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経営者は不況に備えよ

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アメリカ大統領選挙の年は、経済危機がやってくると言われています。

2000年のクリントン大統領最後の年は、ITバブル崩壊が起きました。2008年のブッシュ大統領最後の年は、リーマン・ショックが起きました。

アメリカ大統領選挙の年、特に大統領が必ず交代する2期目の選挙の時には、世界経済に対して最も影響力のあるアメリカ政府が有効な経済対策を打ちにくくなるからです。

実際、2016年は中国株バブルの崩壊など、波乱の年明けとなりました。あまり目立った報道もされていませんが、ウクライナもデフォルトを宣言しました。

今年、2016年はオバマ大統領最後の年で、大統領選挙の年です。

全ての経営者は、来るべき不況に備えるべきでしょう。

 

しかしながら、不況は悪いことばかりではありません。

ピンチはチャンスという言葉があります。

事実、革命的なイノベーションというのは、未曾有の経済危機直後に生まれています。例えば戦後に石油化学産業という基幹産業を生み出した“ナイロン”は、1920年代のアメリカで経済恐慌の直後に生み出されました。

また、IoTと連動して爆発的なビジネスへの広がりが予想されるシェアリングビジネスの先駆者、エアビーアンドビーも2009年のリーマン・ショック直後に生まれた会社です。

 

我々、部品加工業界や機械加工業界も同様です。

例えば日本のサンドビック社は、リーマン・ショックまではずっと国内市場シェア4位の超硬工具メーカーでした。

同社は景気がよかった2007年ごろから不況対策を進め、リーマン・ショック後に工具の需要が激減すると、「サンドビック・ツール・クリニック(STC)」という無料サービスを展開しました。

これは使用中の工具を無料で診断し、正しいメンテナンスの方法などを顧客にレクチャーして、工具寿命や生産性を向上させるというプログラムです。

当時、同業他社は「営業禁止令」などが出る中、サンドビックはSTCで国内優良企業に入り込み、徐々にファンを増やしていきました。

その後、同社は超硬工具メーカーT社のシェアを抜き、現在では国内シェア3位の「御三家」の一員です。

 

部品加工業の場合も、リーマン・ショックを機に変化した会社と変化できなかった会社で、現在は業績が大きく二極化しています。

例えば私の関係先の某プレス加工業(従業員30名)は、切削から塑性加工に置き換える「工法転換」により、営業利益率10%を実現しています。

この某プレス加工業は、リーマン・ショックまでは某大手家電メーカーの仕事をメインに行っていました。大きく儲からないにせよ、事業を継続できるレベルでの利益水準での経営を続けていました。

ところがリーマン・ショックで仕事が半減し、仕事が無いよりはと、従来は断っていた「開発案件」を手がける様になりました。

「開発案件」とは、前述の切削から塑性加工への置き換えなど、顧客の工法転換ニーズへの対応です。こうした「開発案件」は、うまくいくかどうかわからない仕事ですから手間がかかります。

テストで1発目のプレス加工を行う時など、金型が割れるリスクがあるので、設備の起動ボタンを押したらすぐに逃げた、といったエピソードもあったそうです。

こうしたノウハウを蓄積した結果、同社は今や特定分野では日本トップクラスの技術を持っています。

リーマン・ショックの前と現在とでは、主要取引先も仕事の中身も全く違うものになりました。

 

また私の関係先の某機械加工業(従業員35名)も、リーマン・ショックを機に仕事の中身を見直しました。

従来はマシニングの仕事であればどんな仕事でも受けていたのですが、それでは価格競争に巻き込まれて、残業時間が増えるばっかりで全く利益が出なくなったからです。

同社の場合も自社の強みを磨きあげ、「研削レス」という工法転換を武器に、遠隔地からも仕事を取る様にしました。

また古くなって差別化ができなくなった、旧式のマシニングセンタを廃棄し、自社の得意な仕事に対応した特徴ある設備を導入して、工場の中も大きく変えました。

その結果、売上は過去のピークに届かないまでも、営業利益率では10%を超える高収益企業となりました。

同社もリーマン・ショックの前と現在とでは、主要取引先も仕事の中身も全く違います。

 

過去のリーマン・ショックを機に、ピンチをチャンスに変えて高収益企業となった会社の共通点は、

・ 顧客に「価格」以上の「価値」を提供している

ということです。

「価格」以上の「価値」を提供する視点として、次の2つを挙げることができます。

1)サプライチェーンを統合する

例えばサンドビック社のSTCは、工具使用後のメンテナンスというサプライチェーンを統合したものです。

2)自社の強みを見極め「工法転換」と言えるレベルにまで高める

前述の機械加工某社の場合も、最初は「工法転換」という認識はありませんでした。自社の強みを探る中で、研削レスに気づいたのです。

要は同業他社と同じことをして、同じ土俵で争っていてはいけない、ということです。

 

といって、市場にニーズの無い、あまりにもニッチなことを手がけていても利益は出ません。

世の中の必需品を、自社ならではの価値を付けて提供すること、同業他社と争わない自社独自のマーケットをつくることが大切なのです。

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