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インダストリー4.0の本質と、我々がすべきこと

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今、世間ではインダストリー4.0がブームです。

インダストリー4.0とはIoT(インターネット・オブ・シングス)技術をベースに、全ての機器や工場がリアルタイムで繋がることにより、1個の生産の時でも大量生産の時と変わらないコストで生産が可能になる概念のことです。

インダストリー4.0の火付け役は、ドイツの世界的な統合基幹システム企業であるSAPです。SAPの提唱する概念に、ドイツの大企業であるフォルクスワーゲン、シーメンス、ボッシュなどが乗っかった、といったところでしょう。

またインダストリー4.0に対抗するかのごとく、アメリカではGEが中心となってインダストリアル・インターネットという概念を提唱しています。

インダストリアル・インターネットとは、無数のセンサーをジェットエンジンや発電タービンなどに埋め込み、こうした設備稼働をリアルタイムでモニタリングすることにより、稼動コストや保全コストを大幅に引き下げる、という概念です。

こうしたインダストリアル4.0や、インダストリアル・インターネットがクローズアップされている理由は、欧米先進国においてもやはり製造業を強化しないことには、国力の強化につながらない、ということが明確になってきたからです。

例えばEUでは、EU域内のGDPに占める製造業の割合を、現在の15%から20%まで高める方針を打ち出しています。

またアメリカでもオバマ政権が、製造業の国内回帰に国を挙げて取組んでいます。

では、なぜ製造業を強化することが国力につながるのでしょうか?

まず「雇用の乗数効果」が挙げられます。

カリフォルニア大学バークレー校の経済学者、エンリコ・モレッティ教授の研究によれば、伝統的な製造業で雇用が1名増えると、周辺のサービス業(飲食店・クリーニング店など)で2名近くの新たな雇用が生み出され、さらにイノベーションを伴う製造業の場合は6名前後もの新たな雇用が生み出されるとしています。

この様に、製造業に1名の雇用が生まれると、周辺産業で2~6名もの新たな雇用が生み出されます。これが「雇用の乗数効果」です。

実際、多くの先進国においてGDPに占める製造業の割合は2割前後、サービス業の割合が6割前後になっています(残り1割前後が農業など)。これは「製造業よりサービス業が伸びる」のではなく、「製造業があるからサービス業が伸びる」ということなのです。

さらに「通貨価値の増大」を挙げることができます。

「通貨の価値」は、根本的にその通貨で何に交換することができるのか、というところで価値が決まります。

例えば米ドルの価値は「石油への兌換性」であり「穀物への兌換性」です。OPECから原油を買おうとした場合、米ドルでないと原油を手に入れることはできません。

EUのユーロを支えているのは主にドイツです。ユーロによりドイツ製の優れた製品を手に入れることができるわけです。それがユーロの価値といえるでしょう。

ちなみにユーロもドル同様に世界覇権を狙っています。そこでイラクにユーロでも石油を輸出することをもちかけ、イラクがこれを了承したことがイラク戦争の原因と言われています。

またスイスフランの価値は、スイスフランによりスイス製の製品が手に入ることに裏付けられています。ネスレ、ノバルティス、ABB、ジョージフィッシャー、ローレックスなど、スイスには世界的な大企業が数多くあります。

人口数百万人の小国でありながら、自国通貨を維持して永世中立を保てる要因はそこにあります。ちなみにスイスのGDPに製造業が占める割合は日本やドイツよりも高く、27%にも及びます。

この様に今さらながら、製造業の重要性を認識した欧米が、インダストリー4.0あるいはインダストリアル・インターネットという旗を振って、域内あるいは国内の製造業を活性化しようとしているわけです。

では我々はこうした動きに対して、何を行っていくべきなのでしょうか?

まずはITリテラシーの向上です。我々の業界(部品加工業・機械工具商社)は中小企業主体であり、いまだに1人1つのメールアドレスを持っていない会社が多数見受けられます。

まずは1人1つのメールアドレスを支給し、きちんと名刺に刷り込むことです。

次に生産管理システムあるいは販売管理システムの導入です。特に今後はクラウドが望ましいでしょう。

生産管理システムの導入においては、生産性を上げるために自社のKPI(=キー・パラメーター・インデックス:重要評価指標)をどこにおくのかが重要です。

機械加工業の様に設備稼働が収益に直結する業態の場合は、設備稼働時間がKPIになります。

また製缶板金加工業の様に、人の工数が収益につながる業態の場合は原価管理・部門別採算を取ることがKPIになります。

いずれの場合も案件ごとの収益性がわかることが前提で、それによりPDCAが回るKPIが取れなければなりません。

またマーケティング的には、現状の自社の業態を一歩前に進めることが求められます。

部品加工業であれば下請け型から提案型へ、あるいは提案型からメーカー化という流れです。

機械工具商社であれば従来の物販だけでなく、これからは加工・工事機能を持つ、製造業化という流れです。

インダストリー4.0も、インダストリアル・インターネットも、その本質はIT技術を活用した「価値」の増大であり、「生産性」の向上にあります。

我々もいかに「価値」と「生産性」を高めていくのか、真剣に考えることが求められます。

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