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ピンチをチャンスに、高収益企業に

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現在、スマートフォンの普及に伴うIoTなど関連サービスの普及、自動車のIT化・AI化に伴うセンサーや電子部品需要の増加の結果、「微細加工」のニーズが世の中全体で高まっています。

「微細加工」というのは、例えば直径0.1mm未満のドリルなどで穴あけ加工や、エンドミルといわれる工具で形状加工を行う技術です。

ちなみに、髪の毛の直径が0.4mmであり、人の肉眼で形状の確認ができる限界が0.3mmまでと言われていますから、この直径0.1mm未満というのがいかに微細な数値であるかがよくわかります。

そして微細加工で多用される小径エンドミルの専門メーカーに日進工具株式会社というメーカーがあります。

同業の業界最大手メーカーが、ここ3年間で売上を105%伸ばしているのに対して、日進工具はこの3年間で売上を120%伸ばしています。営業利益率も22.8%と非常に高い水準で、これも業界最大手を大きく上回っています。

同社のつくる世界最小径のドリル・エンドミルは、なんと直径0.01mmです。

ドイツの展示会に展示したところ、ドイツのエンジニアから「数値を一桁間違えているぞ」と指摘され、いや本当に0.01mmだ、と顕微鏡で実物を見せたところ、相手は腰を抜かして驚いた、という逸話があるくらいです。

そうした日進工具の微細工具へのチャレンジは、必ずしも順風満帆のうちに進められたものではありませんでした。

バブル崩壊後の大不況で売上が減少したところに加えて、当時最新鋭だった藤沢工場が火災で全焼してしまいました。その結果、同社は債務超過状態に陥ります。

こうしたピンチの中、同社はライバルが手がけようとしない小径の切削工具に活路を見出し、ニッチトップを目指してこの分野に注力することを決意します。

普通は大きなサイズの切削工具ほど儲かります。

逆に手間がかかり技術的にも困難な小径工具の分野は、まさに儲からない分野です。しかし大手と同じ分野で競っていても価格競争に陥り、負けてしまいます。

そこで同社は微細な切削工具を製造るための工具研削盤を自ら内製するなど、「儲からない」と言われた小径工具の世界で高収益化を目指して努力し続けました。

その後、同社は「微細加工」需要の波にのって発展し、もともと下町の町工場にすぎなかった同社は、現在は東証二部に上場する優良企業となっています。

現在は注目を集めるニッチトップ高収益企業が、実はそうなるきかっけは工場の全焼と債務超過でした。

まさにピンチはチャンス、といえる事例だと思います。

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