先日、某工作機械メーカーにて営業研修を行いました。
工作機械は平均単価1450万円で、トラックで運べる商品としては最も高額な商品と言われます。
こうした高額商品を売る為のポイントとして、次の5つを挙げることができます。
1)自分は何を売っているのか?を正しく規定する
工作機械メーカーの営業マンであれば、自分が売らなければならないのは工作機械ではありません。その工作機械が顧客ももたらす「利益」を売っているのです。
2)相手にとってメリットのある話をする
工作機械の複雑な仕様を説明しても、顧客は共感しません。その工作機械を導入した結果、どういう「利益」が得られるのかを語る必要があります。例えば毎月100万円外注に出した仕事を、リースで月20万円の工作機械でこなせるならば、明らかにその顧客に利益をもたらすことがわかります。
3)KFSを押さえる
KFSとはキー・フォー・サクセスの略で、“重要成功要因”という意味です。工作機械を売る上でのKFSは 1)実機見学 2)テストカット 3)工場見学 です。
4)ストーリーをつくる
高額商品は1回の訪問・やり取りでは完結しません。複数回にわたる訪問とやり取りが必要です。だからこそ受注までのストーリーが必要で、さらにそのストーリーの中にKFSが盛り込まれていなければいけません。
5)未来の話(=注文の後、買った後の話)をする
その商品を買った後の話をします。例えば「この設備を入れる為には、あそこの設備を移設してスペースを取る必要がありますね」といった具合です。未来の話をすることで、顧客はより共感すると同時に自分で自分を説得することになります。
この様に、どんな商品でも“売るためのセオリー”が明確にあるのです。
またどの様な商品であるにせよ、組織的に営業力を上げていく鉄則の1つが、社内でいかに“共通言語”をつくるかにあります。
例えば御社におかれましては、「営業」の仕事の定義がきちんとなされているでしょうか?
私は営業研修で、いつも次の様な話をさせていただいています。
それは「営業」の仕事の定義とは、(1)価格競争を回避すること と (2)新規開拓を行うこと の2つだと言うことです。
逆に「販売」の仕事の場合、販売担当者が価格競争の回避を気にかけることはありませんし、新規開拓を行う必要はありません。例えばコンビニで弁当を買ったとして、それが550円だったとします。「販売」の現場であればお客から値切られることはありません。
ところが法人営業の現場であれば間違いなく、22万円の工具の見積りをそのまま出せば、「端数の2万円引いて20万円にしてよ!」と言われることでしょう。
また「販売」の仕事には新規開拓は基本的にありません。
例えば駅のホームを歩いていて、キヨスクのおばちゃんから呼び止められて「今日はお茶が安いよ!」などと売り込みを受けることもありません。
つまり「営業」の仕事の場合は、価格競争を回避できる様な人間関係をお客様と常に築いておく必要がありますし、また人間関係ゼロの状態から人間関係を築き上げていく「新規開拓」の技術が求められるのです。
ですから「営業」の仕事は多くの場合、正社員が多いのに対して「販売」の仕事は多くの場合、パート・アルバイトが多いのです。
つまり「営業」は高度な技術を伴う専門職なのです。
ところが法人営業の現場においては、大半の営業マンが「営業」ではなく「販売」を行っています。
すなわち他社と相見積りとなり価格だけで勝負をしていたり、「ウチは価格が高いから競合に勝てません」といった安易な報告をするのは「営業」ではなく「販売」です。
またいつも決まった既存客にのみ訪問し、しかも“引き合い対応”しかできていないとなると、これも「営業」ではなく「販売」の仕事なのです。
コンサルタントの業界というのは、景気が良くなると営業研修の依頼が増える傾向にあります。実際、円安やものづくり補助金効果もあり、今年に入ってから私のグループでは、営業研修のご依頼がかなり増えました。
営業研修というのは、その場限りのイベントです。それを継続させて自社で成果を上げるためには「共通言語」をつくる必要があります。
従って営業研修に特定の営業マンだけを派遣するのではあまり効果がなく、営業研修を活用するのであれば自社の営業マン全員で営業研修を受講するのが、最も効果的であるといえます。
いずれにせよ、高額な商品・難しい商品であればあるほどプロセスマネジメントが大切ですし、その為の第一歩が社内で「共通言語」をつくることです。
これからの時代は益々「営業力」が業績を左右する時代になります。ぜひ御社の中での「共通言語」づくりに取り組んでいただきたいと思います。
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