文明評論家として知られ、独メルケル首相など各国首脳のアドバイザーを務めるジェレミー・リフキン氏は、その著書「限界費用ゼロ社会」の中で非常に興味深いことを述べられています。
まず人類の近世の歴史は、生産性向上の歴史でした。
18世紀おわりの第1次産業革命では、蒸気機関による生産性向上により、織物や衣類をはじめとする製品のコストが劇的に下がりました。また蒸気機関車により移動にかかる時間とコストも劇的に引き下げ、社会全体の生産性を向上させました。
そして19世紀おわりの第2次産業革命では、電気と内燃機関の登場により、大量生産とそれにともなう自動車の普及が、さらに社会全体の生産性を向上させ、あらゆる製品のコストを引き下げました。
さらに現在進んでいる第3次産業革命では、生産性が極限まで上がり、その結果コストが下がるところまで下がるという「限界費用ゼロ(=2つ目からの実質生産コストがソフトウェアの様にゼロになる)社会」が来る、というのです。
この「限界費用ゼロ社会」を実現する上で、核となる技術が2つあります。1つは再生可能エネルギーです。半導体の世界には「2年間で実装密度が2倍になり、コストは1/2になる」という、有名なムーアの法則がありますが、この法則は太陽電池にも適用できるそうです。現在のペースで太陽電池が進化すれば、2020年には一般電力料金とコストが並び、2030年には石炭火力の発電コストの半分になると言われています。
2つめがIoTです。IoTが進展したことにより、ウーバーやエアビーアンドビーに代表される、新しいシェアリングエコノミーが生まれています。例えばウーバーはタクシーと比べて運転手は3割儲かり、使用者は3割安い、というビジネスモデルです。
さらに前述のローコストな再生可能エネルギーと、IoTが組み合わされば社会全体の生産性が上がり、あらゆるコストが劇的に下がると、同著の中でリフキン氏は述べています。
著者が考える様な「限界費用ゼロ」が、社会全てに適用されるかどうかは別として、あらゆるモノのコストが下がるデフレ社会が進むことは間違いなさそうです。
中小企業としては、「価値売り」「研究開発」といったデフレ対策を行うこが必要です。さらに自社の提供する商品・サービスが、どの様な新テクノロジーに置き換わる可能性があるのか、常にアンテナを高くしておくことが必要だと思います。
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