2017年7月21日(金)、船井総合研究所 東京本社(丸の内)にて、先端加工技術マッチングフェアを開催しました。
今回はファクトリービジネス研究会 部品加工業経営部会 微細加工分科会メンバー企業様に加え、
・入曽精密様
・最上インクス様
・スワニー様
・東成エレクトロビーム様
※五十音順
など、全国的にも知名度の高い ものづくり大賞企業様など、独自技術を有する日本を代表する部品加工サプライヤーが東京丸の内に集いました。本マッチングフェアの特徴は、来場されるキーマンの方が、いわゆる「資材」「購買」部門の方ではなく、「研究開発」部門のキーマンである、ということです。
微細加工分科会メンバー企業を中心とした28社の出展に対して、大手完成車メーカー、大手化学メーカー、大手電機メーカー、半導体製造装置メーカーの研究開発部門のキーマンの方が78名ご来場され、具体的な商談を行われました。
特殊加工の分野ではトップクラスの技術を有することで知られる某部品加工業の社長からは、「過去出展したどの展示会よりも、かなり難易度の高い宿題を何件ももらった」と、ご満足そうなご様子でした。
また今回は経済産業省の方も視察に来られ、会場内はかなり盛況となりました。
↓↓↓先端加工技術マッチングフェアの様子
https://factory-business.com/blog/1653/
この商談会の中でも話題になったのは、半導体業界の活況です。特に精密加工産業が集積する長野エリアでは、2023年まで仕事が続く、と言われている会社もあるらしく、複数の経営者の方が口を揃えて「バブルだ」と言われていました。
半導体バブルです。
ただし、長野エリアでも半導体バブルと関係のない業種については、場合によってはリーマン・ショックの時と変わらないほど仕事が無い業種もある、と言われていました。
実際、私の実感としても、忙しいのは次世代自動車がらみとIoT・半導体がらみだけです。
最近、講談社現代新書「新説・企業論 ビジネススクールが教えない経営学」(中野剛志 著)を読みましたが、興味深いことが書かれていました。
日本は失われた20年、と言われていますが、実はアメリカは40年にわたって停滞し続けている、と。アメリカもGDPは増え続けているものの、この40年間勤労者の平均所得は横ばいだといます。
さらにアメリカの開業率はこの30年間で半減、シリコンバレーが成功しているのも根本的に強力な軍事産業のおかげだと。
ちなみに日本の場合はこの20年間、GDPが横ばいであることに加え、勤労者の平均所得に至っては年間60万円近くも下がっています。
根本的に総じて世界は景気が良いわけではなく、いわゆる二極化が著しく進展している、というのが実際のところではないでしょうか。
ちなみに、現在の成長産業として代表的なものに次の4業種を挙げることができます。
(1)半導体
(2)ディスプレイ(液晶・有機EL)
(3)電子部品
(4)センサー
このうち、現在バブルの半導体は、全世界にまたがる超グローバル産業であり、超巨大なコモディティ産業でもあります。
従って規模の経済が幅をきかせ、韓国のサムソンや台湾のTSMCなど、設備投資力のあるところが主導権を取る構造となっています。
部品加工業の仕事の中身としてもアルミの仕事が多く、どちらかというと大きな仕事が出回っており、価格勝負になりがちな仕事が傾向として多いといえます。
ディスプレイも業界構造としては半導体に似ていますが、有機ELは生産設備をつくれるのがキャノントッキなど、現在のところは限られたメーカーしかないので、一部企業は非常に活況です。
また液晶も車載用は信頼性が求められるため、同分野の生産設備や検査設備は国内メーカーに回帰しています。この分野は比較的付加価値が高いといえます。
この2つの産業に対して(3)電子部品 産業は、現在でも日本が世界的に主導権を取れている分野です。実際、アイフォンで使用されている部品の6割は日本製と言われており、ここの部分が電子部品です。
半導体・ディスプレイ産業が超グローバルな巨大企業がプレーヤーなのに対して、電子部品産業は大手企業が中心とはいえ、村田製作所やローム、太陽誘電、TDKなど、超グローバル企業というよりも優良中堅大手企業、といった雰囲気です。
またこうした電子部品産業から出てくる仕事は主に社内設備の仕事であるため、微細加工の仕事など総じて付加価値の高い仕事が多いといえます。
これがさらに (4)センサー となると、プレーヤーも中小企業が多く、よりプレーヤーの裾野が広い産業であるといえます。
(1)半導体 や(2)ディスプレイ がレディメイドな生産設備による設備産業なのに対し、(3)電子部品 や (4)センサー はメーカーごとのオーダーメードな生産設備による、多品種少量生産的な産業であるといえます。
かつて1990年代末にもITバブルがありました。この時は光ケーブルがブームで、光ケーブルを中継する部品であるフェルールという部品の仕事がバブルでした。
当時はフェルールの生産量が絶対的に足りない、ということで多くの会社が莫大な設備投資を行ってフェルール事業に参入しましたが、2000年になるとITバブルが崩壊し、このフェルールの仕事も文字通り“蒸発”しました。
グローバルな巨大産業は儲かっている時は儲けが大きい反面、ひとたびバブルが崩壊すると致命的な影響を受けることがあります。
1つ確実に言えることは「特定業界依存」「特定顧客依存」は、どこかの段階で自社に致命的なダメージを与え、かつそこから抜け出すのには大変な労力を要します。
一言でIoTといっても、前述の通り改めてセグメントをしてみると(1)半導体 (2)ディスプレイ (3)電子部品 (4)センサー と大きく4つにセグメントをすることができます。
あらためて自社のマーケットのセグメントを行い、特定業界に依存しない企業体質をつくると同時に、どの分野を重点分野とするべきなのか戦略と戦術(=具体的な作戦)を持つことが、今の時代を乗り切るために必要なことだと思います。
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