まず“一番商品”とは自社の得意技術、あるいは看板技術、ということになります。
例えば愛知県の某町工場の場合、自社のホームページを「何でもできます!」から「アルミ・黄銅・樹脂専門」と絞り込んだところ、引合いが3~4倍にもなったといいます。
こうした事例はわかりやすい話です。
さらに突っ込んだ話をすると、部品加工業において最もニーズがあり利益の出る“一番商品”は「工法転換」技術です。「工法転換」とは従来とは異なる加工法に置き換えることで、お客にコストダウンを提供する技術のことです。
例えば切削加工から金属射出成形への置き換えは「工法転換」です。
切削加工から鍛造加工への置き換えも「工法転換」です。
また金型を使用したプレス加工から、金型レスのダイレスフォーミングへの置き換えも「工法転換」です。
さらにオール削り出しから、電子ビーム溶接を活用した高強度接合も「工法転換」です。
これらの「工法転換」は「お客が知ってもよい工法転換」です。
「工法転換」の中には「お客に知られたくない工法転換」もあります。
例えば旋盤+マシニングと複数工程を渡り歩いていたワークを、複合機でワンチャッキングにて加工すればリードタイムが短縮し、大幅コストダウンになります。
しかしお客に対しては旋盤+マシニング加工を前提としたチャージで見積りを出します。そうすると多少値引きしても、手元には十分な利益が残るでしょう。
これが「お客に知られたくない工法転換」です。
特に機械加工(切削加工)において利益を出すポイントは、いかに工作機械を“かけっぱなし”の状態にできるか、にあります。
前述の様な複合機の活用、あるいは治具などを工夫することによる多台持ちの推進も「工法転換」といって良いでしょう。
いずれにせよ、部品加工業で営業利益率10%超を実現している会社の多数は、この「工法転換」技術を持っています。
さらに“品揃え”とは、すなわち「来た仕事を断らない」あるいは「できない」とは言わないことです。自社でこなせない仕事は外注を活用します。
ただし赤字受注をするわけではありません。「来た仕事を断らない」あるいは「できない」と言わないだけで、十分な利益は確保する必要があります。
そこで利益原則の3番目の要素である“主導権”が必要となってきます。
“主導権”とは言い換えれば自社の「客数」であると言えます。また特定顧客に依存しない収益構造であることが前提です。
従って“主導権”を取るためには「新規開拓ビジネスモデル」が不可欠になります。特に今後の時流を考えると、中堅・大手グローバル企業をターゲットとした「新規開拓ビジネスモデル」が必要です。
“主導権”が取れていれば値上げを通すこともできますし、必要な利益率を確保することもできるはずです。
そして利益原則の中で最も大切な“一体性”を確保するためには「人財戦略」が必要です。「人財戦略」とは突き詰めれば「採用力」であり、「評価・賃金制度」といった環境づくりにあります。
特に“一体性”を実現するためには新卒採用が不可欠だと私は思います。
よく「ウチみたいな町工場では優秀な人材が採れない」と言われる経営者の方がおられますが、それは一言でいえば採用する側の努力不足あるいは勉強不足です。
町工場であっても、社長が本気になれば自社のレベルで優秀な人材は採用できます。
実際、「優秀な人材が採れない」と言っている会社の求人票を拝見すると、本来はぎっしり書き込むことが求められる項目にも、さらっと数行書かれているだけ、といったことが大半です。「ウチみたいな町工場では優秀な人材が採れない」と決めてかかるのではなく、「ウチも採用に力を入れよう!」「当社にとって優秀な人材を採用しよう!」と経営者が腹をくくることが一番大切なことです。
冒頭にも述べた通り、現在はまさに60年に1度の歴史の転換点に立っています。
今こそ必要なことは、自社の「事業戦略」の見直しです。
そもそも、1つの事業の寿命は7~10年とよく言われます。従って自社を永続させるためには「事業戦略」を定期的に見直して、イノベーションをかけていく必要があります。そして前述の「利益原則」も、「事業戦略」を見直す上での1つのフレームワークになります。
ぜひ年始年末の今、自社の「事業戦略」を見直していただきたいと思います。
本レポートが皆様の会社の発展・永続の一助となれば、心より幸甚に存じます。
2016年も何卒よろしくお願い申し上げます。
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