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現在の好況の正体

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先日、九州のある地方都市にコンサルティングで訪問しました。

そのエリアでは半導体製造装置がらみの仕事が超多忙で、その訪問先企業からも「片山さん、どこか外注を紹介してもらえませんか」と、某大手企業の図面を見せられました。

ところがその仕事の中身は、本来であればその某大手企業が手がけるべき仕事内容でした。

私が「この某大手企業は設備投資をストップしていて、とにかく増産分は外注にやらせているわけですね?」と聞くと、「その通りです。よくわかりますね」と驚かれました。

なぜ、それがわかるのかというと、大手企業が設備投資を必要最低限のものにして、逆に下請けに設備投資をさせて仕事をさせる、という図式が全国的なものだからです。

では、なぜ大手企業は設備投資に過敏なまでに慎重なのでしょうか。

それは現在の好況・円安がいつまでも続くとは思っていないからです。

日米貿易戦争の歴史は、為替を巡る歴史でした。

ベトナム戦争で国力が疲弊したアメリカは突如、1971年に金とドルの交換停止を宣言し、1ドル360円が、1ドル200円台の円高となりました。

さらに日米貿易摩擦が激化した1985年には、プラザ合意で円高・ドル安路線で日米が合意、1ドル100円台の為替が定着しました。

1985年をかわきりに、パナソニックやソニー、当時の三洋電機などは一斉にマレーシアやシンガポールに工場を移転しました。

そして1989年のベルリンの壁崩壊をきかっけに、旧東側諸国の安い人件費の国で量産を行うことが、世界的なスキームになっています。

次のステップがどうなるかわかりませんが、「危機管理」の観点でいえば、

「1ドル60円」

「日経平均株価5000円」

 

といったことも考えておかねばならないでしょう。

なぜなら「危機管理」とは“シナリオを持つ”ということだからです。ある経営者の方が言われていましたが「予測できることは防げる」という言葉があります。

BPCという言葉があります。

BPCとはBusiness Continuity Plan(事業継続計画)の略で、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。

大手企業はみなBPCに取り組んでいます。

BPCの要素として前述の

・自然災害

・大火災

・テロ攻撃

 

が挙げられていますが、私はここに

・大不況

 

あるいは

・経済危機

 

を付け加えたいと思います。

中小企業にとってBPCは、まさに人為的災害ともいえる「大不況」「経済危機」への備えが第一だと私は思います。

具体的に「1ドル60円」「日経平均株価5000円」への備えとして次の3つをご提案したいと思います。

(1)国際的な勝ち組顧客と付き合う

前回のコラムでお話しした、アイフォンの部品の半分を占める高付加価値部品企業、または特定の分野で世界トップシェアのニッチトップ大企業と付き合うことです。

世界シェアトップクラスの優良企業は、国際取引においても有利なため、ドル決済ではなく円決済のケースも多々あります。また世界のユーザーも、いっとき台湾・韓国などのローコストメーカーに流れたこともありましたが、明らかに日本製とは信頼性や性能が違うことを現在では認識しています。

一般消費財は価格が全てですが、部品や生産財となると、価格だけでなく信頼性やランニングコストが焦点になります。

いずれにせよ中小企業の業績は取引先で決まります。負け組の大手企業と付き合っても共倒れのリスクしかありません。

 

(2)内需型成長産業と付き合う

これから日本はさらにデフレが進みます。言い換えれば大衆の貧困化が進み、と経済格差(=知識格差)がさらに進む、ということです。

こうした時流で伸びるのは「中食」です。具体的にはコンビニで売られている弁当、おつまみ、スイーツ、パン菓子、飲料などです。あるいはスーパーで売られているカット野菜や半完成の惣菜、などです。その理由は共働き世帯が増えることで、こうした中食の需要が増えること。また可処分所得の減少により、外食から中食に需要が流れることがその要因です。

実際、ステンレス系の製缶業者は皆多忙ですが、これは全国で食品会社・飲料会社が設備投資をしているからです。

 

(3)低単価・必需品ビジネスを伸ばす

景気が悪くなると必需品しか売れなくなります。これは一般消費者であれ、工場であれ、同じことです。

工場における必需品の代表格が「メンテナンス」あるいは「点検」です。いかに原資がなくとも、メンテナンスや点検をしないわけにはいきません。

特にそれが法律と関わる、となればなおさらのことです。具体的にはあと1年半で法的な罰則が行使される「フロン排出抑制法」が挙げられます。7.5KW以上のフロン使用設備は年に1回の定期点検が義務づけられ、それ以下の設備・機器についても3ヶ月に1回の簡易点検が義務づけられています。

熱設備などもJISにより年に1回の点検が義務づけられています。

こうした低単価・必需品ビジネスを事業化・伸ばすことです。

 

特に(3)が重要な理由は、景気が悪くなるにせよ、良いにせよ大切なことは

・お客様を集め続ける

・お客様と繋がり続ける

・お客様から必要とされ続ける

 

ことがビジネスのセオリーだからです。

船井総研が主宰している「機械工具商社経営研究会」では、不況対策として、上記(3)で述べたフロン点検ビジネスを会員の皆様にご提案しています。

「いや、すでに空調業者がフロン点検はやっていますよ」

「大手企業はとっくに手を打っています」

 

そういう声も聞かれます。

空調業者がフロン点検を行う理由はただ一つで、空調を売りたいからです。ところが工場の現場にいくと、

・制御盤クーラー

・チラー

 

といった、小さな機器の中で実はフロンが冷媒として使われている、といったケースが膨大にあります。

では、こうした工場現場のフロン点検を空調業者がやりたがるか?というとやりたがりません。理由は自社にメリットが無いからです。

しかし機械工具商社ならあります。現場に入れることで、新たな工事・メンテナンス・加工などの提案ができるはずです。

いずれにせよ、経済は景気の山谷がつきものです。アメリカやロシアにしても、国益をかけて日本に様々な経済戦争を仕掛けてくるでしょう。

企業経営者としては、そうした時代の波を読み、手を打ち続けることでうまく波を乗り越え、自社を常に成長させていくことが求められるでしょう。

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