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オランダ先端企業視察セミナーより

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先週6月7日(日)~6月13日(土)まで、オランダ先端企業視察セミナーに講師として参加していました。

下記より本視察セミナーのレポートをご覧いただけます。

↓↓↓

https://seizougyou-koujoukeiei.funaisoken.co.jp/tag/inspection_report/

※視察3日目までのレポートが現状アップされています。

(6月14日時点)4日目のレポートも近々にアップされます。

オランダという国は知られざる大国で、生産性に関して日本はもちろん、実はドイツよりも高い国です。

<国民1人あたり生産性(1人あたりGDP)>

・オランダ 51,400ドル

・ドイツ  47,600ドル

・日本   36,300ドル

ところがオランダ人は日本人の様に長時間労働は一切しません。例えばツアーで使用するバスも、原則17時には業務が終わります。

また平日の昼間でありながら、街中を見ると誰もが悠々と生活を楽しんでいる様にみえます。これだけ高い生産性を維持しながら、国民の幸福度ランキングでも上位につけている国です。

子供の幸福度ランキングに関していえば世界一です。

今回、正味4日間で売上高世界一の会社(ロイヤルダッチシェル)から、従業員十数人の中小企業まで、16社の企業視察を行いましたが、その中で私が感じたオランダ先端企業の特徴は次の3つです。

1)徹底的に「合理化」を図る

2)徹底的に「価値」を売ることにこだわる

3)企業存続への「危機管理」

例えばオランダの玄関、スキポール空港のKLM航空のカウンターにはスタッフの人がまばらです。乗客自らが機械化されたカウンターでチェックインを行い、また預け荷物も乗客自らがプリントアウトされたタグを取り付け、ボタンを押すとシャッターが閉じて荷物がコンベアで自動的に搬送されていきます。

普通の航空会社であれば、1つのカウンターに必ず1名が待機して人手で一連の作業を行います。ところがKLM航空では、5つのカウンターに対して1~2名のスタッフしかいません。

またオランダはアメリカに次ぐ、世界第二位の農作物輸出国ですが、その農業の手法はスマートアグリと呼ばれる、高度に自動化された農法です。

土を使わない水耕栽培が基本となっていますが、驚かされるのはスマートアグリにおけるロボットのフル活用です。

レポートの中にもありますが、農家がファナックのロボットを活用し、画像処理でトマトやナスビの位置を検知して自動的に収穫するシステムが実用化されています。

本レポートでも紹介しているデモクウェークライ社は、こうしたスマートアグリを推進する農家に対して、温室システムやロボットシステムを販売する、日本でいうところの農機具商ですが、日本の販売会社の様に「モノ」売りではなく、デモクウェークライ社は「コト」売り、すなわち「価値」を売ることに徹底的にこだわっています。

デモクウェークライ社は従業員14名の中小企業でありながら、広大な展示場を持っています。そこにはタイアップしている28のメーカーのロボットシステムや温室システム機器などが並べられ、定期的にプライベートショー等も開かれています。

同社のミッションは「農業の技術革新を全世界に広げていく」というものです。例えばロボット導入を考える農家がいた場合、同社がテストから導入までをサポートします。

また自らが最新鋭の温室のパイロットプラントを持ち、近隣の農業大学であるワーゲニンゲン大学と共同研究を行うなどし、最新の農業技術をシステム販売という手法により実現しています。

まさに「モノ」ではなく「コト」を売るビジネスです。

またオランダの首都、アムステルダムは省エネに力を入れるスマートシティとして知られています。市内には1860ヶ所の電気自動車充電装置が設置され、世界初の電気自動車のみのタクシー会社も存在します。

そうしたアムステルダム市で進められているプロジェクトの1つが、3Dプリンタ・カナルハウス・プロジェクトです。

同市によると、建築物を3Dプリンタで建造することにより、次の様な環境メリットが得られます。

1)建材を輸送する必要が無いので、輸送時のCO2排出が無い

2)通常の建築現場の様に、大量の廃棄物が出ない

3)より建材のユニット化を推進でき、組立工数が削減できる

そして、このプロジェクトを進めているのは、市でも公的機関や大学でもなく、DUS&PARTNERS社という従業員13名の建築設計事務所です。

同社はアムステルダム市内の建築現場の一角に仮設ハウスを立て、その中に3Dプリンタハウスの概念や設計図を展示、さらにデモ用の小型3Dプリンタを設置したショールームをつくりました。

またショールームに隣接して、高さ3mほどの巨大な3Dプリンタを2台製作し、この3Dプリンタで製作した建材の試作品を屋外に展示してあります。このプラスチック製の建材の中は空洞になっており、実際の建築時には、この空洞の中にコンクリートを流し込み建築物にしていきます。

3Dプリンタ自体の構造はそれほど難しいものではありません。既に市販されているプリンタヘッドを活用し、建材のサイズに対応したLMガイドにより、特注の大型3Dプリンタをつくっているのです。

また、とうもろこしの粉からつくったプラスチックも材料として研究しています。この材料であればプラスチックでありながら、土中で自然に分解されます。

この同社のプロジェクトはまだ研究中で、実際の家の建築には至っていません。ただし同社の取組みは世界中から注目を集め、今や同社のショールームはアムステルダムの名所の1つとなっています。

世界中から視察団が訪れ、アメリカのオバマ大統領も同社を訪れています。

この様に一躍有名となった同社には、本業である建築設計や建築施工の仕事が次々に舞い込んでいるといいます。

オランダは小国でありながらロイヤルダッチシェル、ユニリーバ、フィリップス、ASML、ING銀行(保険)といった世界的大企業が多数ありますが、中小企業においても“したたかさ”というか、小さいながらにいかにオリジナリティーを出すか、「価値」を売るか、といった姿勢が鮮明です。

次回のレポートでは、オランダ先端企業視察で見た、“企業存続への「危機管理」”についてお伝えしたいと思います。

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