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日本版インダストリー4.0

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日本版インダストリー4.0の教科書 ~IoT時代のモノづくり戦略~(日経BP社)は、今ブームのインダストリー4.0に対して、非常に示唆に富んだ投げかけをしています。

昨今のインダストリー4.0ブームもあり、日本から多くの製造業関係者がドイツの製造現場を視察に行っています。

ところが彼らが帰国後に口々に語るのは、

「ドイツの工場は思ったよりも大したことがない」

「これなら日本の方が進んでいる」

といったことだそうです。

こうした現状に、日本の製造業関係者はインダストリー4.0の本質が理解できていないのでは?と同書の著者は警鐘をならしています。

モノづくりは設計開発段階で付加価値の80%以上が決まります。

ドイツの製造業の根本的な強さは、この設計開発段階でのプロセスが標準化されていることにあります。これに対して日本の設計開発は職人芸です。

具体的にドイツの製造業では、設計現場においてBOMの導入が一般的です。BOMとは Bill of Materials の略で、日本語に直訳すると「部品管理」という言葉になります。

BOMでは全ての部品がコード化、構造化され、過去に設計された部品の図面を参照する、といった業務が容易になります。

逆にBOMが導入されていないと、過去に設計されたことがある似た様な部品を、また新たに設計者が設計する、といったムダが発生しやすくなります。

ドイツでは量産品だけでなく、一品料理的な生産財についても広くBOMが導入されています。BOMには設計段階での情報を付加する E-BOM(エンジニアリングBOM) と言われるものと、製造段階での情報負荷する M-BOM(マニュファクチュアリングBOM) と言われるものがあります。

ドイツのインダストリー4.0の概念は、このE-BOMとM-BOMが組織や産業の壁を越えて連携し、その結果として「個別大量生産」実現しようとしている、といいます。

「個別大量生産」とは、多品種少量あるいは一品生産であっても大量生産並みのコストでモノづくりを行う、ということです。

こうしたE-BOMやM-BOMといった上位概念は、製造現場を見ているだけでは絶対にわかりません。

以前に私があるセットメーカーで、このBOMの提案をしました。そこの会社はドイツ某企業の日本法人からOEM製造を請けているのですが、その際のマニュアルに「BOM」という言葉が頻繁にでてきたそうです。そのセットメーカーの設計者は「BOMというのは、てっきりそのドイツの会社の社内規格のことかと思っていました。片山さんの話を聞いてやっと理解できました」と言われていました。

BOMという言葉はVEと同様に、かなり古い概念・言葉ではありますが、実は日本においてはまだまだ浸透していません。

経営には「氷山理論」という言葉があります。氷山はその全体の1/8しか水上に姿を現していません。全体の7/8は水中なので外からは見ることができないのです。

経営も同じだとよく言われます。

例えば以前のレポートでも述べましたが、セブン・イレブンが生産性・収益性で同業他社を圧倒的に引き離している理由は、「家事代行」というコンセプトにあります。当然のことながら「家事代行」というコンセプトは店舗を見ていてもわかりません。

同業他社が「セブンがおでんを売っているからうちも売ろう」「コーヒーを売っているからうちもやろう」と、外から見えるところだけを後追いしていても、永久に同社を上回ることができないでしょう。

インダストリー4.0についても、同じことが言えます。

ドイツの生産性は58.3ドル/時で、世界平均は45.8ドル/時です。これに対して日本の生産性は40.1ドル/時であり、残念ながら今や世界平均をも下回っています。

ドイツの生産性と比較すると7割以下です。

前述の「氷山理論」ではありませんが、我々ももっと“目に見えない部分”をしっかりと見ていく必要があります。

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