2017年1月における、私が感じる生産財業界の市況をまとめると、下記の様になります。
① 今年に入ってから全般的に良い。昨年対比でプラス3~5%、良いところでプラス10%くらいといったところか。
② 特に半導体・有機ELがらみが忙しい。某大手直動機器メーカーの工場などは全工場パンク状態、とのこと。半導体バブル状態になっている。
③ ただし機械工具商社の売上をみるとベース(ベアリングなどの組込み品・切削工具などの流れ品)は下がっている。工事・設備物件は好調。工作機械はいまひとつ。
④ 完成車メーカーやTir1クラスは設備投資を見合わせている。その分、Tir2クラスやその下請けに生産が流れ、忙しくなっている。
⑤ 中堅・大手ユーザーでは急速に集中購買が進んでいる。また成長企業ほど事業内容の機密性が上がり、簡単に現場に立ち入れなくなっている。その結果、こうした動きが経営陣には伝わっていないケースが多い。
⑥ 今年に入ってロボットの引合いが急に増えた。特に協働ロボットの引合いが増えた。協働ロボットとは文字通り、人とラインで並んで働けるロボットのことです。
⑦ ファクトリービジネス研究会の会員企業である機械工具商社、部品加工業は全般的に好調。しかし一般の材料商社は業績が振るわない。昨年対比で10%くらい落ちている。
⑧ 会員が運営する中古機械サイトにおいては、今年に入ってから全般的に「買取案件」が増えた。つまり中小企業が保有設備を放出する事案が増えている傾向。
この中で、私が「これは時代の変化か?」と興味深く感じるのは上記⑥です。次の動画を見ていただきたいと思います。1分くらいの動画です。
↓↓↓米国フォード車の最新工場の様子
これが協働ロボットです。アメリカの自動車工場ではいちはやく取り入れられています。ロボットメーカーはドイツのクカ・オートマティカ社のものです。
商品には“必需品”と“贅沢品”があります。特に生産財業界において「贅沢品」は売れません。贅沢品とは「無くてもよいけど、あった方がよいもの」のことです。
例えばロボットなどは典型的な“贅沢品”でした。生産財業界でロボットを購入する業界というのは、重量物のハンドリングや溶接・塗装工程など、人が行うことができず、自動車産業の様にロボットが必需品となる業界だけでした。「ロボットを導入すれば現場作業員が●人削減できる」みたいな事案は、中々購入につながりませんでした。「ロボット投資するよりも派遣を雇おうか」となるからです。
ところが今年になってから状況が一変している様に感じます。
先ほどもお伝えしましたが、ロボットの引合いが急激に増えているのです。特に協働ロボットの引合いです。
この背景には深刻な「人手不足」の問題があります。今や派遣社員も人手不足であり、人員の確保が最大の経営課題の一つとなりつつあります。「待てば解決する」問題ではなくなってきているので、中堅・大手企業もしぶしぶ自動化投資をせざるをえない、という様に見えます。
また政府が進める「働き方改革」もその背景にあります。例えば先日も1ヶ月の残業時間の上限を、三六協定であっても上限60時間とすることが義務付けられることが決まりました。
余談ですが、先日 経済産業省に行く機会がありました。「経済産業省として現在の重要施策は何ですか?」という私の質問に対して、その官僚は次の2つだ、と答えました。それは、
重要施策1:賃上げ
重要施策2:働き方改革
とのことでした。「この2つは何があっても絶対にやる」と言い切っていました。日本電産も残業ゼロに向けて2020年までに1000億円の投資をする、と発表していました。
協働ロボットはまだまだ高価です。しかしこうした社会背景の中、2017年を期に一気に普及する可能性もあります。
従来のロボット産業とは違う新たな産業として、これから押さえておくべき分野だと思います。
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