イギリスのEU離脱が決定的になりました。
一昨年のスイス視察セミナーで知り合った、スイス銀行の関係者によると、現在のところ現地の情勢は落ち着いているとのことです。
ただし焦点は月末のEU首脳会議だといいます。
このEU首脳会議は、もともと6月23日からの開催が予定されていたそうですが、イギリスEU離脱の国民投票の開票日と重なったため、6月27日からに延期されたそうです。
この首脳会議でEU側はイギリス・キャメロン首相に説明を求め、その後イギリス抜きの27ヶ国の加盟国で対策を協議するそうです。
この首脳会議できちんとした方向性が出されないと、下手をするとリーマン・ショック以上の経済危機につながる恐れがある、と言っていました。
以前にこのレポートでも述べた、2つの世界経済リスク、
1)英国のEU離脱
2)米国のトランプ大統領
のうち、1)が現実のものになりました。
さらに 2)についても、従来の常識でいえば勝利するのは圧倒的に政治資金力を持つヒラリー候補です。
しかし、今や合理的な判断ができないポピュリズムにのまれた欧米において、従来の常識も通用しません。
仮に 2)が現実のものになると、さらに世界は予測不能の超不透明な時代に突入します。
しかし世界経済がどうあれ、中小企業の経営者は「自分の身は自分で守る」しかありません。
ここで前々回のレポートで述べた、「VUCA(ブーカ)」について再度述べたいと思います。
VUCA(ブーカ)とは、
・Volatility (変動性)
・Uncertainty (不確実性)
・Complexity (複雑性)
・Ambiguity (曖昧性)
の頭文字であり、現在の世界経済を象徴するキーワードとして、今年から頻繁に使われる様になりました。
そしてVUCA(ブーカ)への対処法は、次の5つでした。
①確固たるビジョン・シナリオ
②走りながら考える(トライ&エラー)
③事業の「複線化」
④ゲームの“ルールメーカー”
⑤イノベーションの追求
未来の予想(=フォーキャスト)をすることはできません。
ただし「シナリオ」を考えておくことはできます。先が見えない時代だからこそ、自ら複数のシナリオを持っておくことが必須です。
これは昨年のオランダ視察セミナーで学びました。オランダ・ハーグに本社を置くロイヤル・ダッチ・シェルは、あらゆる危機を想定した複数のシナリオを持つことで、100年以上にわたり多くの危機を乗り越えてきたといいます。
彼らはそれを“シナリオズ”と呼んでいました。
また、まずはやってみることが大事です。先日、ある急成長企業かつ超優良企業へのコンサルティングを行った際の話です。
ある新規事業で議論が煮詰まった際、社長が「まずやってみてダメなら治せばいいんだよ!」と、その場でGOがかかりました。
同社はさらに躍進することと思います。
ダメな会社ほど意思決定に時間がかかります。
そして結局、何もやらないのです。
さらに事業の「複線化」は永続の必須条件です。
先日、ユアサ商事の350周年記念式典が行われました。同社は工作機械の取扱高では国内トップですが、同様に消耗品である機械工具、さらに典型的な安定型内需マーケットの管工機材・住設機器でも、取扱高は国内トップ級です。
さらに同社の兄弟会社であるバッテリーのGSユアサは、もともと大正時代にオーナーが自宅の倉で始めた新規事業が元になっています。
同社が350年の長きにわたり存続できているのは、事業の複線化と時代に応じたイノベーションを繰り返してきたからです。
ピンチはチャンスという言葉があります。今回の一連の動きの中で、多くの業界で主要プレーヤーが入れ替わり、またルールが書き換えられることでしょう。
このピンチをチャンスにして大きく飛躍する会社もあれば、逆のパターンもあると思います。
ぜひ皆様には前者の企業になっていただきたいと思います。
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