あらゆる業界において今、業績が良い会社の共通点は「脱デフレ経営」が行えている会社です。
例えば大手コンビニエンスストアのセブンイレブンは、脱デフレ経営が行えている結果、業績は絶好調です。逆に従来の「低価格訴求(=デフレビジネスモデル)」しかできていない大手スーパーは業績不振に苦しんでいます。
ではどうすれば「脱デフレ経営」が行えるのでしょうか?
それは価格以上の「価値」を提供することです。言い換えれば「機能」よりも「価値」を売ることです。ではどうすれば「価値」が売れるでしょうか?
「価値」を売るためには次の2つの視点があります。
視点1:自社のサプライチェーンの前後を取り込む
視点2:ストーリーを売る、あるいは顧客代行を行う
まず根本的に重要となるのが視点1です。
例えばセブンイレブンと同様に業績好調なユニクロは、SPA(=製造小売)業態という製造業と小売業を兼ねた、言い換えればサプライチェーンの前後を統合した業態です。またアイリスオーヤマの場合は「製造業」と「卸」を統合した業態であるといえます。
これは飲食店の場合も同じです。例えば大阪市内の某繁盛店は、ワイン醸造所の上にレストランがあり、酸化防止剤の入っていない自家製ワインと、ワインに合う料理を楽しむことができます。同店は女性客が多くいつも繁盛しています。このお店なども「醸造業」と「飲食店」という、前後のサプライチェーンを取り込んでいます。
また同じく大阪市内の某繁盛居酒屋は、淡路島の水産市場が経営している居酒屋です。お店の場所はわかりにくく立地は必ずしも良くないのですが、淡路島産の海鮮が売りで特に女性客に好評の様です。この居酒屋の場合も「水産加工業」と「居酒屋」という前後のサプライチェーンを取り込んでいることがわかります。
さらにこれらの事例は単にサプライチェーンを統合しているだけでなく、「視点2」で述べた“ストーリーを売る”“顧客代行を行う”という要件も満たしています。
例えばワイン醸造所のレストランや淡路島水産市場の居酒屋は、「産地直送」というストーリーを売っています。またコンビニで“おでんを売る”“コーヒーを売る”というのは「家事代行」という「顧客代行」を行っていることがわかります。
そして、この2つの視点は一般消費者向けビジネスに限った話ではありません。我々生産財業界においても全く同じことが言えます。
例えば長野県の試作加工会社、有限会社スワニーの場合、試作加工だけでなく、その前工程である「製品設計」の段階から仕事を請け負っています。
大手製造業、特に家電業界の大半が海外に生産拠点を移転してこともあって、特に試作加工の業界は価格競争が厳しくなっています。リーマン・ショック以前は4000~5000円/時 と言われた時間チャージが、現在はその半分近くに落ち込んだままです。
従って多くの試作加工会社が未だに、不採算の仕事をやむを得ず請けている状態です。
しかしスワニーの場合は「製品設計」の段階から仕事を請けることで、価格競争を回避しています。
仕事を出す側の大手企業からすると、ベテラン設計者が退職して設計部門は常に人手不足です。「製品設計」のうち基本設計は大手企業が行いますが、詳細設計は外注に出すケースが多いのです。
また設計を行った後には必ず「試作」があります。従って「設計」から「試作」まで一貫して受託できる会社がある、というのは仕事を出す側からすると大きな価値なのです。
スワニーではこうした戦略があたり、業態を変えてからわずか5年間で取引顧客数を20倍近くにまで増やしています。
また東海エリアの機械工具商社A社は、機械工具を売るだけでなくその後工程である「部品加工」「工事」の仕事まで受託することで大きく業績を伸ばしています。やはり大手企業の工場の現場でも、ベテラン技術者が退職して設備製作や設備保全に手が回らない状態になっています。
A社は「生産技術代行」「設備保全代行」をコンセプトに、手間がかかって同業他社が請けたがらない「部品加工」「工事」の仕事を請け負うことで、高い顧客満足を実現しているのです。
ちなみに機械工具商社業界の多くの会社が、モノタロウやミスミなど、大手ネット通販会社の台頭、大手企業のEDI化によって価格競争に巻き込まれています。
そうした中、A社は売上昨年対比130%、新規営業所を出店してわずか4ヶ月で月商2000万円ものベースをつくることができました。
この両社のいずれも、「サプライチェーンの前後を取り込む」「顧客代行を行う」を実践していることがわかります。
ぜひ御社におかれましても「脱デフレ経営」を考えていただきたいと思います。
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