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2016年6月の市況

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いつも景気が悪くなる時には、次のステップを踏む様に私は感じています。

第一段階:工具商社の受注が悪くなる

第二段階:材料商社の受注が悪くなる

第三段階:2次取引 部品加工業の受注が悪くなる

第四段階:1次取引 部品加工業の受注が悪くなる

不況になるとユーザーは「有っても無くてもどうちらでもよい商品」を一切買わなくなります。その結果、まず工具商社の業績が悪くなります。

次に必需品を扱っている材料商社の業績が悪くなり、営業力に乏しい2次加工会社の業績が悪化するのです。

昨年の年末から上記の第一段階、今年に入って第二段階、そして現在は第三段階ではないでしょうか。

エンドユーザーと直接仕事をしているレベルの部品加工業は、今のところまだ好調です。しかし彼らが外注に出している先の2次取引の部品加工業は仕事が減り、「何か仕事ありませんか?」と、1次取引の部品加工業に電話をかけてきている状態です。

このまま行くとお盆明けにも、あるいはその前に第四段階になるかもしれません。

目の前のリスクとしては「中国デフレ」リスクがあります。

今、日本国内における鉄鋼の生産量は年間約1億トンです。それに対して中国では年間約8億トンの鉄鋼を生産しています。

ところが中国国内で消費できる鉄鋼の量は、わずか1.5億トンだと言われています。その結果、中国の鉄鋼がダンピングで世界中に格安で輸出され、世界中の鉄鋼会社が赤字に陥っているのです。

さらに新日鉄住金だけで、5年前くらいの好況期に計画した最新鋭の高炉がタイ・ベトナム・中国・ブラジルで今年立ち上がるそうです。

現在のデフレはさらに進むでしょう。

また現在、世界経済で最もリスクなのは、

1)英国のEU離脱

2)米国のトランプ大統領

だと言われています。1)は6月23日の国民投票で結論が出ます。

2)については、トランプが大統領になっても、ヒラリーが大統領になっても、両者ともに過去最低の支持率だそうですから、その後の政権運営はリーダーシップに欠けるものになるでしょう。

アメリカも来年はより不安定になると思われます。

また以前にも本レポートで述べた「ドイツ銀行問題」や「ハイ・イールド債問題」も、世界的な経済危機に直結する大きな問題です。

前述のコラムで「VUCA(ブーカ)」について取り上げましたが、まさに我々の業界だけでなく全世界が、

・Volatility    (変動性)

・Uncertainty   (不確実性)

・Complexity    (複雑性)

・Ambiguity    (曖昧性)

に直面しているといえます。

ここで繰り返しにはなりますが、このVUCAに対しての対策を述べると、

①確固たるビジョン・シナリオ

②走りながら考える(トライ&エラー)

③事業の「複線化」

④ゲームの“ルールメーカー”

⑤イノベーションの追求

の5つの要件になります。

この中で実務的に最も優先されるのが、③事業の「複線化」 であり、不況に備えた新規事業、あるいは特定顧客・特定業界への依存脱却です。

景気の好不況は繰り返すので、どんな時にも下降局面はあります。

ただし製造業に関して言えば、IoT、ビッグデータ、次世代自動車に代表される「第四次産業革命」がまさに進行しています。

中長期のトレンドでみれば製造業ビジネスは相対的に伸びますし、また特に部品加工業に限定すれば、私は成長産業だと考えています。

後ろ向きな不況対策とだけ捉えるのではなく、このトレンドをチャンスに新たなイノベーションを生み出していきたいものです。

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