現在の様に変化が激しい時代に、安定的・永続的に事業を続けるポイントは、自社のビジネスを「ストックビジネス」にすることです。
「ストックビジネス」の代表格は、機械警備を売っている警備会社のセコムです。同社の機械警備は契約期間が5年間で値引きは一切無し、それでも大半の顧客が契約を更新し続けることから、セコムは抜群に安定した収益構造になっています。
また会員制ホールセールのコストコは、年会費を一律4000円取っています。これも「ストックビジネス」です。この年会費が売上の約10%を占めることから、物販での利益がほとんどでなくても最終的に営業利益10%が確保できます。これは競合のGMS(総合スーパー)等と比較して、物凄く大きな優位性になります。近年、アマゾンが年会費制の“アマゾンプライム会員”を増やそうとしているのも、同じ理由です。
そして「ストックビジネス」と反対のビジネスモデルが、「フロービジネス」です。「フロービジネス」は、いわば“売ったら終わり”のビジネスモデルです。
大竹啓裕著「ストックビジネスの教科書」(ポプラ社)によると、「ストックビジネス」の定義として次の2つを挙げています。
1)継続的にお金が入る
2)売ることができる
前述のセコムの機械警備や、コストコ、アマゾンプライムなどは全てこの定義に当てはまります。また世界的に有名な投資家、ウォーレン・バフェットは安全カミソリのジレットやコカ・コーラなど、ストック性の高いビジネスモデルの会社を好んで投資したといいます。
ジレットの場合はカミソリの“替え刃”が継続的に売れます。またコカ・コーラの場合は飲料の原液が傘下のボトラー(=販売会社)に継続的に売れます。
かく言う船井総合研究所も、ここ5年間で研究会中心の「ストックビジネス」に舵を切り、収益面で大きな成果を上げることができ、その結果として株価も数年前の3倍以上になりました。
同書を読むと、いかに「フロービジネス」を「ストックビジネス」に変えていくのか、様々なヒントが書かれています。
ちなみに、我々生産財業界においてもこの「ストックビジネス」の考え方は大いに取り入れることができます。
例えば「フロービジネス」の典型的な例がセットメーカーです。ここでいうセットメーカーとは、省力化設備メーカーや工作機械メーカーのことです。
こうした設備財は好況の時はよく売れますし、また儲かります。しかし工作機械メーカーなどは“三年殿様、五年貧乏”といわれるくらい、浮き沈みが激しい業界です。
そこでセットメーカーの場合は、「メンテナンスビジネス」などを付加することにより、「フロービジネス」から「ストックビジネス」の要素を高めていくことが求められます。
例えば私の関係先の熱処理設備メーカーは、単価数千万円の熱処理設備が主力商品である一方、単価数十万円の熱設備点検で「ストックビジネス」化を実現しています。熱設備はJISにより年に1回の法定点検が義務付けられていますが、同社はどこのメーカーの設備であれ法定点検、またそれに伴う修理・オーバーホールに応じます。
熱交換器のトップメーカーであるアルファ・ラバル社も、どこのメーカーであれメンテナンスに応じています。
また「部品加工」もストック性の高いビジネスです。例えば私の別のセットメーカーの場合、リーマン・ショック後は売上の8割が省力化設備で、またその8割が自動車産業でした。しかし現在は省力化設備が全体の3割程度となり、3割が部品加工、3割がOEMとストック性の高いビジネスモデルに変わりました。
また対象業界も自動車が3割、ITが3割、医療機器が3割と、特定業界への依存からは脱却しています。
「部品加工」そのものはストック性の高いビジネスですが、しかし特定業界・特定顧客に依存していては言うまでもなく高リスクであり継続性・永続性がありません。
ビジネスモデルのストック化も、取引先・取引業界の分散も一朝一夕にできるものではありません。
ぜひ自社のビジネスモデルを見直してみていただきたいと思います。
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