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IP企業を目指せ

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新年あけましておめでとうございます。

2017年はドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領に就任することが確定し、世界は文字通りG0(指導者不在)で混迷の度合いを増していくことが予想されます。

そうした中、中小製造業が時代の波を乗り切るためのキーワードの1つが「IP企業」です。

IP企業のIPとはインテレクチュアル・プロパティ(Intellectual Property)の略であり、一言で言えば「知的財産企業」ということです。

IP企業の知られざる代表格として、ドイツのMAN社を挙げることができます。

造船技術においては日本が世界一と誰もが思っていますが、大型舶用ディーゼルエンジンの分野では、このMAN社が世界シェア1位で81.1%であり、圧倒的なシェアを誇ります。ちなみに2位はスウェーデンのスルザー社で15.7%。3位は三菱UEという会社ですが、わずか3.2%のシェアしか持ちません。

さらに、このMAN社の大型舶用ディーゼルエンジンは、その99.1%がライセンシー企業による生産です。

MAN社は開発と知的財産の管理に特化し、実際の生産は日本企業や中国、韓国企業にライセンス供与しているのです。例えば日本の三井造船も、MANのライセンスによりディーゼルエンジンを生産しています。

ではMAN社はなぜこうした戦略をとっているのでしょうか?

それは造船業が景気に大きく左右される産業だからです。自社で生産まで手がけてしまうと設備投資や人員の維持など固定費が膨らみます。景気が良いときは良いですが、景気が悪くなると一気に財務が悪化します。

そうしたリスクを回避するために、MAN社の大型舶用ディーゼルエンジン事業はIP化しているわけです。

ちなみにスルザー社にいたっては、100%ライセンシーによる生産です。欧州企業がいかにしたたかであるかよくわかります。

こうしたIP企業化は、MANの様な大手企業だけの戦略ではありません。日本の部品加工業でも事例があります。

例えば私の関係先の某プレス加工会社(従業員20名)では、某大企業と共同研究・試作を行い、工法転換技術を開発しています。しかし従業員20名の規模では、量産の受注を行うことはできません。

この某プレス加工会社が量産まで受注しようとするなら、海外に工場をつくるなりして従業員を増やす必要があります。しかしそれには大きなリスクも伴います。そこでこの某プレス加工会社では、この某大手企業とライセンス契約を行い、量産化された暁には部品1個につき数パーセントのライセンス料をもらうことで合意しました。

これもIP企業化の事例です。

また大阪府寝屋川市に本社のある太盛工業㈱は金属射出成形(MIM)を手がけていますが、同社のMIMは機械加工なみの精度を実現することができます。その結果、従来必要であった二次加工が不要になるなど切削加工からの本格的な工法転換が可能となる技術です。同社ではこの工法に「μ-MIM」という名称をつけ、商標登録を行っています。この様に自社の技術を「商品」化することもIP企業化の事例といえます。

「商品」と「製品」は明確に違います。「商品」とは次の4要素を持つ製品のことです。

1)本質的価値

2)ネーミング

3)パッケージング

4)価格

例えば2016年日経優秀製品・サービス賞 最優秀賞 日経産業新聞賞に選ばれた、有限会社スワニーの「デジタルモールド」も技術の商品化の一例です。これは3Dデータをもとに3Dプリンタで金型をつくり、その金型により短納期・ローコストにて射出成型(樹脂・金属)やプレス加工を行う技術です。3Dプリンタのネックとして材料費用が高いことが挙げられていましたが、これをワークではなくモールドとすることで費用が問題にならなくなります。

ぜひ2017年は皆様も、自社技術の「商品」化に取り組んでいただきたいと思います。

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