医療機器業界は国内で約2.9兆円の市場規模があり、毎年年率3%以上伸びている不況に強い安定的な成長産業です。ところが同市場規模に占める輸入額の割合は約50%であり、ものづくり大国日本の中では例外的な“輸入超過産業”です。しかもここ3年間は連続して輸入が増加しています。
「医療機器開発とベンチャーキャピタル」の著書があり、医療機器専門のベンチャーキャピタル、MedVenture Parttnersの社長でもある大下創氏によると、日本に医療機器産業が根付いていない要因は、日本には本当の意味でのベンチャー企業の文化が根付いていないからだといいます。
まず日本では“中小企業”と“ベンチャー企業”が混同されていますが、ベンチャー企業の定義とは、ベンチャーキャピタルの出資を受けているスタートアップのことです。
また多くの中小企業の目的が「永続」であるのに対し、ベンチャー企業の目的は「大企業への売却かIPO(株式公開)」にあります。
アメリカにおいてイノベーションの中心にベンチャー企業がありますが、特に医療機器業界においてはベンチャー企業が主要な役割を果たすといいます。
なぜなら医療機器の開発は人命が関わるだけにリスクが高く、万が一事故でも起きると既存のブランドにまで影響が広がります。従って“失うものが大きい”大手医療機器メーカーは、新分野の開発にはかなり慎重です。
ところが医療機器系のベンチャー企業は、失うものが無い(あるいは少ない)だけに、多少のリスクをとっても新技術の開発を行います。そして新技術が確立した暁には、会社ごと大手医療機器メーカーに売却するか、あるいは自らIPOする道を選びます。
こうしたベンチャー企業文化がアメリカには根付いていることから、特に医療機器業界の世界ではパイオニアで有り続けています。
従って日本の医療機器業界を発展させるためには、日本にもベンチャー企業文化が不可欠であり、そのために業界の目利きができるベンチャーキャピタルが不可欠であると大下氏は説きます。
前述の同社は日本初の医療機器業界専門のベンチャーキャピタルだそうですが、今後の展開が楽しみです。
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