前回のレポートでもお伝えしましたが、現在の生産財市況は、はっきりと時流サイクルを反映する様になっています。
例えば今年初め~6月にかけては、スマホ関係の需要が市況を押し上げていました。ところが7月~9月については、スマホ関係は低調です。中国の問題もありますが、もともと8月前後はこの関係は生産が落ちる、ともいいます。
その代わりに7月~9月で好調なのは、自動車です。
先週末、コマツNTCがGMから300億円もの専用機を受注した、と報道されていました。またデンソー、アイシンAWなども海外向け部品の需要が好調で、関係するセットメーカーは年内仕事が埋まっているといいます。
その理由は、北米で大型車が飛ぶ様に売れているからです。
今、北米のガソリン価格はピークの半分程度です。アメリカではガソリンの価格が下がると、完成車メーカーにとって利幅の大きな大型車が売れる様になります。
また、アメリカは自動車社会なので、ガソリン価格が下がるとその浮いたお金が個人消費に回ります。
さらに先般、イランとアメリカが国交を正常化する方向で合意し、イラン産の原油が世界に出回ることになりました。
さらに原油安・ガソリン安が進み、その結果として北米の好調はしばらく持続するものと思われます。
逆に現在不調なのはリチウムイオン電池の関係です。
昨年まで好調だったリチウムイオン電池の関係は、今年初め~6月も低調でしたが、7月~9月にかけてはさらに低調になっています。
前述した通りガソリン価格が下がった結果、EV(電気自動車)やハイブリッド車が売れなくなっているからです。
この様に、市場が成熟化した現在は、その時々の時流サイクルによって、市況が大きく影響を受けます。
従って営業活動をするにしても、マーケティングを行うにしても、こうした現在の時流サイクルを強く意識して行う必要があります。
またさらに、特定顧客はもちろん、特定業界・特定業種に依存することのリスクが、かつてないほど高くなっている、ということです。
とはいえ、大きなくくりでいって、IT業界と自動車業界は押さえておかざるを得ない産業であるといえます。
まずIT業界の場合は、「ムーアの法則」が存在する故に、技術革新が永久に続くでしょう。
「ムーアの法則」とは、半導体は2年間で実装密度が2倍になり、さらにコストは1/2になる、というインテル創業者であるムーア氏の経験則です。
短い期間に実装密度を上げ、さらにコストを下げる、といった技術革新が繰り返されていく結果、我々サプライヤーにも新たなニーズがドンドン出てきます。新たなニーズがドンドン出てくる業界は、価格競争になりにくい業界です。
また自動車業界の場合は、とにかくその裾野の広さです。
例えば今、液晶関係のセットメーカーが好調ですが、これらのエンドユーザーの多くが自動車関連産業です。現在は自動車のインパネも大半が液晶化されています。またカーナビも標準装備です。自動車に使用される液晶は不具合が許されない上に耐久性が求められるので、製造装置・検査装置ともに日本製が重宝されているといいます。
また、現在の自動車はセンサーの固まり、といって良いほどセンサーが多用されています。この自動車向けセンサーを生産する電子部品メーカー、あるいはセンサー向け金型メーカーなども、現在は絶好調です。
ITと自動車、この2大マーケットを押さえることに加えて、医療機器・航空機・三品産業(食品・医薬品・化粧品)・次世代エネルギー・社会インフラ といった成長産業、あるいは不況耐性の強い業種と取引をしておく必要があります。
時流サイクルを押さえておくこと、さらに特定顧客・特定業界に依存しない収益構造を持つことが、現在の時代は必須だといえます。
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