現在は同業者だけでなく、異業種と競合することが大いにありえます。むしろ同業者との競合よりも、異業種との競合の方がより大きなダメージをこうむることが多々あります。さらには業界そのものが消えて無くなったり、他の業界と融合してしまうこともあり得ます。そうした事例を紹介してルール化している本が、内田和成著 ゲーム・チェンジャーの競争戦略 です。
例えば任天堂は2008年には売上高1兆8400億円、営業利益5500億円の超優良企業でした。ところが3年後には売上高6500億円で営業赤字に転落、その後3期にわたって営業赤字が続きました。ゲーム機を購入せず、スマホや携帯電話でのゲームを楽しむ人が増えたことがその理由です。携帯ゲーム会社は“ゲーム・チェンジャー”であり、任天堂は市場のゲームチェンジに乗り切れなかったというわけです。
また同書では、店舗売上よりも会員制の会費で収益をつくるホールセラーのコストコ、ハウスメーカーから不動産デベロッパーに業態を広げた大和ハウス工業を“ゲーム・チェンジャー”として紹介しています。いずれも不況業界の中で業績を伸ばしている会社です。
そして興味深いことに、こうしたゲーム・チェンジャーに対して既存業種がどの様に対抗するべきなのか、次の4つの方法を同書では挙げています。
① 無視する
② 正面から戦う
③ 搦め手(からめ手)で戦う
④ 逃げる
このうち最もリスクが高いのが①で、また無視するよりも現実的とはいえ、やはりリスクが高いのが②であるといいます。
それよりもローコストなネット証券と正面からぶつからず、自社の強みを活かして優良顧客へのサービスを充実させた野村證券がとった方法が③です。また同じく低価格を武器にする英会話の語学教育から、英語のビジネス教育の分野に市場をうつしたベルリッツがとった方法が④です。
同書によると最も有効な対抗策は、自社の強みを活かした上で③④の手法を取ることだと述べています。
どんな時代でも、どんな状態におかれたとしても、やはり自社の「強み」を正しく把握し、それを活かすことが大切だと改めて同書から学びました。
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