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なぜ円安でも仕事が戻ってこないのか?

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年初、ある大手電機メーカーの資材部門の幹部が言っていたそうですが、同社ではこれからどれだけ円安になっても、中国をはじめとする海外に移管した生産を、国内に戻すつもりは全く無いとのことです。

その理由とは、次の通りです。

国内には下請法という法律があり、不当に購入価格を叩くと、下手をすると訴えられるリスクがあります。

コンプライアンスが厳しく言われる昨今、大手企業のサラリーマンにとって、訴訟を起こされるのは致命的な話です。

ところが中国を始めとする新興国には、こうした法律がありません。ですから前述の某大手電機メーカーの場合、中国の元が値上がりして本来はコストアップになっているのですが、ローカルの下請け企業を叩いて、無理やり従来のコストで仕事をさせているそうです。

従って円安だからといって、生産を国内に戻すつもりは無い、というのです。

また、アメリカの場合は少し様子が異なります。

アメリカではタイやインドネシアに出していた仕事が、どんどんアメリカ南部やメキシコに戻ってきている、といいます。

特にメキシコは、自動車業界を中心に空前の製造業ブームに沸いているということです。

ところがかつての自動車の都、デトロイトなどは全米ワーストレベルでの失業率や治安の悪化により、ゴーストタウンの様になっているエリアが多々あります。

同じ北米でもこうした差がついている理由は、アメリカ北部は労働組合(=ユニオン)の力が強いのに対して、南部は労働組合の力が非常に弱いからです。

以前訪問したコネチカット州のハートフォードに、かつてGMコルベットの工場があったそうです。現在ではその工場は閉鎖されて更地になっているのですが、その原因の1つは人件費が高いことで、なんと芝刈り専任の職員にも、年収で800万円以上が支払われていたといいます。

こうした事情があり、アメリカの自動車産業はテネシー州やケンタッキー州といった南部に集積しています。

またボーイングやエアバスも、新工場をつくるのはノースウエスト州など、やはり南部の州です。

メキシコはさらに安い労働力を確保することができます。

ということで、かつてはタイ・インドネシアブームでしたが、これからはアメリカ南部・メキシコブームになりそうです。

しかしこうしたブームはブームというだけあって、当然の話ですが必ず落ち込む時がやってきます。

現在の新興国不況を見ていると、まさに山高ければ谷深し、ではないでしょうか。

そう考えると、中小企業が社運を賭けて海外に進出するべきではありません。進出するにしても、自社の体力の余力の範囲にとどめることが前提条件でしょう。

それよりも日本国内で十分に儲かる仕事を探す、そして中小企業であっても日本から欧米など、先進各国に輸出ができる様なビジネスを手がけていくべきだと私は考えます。

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