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「眼をもつ機械」が産業構造を変える

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先日の日経新聞のコラムの中で、東京大学特任准教授の松尾豊氏が非常に興味深い持論を展開されていました。

地球上の生物の大半は、46億年という長い歴史の中で、わずか5億4200万年から5億3000年までの極めて短い間(カンブリア紀)に出そろったそうです。

その原因については諸説あるそうですが、古生物学者のアドンリュー・パーカー氏の説は、眼の誕生が原因とする「光スイッチ説」だそうです。

それまでの生物には高度な眼がなく、ぶつかると食べる、ぶつかられると逃げるという緩慢な動作をするしかなかったそうです。

ところが眼ができると捕食の確率が大きく上がる一方、逃げる側も見つかったら早く逃げる、見つからない様に隠れる、擬態するなど様々な戦略が生まれました。

つまり眼の誕生により生物の生存戦略が多様化し、多くの種類に分かれていったというのです。これを「カンブリア爆発」といいます。

松尾准教授は、人工知能(AI)のディープランニング(深層学習)という技術により、ここ数年、画像認識の精度が急激に上がったといいます。

そしてこれは換言すればコンピュータに眼ができた、ということであり、今後、機械やロボットの世界でも「カンブリア爆発」が起きる、というのです。

 

眼のもたらす情報量は圧倒的です。

眼を持つ機械・ロボットは今後、新たなカテゴリーの産業として社会の中で使われ、既に機械化されたタスク(業務量)の少なくとも数倍以上が自動化・機械化されるとみられています。

そしてその市場規模は今の機械・ロボット市場の比ではないほどに巨大になると同准教授は語っています。

松尾准教授によると、眼をもつ機械・ロボットの市場として下記のものを挙げられています。

 

・介護施設や病院などでの見守り・介護

・医療(X線、CT、手術など)

・警備、防犯

・顔による認証・ログイン・広告、表情読み取り

・入国管理、警察業務、輸出入管理業務

・防災系(河川、火山、土砂崩れの見張り)

・重機系(掘削、楊重)、建設現場系(溶接、運搬など)

・農業系(収穫、選果、防除、摘花、摘果)

・自動操縦系(ドローン、小型運搬車、農機、建機)

・自動運転系、物流

・産業用ロボット系(組立加工など)

・調理系(外食全般)

・片付けロボット(家庭、オフィス、商業施設)

・新薬発見や新素材の開発

・廃炉系(深海や鉱山、宇宙も含めた極限環境)

 

実際、機械の眼の「頭脳」にあたる、高速画像処理のGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)大手の米エヌビディアは、現在最も注目されている企業の1つです。

かつてパソコンの時代はCPUの世界でインテルが世界の主導権を取りました。その後のスマホの時代はクアルコム。

そしてAIの時代はエヌビディアです。

同社は自動運転関連では完成車メーカーなど255社とパートナー契約を結んでいます。AIやロボットでもほとんどの企業や研究機関が同社のGPUを使用するという、ほぼ独占状態が続いています。

エヌビディアは急成長を続けており、この5~7月期の決算では前年同期比で2.5倍もの純利益を出しています。

ちなみに松尾准教授は、「AIの産業では、再投資の仕組みを最初につくったプレイヤーが瞬時に参入障壁を築き、独占的なポジションを得やすい」と言っています。

医療画像を扱う医療機器や、産業用ロボットの世界では既にこうした動きが始まっている、と指摘していますが、GPUの世界であっというまに独占的な企業となったエヌビディアなども、同様の事例であると思います。

また眼を持つ機械は「眼」の部分と「機械」の部分が必要です。

「眼」の部分で視神経にあたるGPUは米国の独壇場かもしれませんが、「機械」にあたる部分は日本の“ものづくり”の技術的資産が極めて有効であり、眼を持つ機械は特に日本に向いていると松尾准教授は指摘しています。

ただし前述の通り、AIの時代になると瞬時に「勝ち組」が決まる時代でもあるといえます。中小企業経営のポイントは、自ら「勝ち組」となるためには、まず「勝ち組」との取引をスタートすることであり、そうした意味でますますマーケティングの重要性が高まると私は考えています。

ぜひ皆様におかれましても、新たな市場への「眼」ともなる、自社のマーケティング機能を強化していただきたいと思います。

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