円安・原油安で業績も絶好調が伝えられるトヨタ自動車ですが、同社の国内工場が今、全力で取組んでいるのが「1/2」というテーマです。これは生産性を落とさずに、“ラインの長さを従来の1/2にする”“設備の設置面積を1/2にする”“設備投資を1/2にする”ことに取組む、というものです。
2割減ならともかく1/2ですから、これには抜本的な見直しが求められます。例えば自動車の組立ラインではピットを掘り、車体を天井から吊るのが普通ですが、ピットを掘らない、あるいは天井から吊らない、といった抜本的な見直しが求められます。さらにはプレス機械や射出成型機も外部メーカーからの購入ではなく、内製することも検討しています。
さらに同社の国内生産の競争力を高めることが、この「1/2」の目的ですが、同社のこうした思想に強く影響を与えていると思われるのが、松下幸之助氏の有名な言葉「3%のコストダウンは難しいが、3割はすぐできる」というものです。
かつて松下電器は、トヨタ自動車にカーラジオを納め、毎年3%のコストダウンを求められていたそうです。
ところがある年、コロナという戦略車種をアメリカに輸出するにあたり、トヨタ自動車は3割ものコストダウンを要求してきました。
「そんなの無理だ」と、断ろうとした事業部長に幸之助氏は、「3%のコストダウンだと、既存の延長線上の発想しかでないだろう。3割だと抜本的に見直さないとできないから、意外と簡単にできるのではないか?」と、事業部長を諌めたそうです。
その後、この事業部では設計を抜本的に見直し、知恵に知恵を絞りぬき、なんと3割のコストダウンを達成した上に、逆に既存製品よりも利益率も向上させたといいます。
「やればできるやないか」と、幸之助氏はこの事業部を褒めたそうですが、このエピソードは発注元のトヨタ自動車に対しても、大きな影響を与えたそうです。
現在のトヨタの「1/2」には、こうした当時からのDNAが受け継がれているのでしょう。
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