サン・マイクロシステムズの共同創業者で、アメリカのコンピュータ科学者であるビル・ジョイは、“ジョイの3法則”の中で次の様に述べています。
1.頭のいい社員は仕事をしない
2.もっとも頭のいい人間の大半は、企業のためには働かない
3.よってイノベーションは企業の外部で生まれる
ここで、ジョイ氏が「仕事」をどの様に定義しているかがポイントだと私は思います。
船井総研の取締役常務執行役員の唐土は、「社員の人生と仕事の目的を一致させれば業績は上がる」と言っています。いわゆるグレートカンパニーと言われている様な会社は、いずれも理念・ミッション経営により、社員の人生と仕事の目的を一致させることができていると思います。
ところが「仕事」が生活のため、お金のため、という定義であるならば、ジョイの3法則の通り、優秀な人は仕事をしない、ということになるでしょう。
人から言われて、上司から言われて仕事をしている様では本物ではありません。自主的に、自発的に行ってこそ仕事なのです。
船井総研でコンサルタントにまず教えられる経営原則として、「1:1.6:1.6の二乗の法則」というものがあります。
これは、指示されてイヤイヤ行った仕事のアウトプットを1とすれば、納得して取り組んだ仕事の生産性はその1.6倍、さらに自主的・自発的に取り組んだ仕事の生産性はその1.6の二乗倍、すなわち2.56倍(約3倍)という法則です。
上司の立場としては、この2.56倍のリーダーシップを心がけるべきでしょう。
また船井総研の前会長である小山政彦は、社員向けの講話の中で「ワークライフバランスという発想に違和感がある」と言われていました。
確かに人生の目的と仕事の目的が一致していたならば、プライベートの中でも常に仕事のことを考えているはずです。経営者などはまさにその通りでしょう。
例えば私などでも、仕事への良いアイデアは会社の中にいる時に生ま
れません。たいがい良いアイデアというのは、休みの日や自宅など会社の外で生まれます。
そう考えれば、イノベーションは企業の外で生まれる、ということも真実だと思います。また実際、グレートカンパニー視察セミナーで視察した多くの会社が、勤続年数の多い社員に長期休暇を奨励していました。こうしたことも、プライベートと仕事を一致させる取り組みだと私は思います。
昨今は景気が悪くないこともあり、特に中小企業は求人難だと言われます。しかし私の関係先を見ていると、経営者の志が高く、前述の仕事と人生の目的が一致する様な理念・ミッション経営を行っている会社、あるいは行おうとしている会社は、優秀な社員をきちんと採用できている様に思えます。
教育はもちろん、採用には工数がかかります。また中小企業であれば採用は経営トップでなければできない仕事です。経営者自らが工数をかけて取り組むべき1つでしょう。
逆に「ウチみたないな中小企業では採用もできない」「優秀な人は来ない」と言っている会社は、残念ながらその通りになってしまいます。
口に出した言葉はその通りになるといいます。上に立つ人間としては、よく注意する必要があると思います。
今の時代、会社の規模で優位性は決まりません。それよりも経営者の志で全てが決まるといってよいでしょう。
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