群馬県にあるバネ製造業の中里スプリング製作所(従業員20名)は、ユニークな制度を持つ会社として知られています。
それは社員に対して、嫌な取引先だと思ったら自由に切っても良い権利を与えている、ということです。
普通は同社の様な町工場の社員は、取引先からの無理難題に泣かされているものです。ところが中里スプリング製作所においては、社員の意思で自由に切って良い、と言っているのです。
ただし1社の取引先を切った場合は、社長自らが10社の新規開拓を行うことを、社長自身が自分に義務付けているといいます。同社の中里社長は「中小企業の新規開拓は社長の仕事」と言い切ります。
同社が新規開拓の武器としているのは、新聞や雑誌、テレビ、さらには講演などメディアへの露出です。
同社は何と、新聞に339回、雑誌や書籍に286回、テレビやラジオには27回も取り上げられています。さらに同社の中里社長は、46都道府県で581回も講演を行っています。
大変失礼ながら、同社は特別な技術を持っているわけではありません。
もちろん高品質・短納期・適正価格を訴求していることは間違いありませんが、これは多くの同業他社も訴求していることです。
同社が何よりもこだわっているのは新規開拓です。
これは取引先の言いなりになりたくない、隷属する関係になりたくない、という社長の強い思いからくるものです。そして、その手段としてメディアへの露出、という手段をとっているのです。
また、同社が社員に「理不尽だと思ったら取引先を自由に切っても良い」という権利を与えている理由は、「日本一楽しい町工場を目指す」ことを経営理念に掲げているためでもあります。
ですから「近所に社員が楽しそうに働いているレストランがある」という噂を聞きつけたら、社長自らそのレストランに訪れる熱の入れようです。
さらに同社の中里社長は「夢が無ければ楽しくない」ということで、毎月1回、社員が自らの夢を発表し、その夢をいかに具現化するのかという「夢会議」を開いています。
その「夢会議」の中である社員が「一戸建ての家を建てたい」と発表したそうです。しかし「今の給料では難しいですが・・・」とのコメントも付いていたそうです。
そこで中里社長は、「努力すればキミも家を建てられる!」と、まずは貯金のやり方を指導しました。さらに給料を上げるために技術を習得するための方法を教え、その社員は一戸建ての家を建てる夢を叶えることができました。
それ以降、中里社長は男性社員が入社してきたら、「何年以内に一戸建ての家を建てる」という目標を立ててもらい、それを実現することを社内の不文律としたそうです。
また中里社長自身もこの「夢会議」の中で、「ウチは従業員20名の町工場だけど、全国47都道府県全てに取引先を持ちたい!」と発表したそうです。その場にいた全員が「それは無理だ!」と、あきれたそうですが、それで火がついた社長は新規開拓に奔走し、なんと本当にその夢を実現してしまいました。
今、中里社長の新たな目標の1つは、「全国全ての市区町村に取引先をつくる」ということだそうです。
この「夢会議」、御社でもぜひ実践されてみてはいかがでしょうか。
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