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ネット通販は人的営業にとって変わるか?

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最近、生産財通販M社のことが、私のコンサルティング先で話題に上がります。まず、今年の1月くらいから全体的に安くなっています。

例えば一流メーカーN社のベアリング6000番台で、定価の35掛けで、二次店クラスだと定価の32~33掛けで代理店から仕入れていますから、非常に微妙な価格設定です。

今まで定価の40近くで流していた機械工具商社が、ユーザーから「M社の価格より安く」と要求され、昨年対比では大半の商社が粗利利率を落としています。

また、一流メーカーT社のリニアガイドに至っては、代理店が仕入れる価格の数パーセント乗せ、くらいの価格で提示されているケースもある様です。これは特に追加工込みの場合に問題となる様で、メーカーであるT社が追加工をするのではなく、生産財通販M社が追加工を行うことで、価格が安くなるのです。

こうしたM社通販が「安い」という情報を大手ユーザーが認識し始めたのが4月くらい、その結果6月くらいから商社への価格要求が厳しくなっています。

今、多くの大手企業で「商品を購入する際には必ずM社のサイトと価格比較をしろ」ということが事実上の取り決めになりつつあります。

また、最近では通販M社も大手企業の指定伝票に対応する様になっています。その結果、機械工具商社の“口座貸し”機能も必要なくなり、大手企業のM社からの購入を促進する結果になっている様です。

では、従来の機械工具商社による人的販売は、こうしたネット通販に全て取って変わられるのでしょうか?

答えはNOです。

あらゆる取引形態の中で、最も顧客にとって利便性が高い形態は「人的営業」です。取引形態を利便性が高い順に並べると下記の様になります。

1)人的営業

2)通信販売

3)店舗販売

優秀な御用聞き・営業マンがきちんと毎日来てくれるのなら、あるいは必要な時に来てくれるのなら、人的営業が最も顧客にとって利便性をもたらします。

事実、人的営業が機能しているルートに対して、いかに安くても通信販売がそれに取って代わることはありません。ただし価格比較はされてしまいますから、価格比較されない商品を売る必要があります。

ただし“見積り依頼をしても回答が遅い”“あるいは返さない”“メールを打っても返信が無い”“携帯に電話をしても出ない”“折り返しのTELも無い”といったお粗末な営業マンが窓口になってしまうと、通信販売に切り替えられることは往々にしてあります。

実際、生産財通販を多用しているのは、従業員10名未満の小規模工場です。こうした小規模工場には営業マンが日参してくれない、あるいはサービスが悪いので通販に流れるのです。

逆に、店舗販売は通信販売の利便性に勝てません。例えば店舗で手にとって確認した後に、通販各サイトで価格比較をして最も安いサイトから商品を購入するショールーミングに、百貨店等では悩まされています。

ましてや商品を確認するまでも無い必需品については、デリバリーしてくれる通販にどんどん流れています。

スーパーやコンビニがネットスーパーを、勝ち組小売業のユニクロですらオムニチャンネルと言われる、店舗販売とネット通販を融合したビジネスモデルを推進する背景には、こうした事情があります。

ですので、通信販売が人的営業に取って変わることは原理原則的にあり得ません。ただし、

(1)お客さまから「信用」「信頼」される営業をすること

(2)価格比較をされない商品を売ること

この2つが適切な収益をあげる上で不可欠になります。

価格比較されない商品として、次の3つがあります。

・加工

・工事メンテナンス

・工作機械(中古)

・簡易FA

これらを私は「4K」と呼んでいますが、機械工具商社がこれから力を入れていくべきなのは「4K」です。

実際、今業績が良い機械工具商社、昨年対比で110%を超えている様な機械工具商社は、上記「4K」のうちいずれかを確実にモノにできている会社です。

その中でも特に力を入れるべきは「加工」でしょう。「加工」は必需品で不況対策にもなりますし、時流から言ってこれからさらにニーズが増えます。

具体的に今後(来年以降)の市場トレンドは、

1)円安・原油安による中堅・大手グローバル企業の活況

2)ただし大手でも「勝ち組」「負け組」の極端な二極化

3)中堅・大手ユーザーにおける設備内製化

4)中堅・大手ユーザーにおける加工の外注化

5)ものづくり補助金の反動による生産財大不況

上記4)5)が示すところは、不確実性が高まる来年以降において、高額な設備投資をしたくない、ということです。高額な設備投資を嫌い、また技能を有する社員がいなくなったことにより、内製加工を止めて外注化する企業が増えています。

また、利益を上げている優良企業ほど3)の傾向が強いです。結局のところ、外部メーカーにつくった生産設備を購入したところで、本質的な差別化にはなりません。

従って、優良企業ほど社内設備を内製化しています。この時、設計・組立は社内で行いますが、上記4)の事情も相まって、加工だけは外注に出します。こうした社内設備内製化に関わる加工の仕事であれば、商社でも取り易い仕事であるといえます。

日を追うごとに不確実性が増す景況の中で、本当に数少ないプラス材料は、上記1)の円安・原油安です。

また例のTPPや2017年に予定されている消費税率のアップも、輸出企業にとってはプラス材料です。

「どこ」に「何」を売るのか?

戦略の再構築が本当に求められています。

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