・販売社員を評価する、現場重視の社風でも知られています。
かつ同社は米国では珍しいオーナー企業であり、従業員は家族である、という大家族主義の会社でもあります。
また、アメリカには近年注目されている業態であるオンラインSPAと呼ばれる業態が誕生し、業績を伸ばしています。
例えば、今回の視察でも訪れるWarby Parker(ワービー・パーカー)は、メガネのオンラインSPAです。
オンラインSPAの店舗にはレジがありません。お客は商品の選定、試着のみを行い、実際の購入はネット上で行います。
その結果、実店舗には商品在庫がありませんから、より効率的な運営を行うことができます。
こうした業態をDirect to Consumer (D2C)といいます。D2Cの目的は、工場から消費者までを、よりシンプルなサプライチェーンで結ぶことにあります。
同様に、アパレルの分野でオンラインSPAとして注目を集めている会社がEverlane(エバーレーン)です。
同社はさらに一歩進み、何とネット上で自社の原価をオープンにした上で、同等商品の他社との比較を行っています。
徹底的な透明性を理念に掲げる同社は、同じ商品の他社との価格差は1/2~1/3にもなります。
従来のアパレルは、売れ残ることを前提に価格設定を行い、残りをセールで売りさばくというビジネスモデルでした。同社のビジネスモデルは、こうした従来業態に対してのアンチテーゼでもあります。
今の時代、様々な分野で日本がアメリカを抜き、今や世界で最も生活のしやすい国は日本であることは間違いありません。
ただし、ビジネスにおけるイノベーションではどうでしょうか。
新たなビジネスは常にアメリカから生まれています。少なくともビジネスモデルにおいては、日本もアメリカから見習う点は多々あります。この点において、アメリカからのタイムマシーン経営(=アメリカは日本の15年先をいっており、そこを見習うことで未来を先どりできる)は現在でも成立する、と考えてよいのではないでしょうか。
今回のアメリカ東海岸グレートカンパニー視察セミナーの様子は、下記フェイスブックにてリアルタイムでご覧いただくことができます。
↓↓↓片山和也 フェイスブック
https://m.facebook.com/kazuya.katayama.963
ぜひアメリカのイノベーションとビジネスモデルの最新情報を、ご覧いただければと思います。
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