今年2月に出版された「財政破産からAI産業革命へ(PHP研究所:吉田繁治 著)」を読みました。
同書によると現在の日本経済最大のリスクは1300兆円にも及ぶ日本の政府部門負債であるといいます。これはGDPの約2.5倍であり、先進国を含むあらゆる国と比較しても突出した異常な数値です。
ところがかつて、現在の日本同様にGDPの2.5倍もの負債を抱えていた国がありました。
第二次世界大戦後の英国です。
英国はこの膨大な負債を国家破産せずに減らすため「金融抑圧政策」といわれる政策をとりました。
これは金利を0.5%以下の低金利に押さえる一方、インフレ目標を3~4%と政策金利よりはるかに高い数値に設定する、というものです。インフレになれば国の借金は事実上減っていきます。
逆にGDPの2.5倍もの負債(国債)があると、金利2%で財政危機に、金利3%で国家破産するといわれています。
なぜ国家破産するのかというと、国債の金利の支払いが国債の発行だけで賄えなくなり、政府部門からの支払いができなくなるからです。
ちなみに英国の場合、この「金融抑圧政策」が功を奏し、現在の英国の国債残はGDPの0.8倍と、米国・フランス並みの水準まで下がっています。
ところが「金融抑圧政策」は国民生活の貧困という副作用を生み出します。英国の場合は「英国病」と呼ばれた経済の衰退を招きました。
戦前までは米国経済なみに大きかった英国経済は、現在では戦前の1/8までに落ち込んでいます。
そして同書によると、日本は、
早ければ2018年から19年に、遅くとも2020年から21年に70%の確率で財政破産する。
ただし30%の確率で財政破産しない。
その場合、日銀は国債を買い続けながら金利を無理に低く維持する「金融抑圧」を数十年にわたって続けることになる。
と、いいます。
昨日の日経新聞を読むと、アメリカの国務長官が「日本の為替安には我慢ができない」と発言した、と報じられていました。
今、日本の円が円安になっている要因は、日銀のゼロ金利政策にあります。仮にこのゼロ金利政策が国際的に批判され、何らかの理由で政策金利を引き上げざるを得なくなると、前述の様に日本は国家破産に向けて突き進むことになります。
それが同書の前述の未来予測への論拠となっています。
私は思います。未来のことは誰も予測できません。
しかし組織トップの最大の仕事は「危機管理」にあります。
ひとつハッキリしていることは、これから間違いなく不況が来る、ということです。なぜなら好況がずっと続くということはありえないからです。
今、船井総合研究所では全社を挙げて、顧問先企業様あるいは会員企業様への「高収益化」の提案に取組んでいます。
その理由は2つあります。
1つ目は来るべき大不況に備えること。不況が来ると売上が下がります。利益率が低いと売上が下がるとすぐに赤字になります。
赤字になると固定費の削減をせざるを得なくなります。
ですから不況がきても簡単には赤字にならない様な、高収益な会社を今のうちにつくる必要がある、ということなのです。
2つ目は次の時代を生き残れる体質改善、すなわち会社のモデルチェンジのためです。モデルチェンジにはお金がかかります。
ですからまずは自社を儲かる状態にしておかなければならない、ということなのです。
次の時代で中心的な存在になるのが同書によると「AI」です。
同書によると18世紀の産業革命の際の「蒸気機関」と同様に「AI」が21世紀の産業革命の中心的役割を担う、といいます。
IBMやグーグルの様に「AI」そのものを手掛ける、というのも時代の波に乗る方法です。
しかし同書でも述べていますが、「AI」そのものはデファクトスタンダード化、あるいはコモディティ化する可能性が高く、インターネットの検索エンジンと同じく、業界1強の過酷な競争になる可能性が高いと思われます。
ここで私が思い出したのが18世紀のアメリカのゴールドラッシュです。ゴールドラッシュで一番儲けたのは金の採掘者ではありません。
金の採掘者に対してジーンズを供給したリーバイスや、金の採掘者にたいして缶詰を供給したキャンベルスープなどなのです。
「AI」産業革命も同じです。
これから「AI」産業革命で必要とされる周辺産業として下記を挙げることができます。
・センサー・MEMS
・電子部品
・カメラモジュール
・半導体製造装置
・バッテリー
・ストレージ機器
・ヘッドアップディスプレイ
・有機EL
・液晶
・真空技術
・ロボット
・精密減速機
・モーター
・FA機器
・マテハン機器
・各種産業財 その他
こうした「AI」産業革命、あるいはIoTに不可欠な周辺産業を多角的に攻めることが。2020年から本格的に始まる「AI」産業革命の波にのることだと私は思います。
なお、この5月に東京・名古屋・大阪で開催されるファクトリービジネス研究会 部品加工業経営部会 5月度定例会は、自社の高収益化と来るべきチャンスをものにするための、
~普通の町工場がイノベーションを起こす方法!~
今、そこにある人と技術で勝負する!
がテーマです。
現在の好況は、自社の実力で「売っている」のではなく、ただ「売れている」だけの可能性があります。
今回、上記定例会で特別ゲスト講師としてお招きしている三重県四日市市の株式会社伊藤製作所様の場合は、明らかに次の時代を生き残るモデルチェンジに成功されているモデル企業の1社です。
自社の実力できちんと「売っている」のか、あるいは好況下でただ「売れている」だけなのか、きちんと見極めて手を打つ必要があると思います。
本定例会は1社1回に限り“無料お試し参加”が可能です。
今回のコラムの詳細につきましても、この5月度定例会の中で詳しくお伝えしたいと思います。
ぜひ下記URLから詳細をご確認いただければと思います。
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